表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た3  作者: 椎家 友妻
第四話 ミナ高侵入作戦
40/73

1 美鈴VS理奈、再び

 翌日の朝、俺はいつものように食堂で朝食を食べていた。

今朝のメニューはご飯に白菜の漬物、そして夕べの残りの肉じゃがだ。

作ってくれたのは小宵(こよい)ちゃん。

ここに住み出してから間もないが、すっかり(さわ)(なぎ)(そう)の一員としてなじんでいた。

そんな小宵ちゃんが用意してくれた食事を頬張(ほおば)りながら、()()さん矢代(やよ)先輩が嬉々(きき)とした声を上げる。

 「小宵ちゃんは本当にお料理が上手ね~。

それに沢凪荘のお掃除や洗濯も積極的にやってくれるし、私本当に助かるわ♡」

 「もうこのままここのメイドさんになってくれたらええのに~」

 それに対して小宵ちゃんは、照れくさそうに顔を赤くしながらこう返す。

 「そ、そんな、私なんかまだまだ半人前で、皆様にはご迷惑をおかけするばかりで・・・・・・」

 すると矢代先輩の隣に陣取った二人組が、朝食を食べながら言った。

 「いやいや、なかなか立派な仕事ぶりですよ。

この肉じゃがは味がよく染みているし、こちらの白菜の漬物も塩加減がちょうどいい。

これだけでも水森(みなもり)さんの普段の仕事ぶりが()(はか)れるというものです。ねぇお嬢様?」

 「フン、まあそこそこできる事は認めてあげるわ。

でもこの私にこんな庶民(しょみん)的な料理は釣り合わないけどね」

 ちなみにその二人組とは、夕べやって来た(かい)()グループの令嬢の理奈(りな)と、その付き人の浜野(はまの)さんだった。

夕べ沢凪荘を出て行った後、半日も()たないうちに再びやって来たのだ。

そんな二人に、美鈴(みすず)はちゃぶ台を両手で(たた)いて声を荒げる。

 「ていうか何であんた達はまたここに来てんのよ⁉

しかも昨日の今日で、朝ご飯まで一緒に食べて!一体どういう神経してんの⁉」

 それに対して浜野さんが、申し訳なさそうな笑みを()かべてこう返す。

 「いやあ、私も昨日の今日でこちらにお邪魔(じゃま)するのはどうかと思ったんですが、

理奈お嬢様がどうしてもすぐにまた皆様に会いたいとおっしゃいまして」

 するとそれを聞いた理奈が顔を赤くしながら声を荒げた。

 「な、何言ってるの浜野!

私はここに住む庶民達に会いに来たんじゃなくて、早いとこ愛の(しずく)を取り返したいのよ!」

 その言葉にカチンときた様子の美鈴が理奈に言い返す。

 「何よその人を見下した態度は⁉

家がお金持ちか知らないけど、あんただって私達庶民と同じ人間じゃない!」

 「なっ⁉何ですってぇっ⁉この私があなた達と同じ⁉

冗談言わないで!私は海亜グループの令嬢なのよ⁉

あなた達とは住む世界が違うの!

本来ならこんなぼろっちい所に来る事はないし、こんな庶民的な食べ物を口にする事だってないんだから!」

 ちなみにこいつは、小宵ちゃんが作ってくれたその庶民的な料理をきれいに(たい)らげたのだが、それはどう解釈したらいいんだろう?

そんな中美鈴と理奈の言い争いは続いた。

 「とにかく!あんたに返す愛の雫はないわ!ご飯を食べたらさっさと帰りなさいよ!」

 「何であなたにそんな命令されなくちゃなんないのよ⁉これは私と沙穂の問題なのよ⁉」

 「それを言うならあんただって関係ないじゃないの!これは沙穂さんと孝さんの問題なんだから!」

 「う、うるさいわね!つべこべ言わずに愛の雫を返せって言ってるのよ!」

 「だからあんたには返さないって言ってんのよ!」

 そして強烈な視線の火花を散らす美鈴と理奈。

何だか愛の雫そのものよりも、この二人の対決がメインみたいになってきたぞ。

 そんな二人をハラハラしながら(なが)めていると、流石(さすが)に困った様子で沙穂さんが口を(はさ)んだ。

 「落ち着いてください二人とも。私の事でそんなに喧嘩(けんか)しないで。

理奈お嬢様、愛の雫はお返ししますので、どうか怒りをお静めください」

 「フンッ!最初から素直にそう言えばいいのよ。さあ、さっさと渡しなさい」

 沙穂さんの言葉に理奈は勝ち(ほこ)ったようにそう言い、沙穂さんに右手を差し出した。

すると沙穂さんはニコッと笑ってこう言った。

 「残念ですが、それはできません」

 「はぁっ⁉あなた今返すって言ったじゃないの!私をからかってるの⁉」

 怒りの声を上げる理奈。

しかし沙穂さんは何ら悪びれる様子もなくこう続けた。

 「からかっているんじゃありません。そうじゃなくて、愛の雫は今、()が(・)持って(・・・)いる(・・)んです」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ