2 先生の解釈
そして俺達が乗ったワゴンがミナ高の学生寮にたどり着いた。
俺達は一斉に車から降りて学生寮の門をくぐった。
ここに来るのはこの町に初めてやって来た時以来だな。
ミナ高の学生寮は二階建てのコンクリートの建物であり、ここから十分程歩いた所に女子寮もあるらしい。
だが今はそんな事はどうでもいい。
俺達は寮の入口をくぐり、入ってすぐの所にある管理人室の前に立った。
「ここに愛の雫を持つ男が居るんだな?」
孝さんに問いかけに俺は無言で頷き、管理人室のインターホンを押した。
ピンポーン。
それから数秒後、管理人室の扉がガチャリと開き、そこから白と水色のストライプ柄のパジャマを着た鏡先生が現れた。
その鏡先生に、俺は下手な愛想笑いを浮かべながら言った。
「ど、どうも、夜分にすみません。実はちょっと、鏡先生に聞きたい事が──────」
「分かってるよ」
鏡先生はそう言って俺の言葉をさえぎると、おもむろに自分のパジャマのボタンをプチプチと外した。
そして三つほど外して胸元をはだけさせ、俺を手招きしながらこう言った。
「さあ稲橋、先生と裸で語り合おう」
「何でなんですか⁉俺は先生に聞きたい事があるって言ったのに何でそうなるんですか⁉」
「裸で聞こうじゃないか」
「服着て聞いてくださいよ!」
「裸じゃ、ダメなのか?」
「当たり前でしょ!」
「だが断る!」
「何でやねん⁉どんだけ裸で語り合いたいんですか⁉」
「私はその為に先生になったんだ!」
「あんた今すぐ先生やめろ!ってそんな事はいいんですよ!
それよりも!鏡先生は愛の雫を持っていませんか⁉」
「愛の雫?何だそれは?」
「雫の形をしたシルバーのイヤリングですよ!」
「ああ、稲橋が私にプレゼントしてくれた、あのイヤリングか」
「はぁっ⁉ちょっ!ええっ⁉俺がいつ鏡先生にそれをプレゼントしました⁉」
「ついこの前、お前は自分の机の中にあのイヤリングが入ったケースを置いていただろう。
あれは先生へのプレゼントじゃなかったのか?」
「えええっ⁉違いますよ!あれはただ単に俺が机の中に置き忘れていただけですよ!
それを先生が勝手に持って行ったんじゃないですか!」
「ハッハッハ、照れ隠しでそんな事を言っても駄目だぞ稲橋」
「ちっがーう!」
何て事だ。
確かに愛の雫は鏡先生が持っていたが、事態は想像以上にややこしくなっている。
この人に愛の雫を返してくれと言って、素直に返してくれるんだろうか?
と不安になったその時、背後に居た岩山店長がズイッと俺の前に割って入り、鏡先生に向かって声を荒げた。




