3 美鈴は基本的に親切
「ええっ⁉」
「お、お嬢様⁉」
その言葉に驚きの声を上げる俺と浜野さん。
そしてすこぶる取り乱しながら浜野さんは続けた。
「そ、それはいけません!お嬢様はその学校の生徒ではありませんし、もし忍びこんだ所を見つかったりしたら、大変な事になってしまいます!」
しかし理奈はそれを聞き入れる様子もなくこう返す。
「そんな事構いはしないわよ。それより、愛の雫を探し出す方が先決だわ」
ああ、この子って、本当に孝さんの事が好きなんだなぁ。
彼女の言葉を聞いて、俺は素直にそう思った。
と、その時、美鈴が静かな口調で言った。
「じゃあ、私の予備の制服を貸してあげるわよ」
「えっ?」
その言葉に驚いたのは理奈だった。
そして目を丸くしながら美鈴に問いかける。
「それ、どういう事よ?」
それに対して美鈴は変わらぬ口調でこう返す。
「私服のままで学校に行ったら部外者だってすぐにバレるでしょう?
でもミナ高の制服を着ていれば、あんたならそうバレる事はないわよ。
私とあんたは体形も同じくらいだし、制服だって着れるでしょ」
「そうじゃなくて!どうしてあなたが私にそんな事してくれるのかって聞いてるの!」
声を荒げる理奈。
しかし美鈴は事もなげにこう言った。
「だってあんた、本気で孝さんの事が好きなんでしょ?
だから愛の雫を何としても取り返したいんでしょ?
そういう事なら協力するわよ」
「え、だって、あなたは沙穂の味方じゃ──────」
そう言いかけた理奈に、沙穂さんがニコッとほほ笑みながらこう言った。
「私も、理奈お嬢様の恋を応援しますわ♡」
「ええっ⁉何で沙穂までそんな事言うのよ⁉あなたは孝の事が好きなんでしょ⁉」
「それは理奈お嬢様のカン違いです。
そもそも私が孝おぼっちゃまの気持ちを知ったのは極最近の事ですし、愛の雫だって、私は正式に孝おぼっちゃまから受け取った訳ではありません」
「え、そ、そうなの?と、いう事は、え?どういう事?」
予想外の展開に、理奈は頭が混乱しているみたいだった。
なので俺は今回の一件をざっと説明する事にした。




