8 小宵ちゃんは見た目よりも軽い
で、今の状況に至るという訳だ。
ちなみに最初は五、六人だった追手の数が、いつの間にやら十数人に膨れ上がっている。
おまけにさっき美鈴の国語辞典で失神させられた玉木も、復活して追手の中に加わっていた。
もうどのくらい逃げ回っただろうか?
隣を走る小宵ちゃんも、そろそろ体力的に限界みたいだ。
「せ、聖吾様、私、もう駄目です。私を置いて、聖吾様だけ逃げてください・・・・・・」
小宵ちゃんはそう言った瞬間、その場に倒れこみそうになった!
駄目だ!
ここで倒れたら、あいつらにメイドの格好をさせられ、色々なポーズで様々な写真を撮られてしまう!
それは絶対駄目だ!と思った俺は、
「うぉおおっ!」
と強引に小宵ちゃんの腕を引っ張り上げ、その勢いで彼女の華奢な体をひょいっと持ち上げてお姫様だっこした。
「ひゃあっ⁉せ、聖吾様何を⁉」
顔を真っ赤にして叫ぶ小宵ちゃん。
そんな小宵ちゃんの体は見た目以上に軽かった。
これならお姫様だっこをしたまま走り続ける事も可能だ(美鈴の体じゃこうはいかないだろうけどなワッハッハ!)!
なので俺は恥ずかしがる小宵ちゃんに構わず、そのまま全力疾走した!
が、それを追いかけてくる男達もなかなかしぶとく、一向に諦める気配がない。
あいつらどんだけ小宵ちゃんにメイドの格好をして欲しいんだよ?
あれがオタクの底力というやつなのか。
いくら小宵ちゃんの体が軽いとはいえ、人一人を抱えて走り続けるのは限度がある。
俺の足もそう長くは持たないだろう。
ていうか何で俺はこんな目にあわなきゃいけないんだ?
そういえば前にもこんな事があったよな?
あの時はタイミングよく尾田先輩が助けてくれたけど、そう何度も都合よく助けてもらえる訳じゃないしなぁ。
そんな事を考えているうちに俺は校舎の玄関に差し掛かった。
本来なら上靴のまま外に出るのは校則違反だが、今はそんな事気にしてる場合じゃない!
俺は迷う事なく上靴のまま校舎の外に飛び出した!
すると背後から、
「あーっ!あいつ上靴のまま外に出やがったぞ!」
「あとで先生に言いつけてやる!」
という追手の男達の声が聞こえた。
そして俺が後ろに振り返ると、男達は律義にもちゃんと靴を下靴に履き替えていた。
変な所で真面目な奴らだなぁ。
でもおかげであいつらを巻くチャンスができた!
俺は最後の力を振り絞って校舎裏まで走った。
そして裏庭にたどり着くと、学校の塀際にある草村に小宵ちゃんごと飛び込んだ。




