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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た3  作者: 椎家 友妻
第四話 ミナ高侵入作戦
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13 もう一度、お茶目に告白

 それを聞いた(たかし)さんは鬼のような形相(ぎょうそう)で俺の前まで歩み寄って来て、その胸ぐらを(つか)んだ。

 「お前が愛の(しずく)を持っていたのかっ!

だったらどうしてこの前ウチの屋敷に来た時に言わなかったんだ⁉」

 俺の胸ぐらをガックンガックン()らしながら叫ぶ孝さん。

それに対して俺は、ひきつった笑みを()かべながら答える。

 「いやあ、あの時は岩山(いわやま)店長にもらったイヤリングが、愛の雫だなんて知らなかったんですよ」

 「言い訳なんか聞きたくない!それより愛の雫を今すぐ返せ!」

 「ええ?今ですかぁ?」

 「当たり前だろ!もしかして家に置いて来たのか⁉」

 「えっとぉ~、そのぉ~・・・・・・」

 「何だよ⁉ハッキリ言え!」

 そう叫んでズズイッと俺に詰め寄る孝さん。

マズイ。これはマズイぞ。

なので俺は思わず助けを求めて岩山店長と理奈(りな)を見やる。

すると二人は一様(いちよう)

『もう、正直に言うしかないわよ』

という表情で首を横に振った。

 や、やっぱりここは正直に言うしかないか。

こうなったらどうにでもなれ!

 (なか)ばヤケッパチで腹をくくった俺は、茶目(ちゃめ)っけたっぷりにこう言った。


 「実はあのイヤリング、何処かに無くしちゃいました☆テヘッ☆」


 「な、なっ、何だとぉっ⁉」


 俺が茶目っけたっぷりにそう言ったにも関わらず、孝さんのリアクションには全く茶目っけがなかった。

そして更に怒り狂った様子でこう続けた。

 「無くしたってどういう事だ⁉お前、事の重大さが分かっているのか⁉」

 「いやあ、まあ、それなりに」

 「それなりにじゃあ駄目だ!とにかく今すぐ探し出せ!

あれは世界にひとつしかない、(おう)本家(もとけ)の大切な家宝なんだ!」

 「わ、分かってますよぉ。だから俺も、心当たりのある場所を徹底的に探したんですよ。

でも、どれだけ探しても見つからないんです」

 「そ、そんな・・・・・・」

孝さんはそう(つぶや)くと、その場に(くず)れ落ちるように(ひざまず)いた。

 「愛の雫が無くなったなんて、これじゃあ僕は、沙穂さんにプロポーズができないじゃないか・・・・・・」

 ガックリうなだれて孝さんは言った。

その原因である俺は、申し訳ないやらこの場から逃げ出したいやらで、孝さんにかける言葉もなかった。

するとそんな中理奈が孝さんの元に歩み寄り、バシッとその背中を平手で(たた)いた。

 「痛っ⁉何するんだ理奈⁉」

 そう言って理奈を見上げる孝さん。

そんな孝さんに理奈は、声を荒げてこう言った。

 「もうすぐ十八になろうって男が何ウジウジしてんのよ!

確かに大切な家宝が無くなったのは大変な事よ!

無くした奴には重大な責任があるわ(・・・・・・・・・・・・・・・・)!」

 「うっ・・・・・・」

 俺の心に言葉のナイフが突き刺さる。

しかし理奈は構わず続けた。

 「でもね!それが理由で()()にプロポーズできないっていうのはおかしいでしょ!

孝が本当に沙穂に渡さなくちゃいけないのは愛の雫じゃなくて、

沙穂が好きっていうその気持ちでしょうが!」

 「う・・・・・・」

 そう言われた孝さんは、グゥの根も出ない様子で視線を落とした。

 理奈の奴、もっともな事を言うじゃねぇか。

でもそれは自分の恋路(こいじ)を自ら断つようなもの。

そうまでしても、自分が()れた男の恋を応援するという事なのか。

 切ない!切なすぎるぞ理奈!

 と、心の中で雄たけびを上げた、その時だった。



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