15 美鈴、乱入
理奈の言葉に、もう勘弁ならないという様子の美鈴が台所から出てきた。
すると理奈は美鈴の方を睨んでこう返す。
「何よ、部外者は引っ込んでなさいよ」
それに対して美鈴。
「そんなの関係ないわ!さっきから聞いてたら言いたい事をズケズケと!
沙穂さんの事をそれ以上悪く言うのは私が許さないわよ!」
「はぁっ⁉一般庶民が私に意見しようって言うの⁉ふざけるんじゃないわよ!」
「ふざけてるのはあなたでしょ!」
「何ですってぇっ⁉」
そして視線の火花を散らす美鈴と理奈。
もう今にもとっくみ合いの喧嘩でも始めそうな雰囲気だ。
正直言って、怖い。
するとそんな二人の間に、矢代先輩と浜野さんが慌てて止めに入った。
「みっちゃん落ち着いて?こんなところで喧嘩なんかしたらあかんて」
「そうですよ理奈お嬢様。沙穂さんは知らないとおっしゃっているんですから、ここは大人しく帰りましょう」
更には台所に隠れていた小宵ちゃんも、勇気を振り絞って茶の間に足を踏み入れ、震える声で口を開く。
「け、喧嘩はっ、よくないとっ、思いますっ」
すると理奈は「フンッ」と呟いて踵を返し、
「これで諦めたと思わない事ね!」
と吐き捨てるように言い、そのまま食堂を出て行った。
「あ、お待ちください理奈お嬢様!」
浜野さんも慌ててその後に続き、
「皆様、理奈お嬢様の数々のご無礼、どうかお許しください」
と俺達にペコリと頭を下げて出て行った。
「まったく!一体何なのよあいつ!」
まだ怒りがおさまらない様子で、美鈴は腕組みをしながら言った。
それに対して沙穂さんが申し訳なさそうに言う。
「ごめんなさいね。彼女は孝おぼっちゃまの幼なじみで、王本家と海亜家の旦那様が決めた許嫁。
だから私に、孝おぼっちゃまを盗られたんだと思い込んでいるのね」
「あの子、まだ諦めへんって言うてたけど、またここに来るつもりなんやろうか?」
「その可能性は大いにありますね」
矢代先輩の言葉に俺がそう答えると、美鈴が俺の方に向き直って言った。
「これは早いところ愛の雫を見つけ出さないと、益々(ますます)面倒な事になるわよ」
「う、それは、分かってるよぉ・・・・・・」
たじろぎながら答える俺。何だか知らねぇけど、また面倒な事に巻き込まれちまった。
果たして俺は愛の雫を見つけ出す事ができるのか?
そしてもし、見つからなかった時の俺の運命は?




