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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た3  作者: 椎家 友妻
第三話 消え去ったアレ
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14 理奈の要件

 今、(さわ)(なぎ)(そう)の食堂には、妙に緊迫した空気が(ただよ)っていた。

その原因は、つい先ほど沢凪荘にやって来た二人の人物。

理奈(りな)と呼ばれたいささか性格に問題がある女の子と、その付き人の男だ。

この二人が食堂のちゃぶ台の前に並んで座り、その正面に()()さんと俺が対峙(たいじ)している。

それ以外の面々は台所にそそくさと避難し、そこからこっそりとこちらの様子を見守っていた。

出来れば俺もそっちに避難したかったが、

『聖吾君はこっち♡』

と沙穂さんに言われてここに座らされてしまった。

 さて、今から一体何が始まるんだ?

そもそもこの二人は何者なんだ?

 そんな中沙穂さんは、この緊迫感とはおよそ無縁な(ほが)らかな笑みで前の二人に言った。

 「遠路はるばるお疲れになったでしょう。とりあえずお茶をどうぞ」

 すると二人は目の前の湯飲みに入ったお茶を一口すすった。

 「おお!これはとてもおいしい緑茶ですね!お茶の葉は何を使ってらっしゃるのですか?」

 「フン、こんなの、()れ方がいいだけの安物のお茶よ」

 嬉々(きき)とした声を上げる男に、理奈がにべもなく答える。

これは一応沙穂さんの事を()めているんだろうか?

それとも安物のお茶をけなしているだけだろうか?

 そんな中沙穂さんは、朗らかな笑みのまま俺に言った。

 「(せい)()君、こちらのお二人はね、(おう)本家(もとけ)と昔から親交の深い、

(かい)()グループの次女の理奈お嬢様と、その付き人をしている浜野(はまの)(こう)()さん。

王本のお屋敷に勤めていた頃、何度かお会いした事があるの。

ちなみにこの理奈お嬢様は、(たかし)おぼっちゃまの許嫁(いいなずけ)なの」

 「へぇ~」

 と俺。

やっぱりこの理奈って子は金持ちのお嬢様だったのか。

しかも彼女が孝さんの許嫁だったとは。

とか思っていると、執事の浜野さんが顔を赤くしながら沙穂さんに言った。

 「ど、どうも浜野です!あ、あの、私、尊敬する沙穂さんにまたお会いできて感激です!」

 「あら、そんな風に言っていただけるなんて光栄です♡」

 沙穂さんがニコっとほほ笑んでそう言うと、浜野さんは一層顔を赤くしてうつむいた。

どうやらこの人も沙穂さんにホの字のご様子。

しかしそんな事はお構いなしに、理奈は(するど)く沙穂さんを(にら)んで言った。

 「そんな事はどうでもいいの。私はあなたに話があってここに来たのよ」

 「まあ、そうだったんですか。海亜グループのお嬢様が、私なんかに何のお話でしょうか?」

 (いた)って(おだ)やかな口調で(たず)ねる沙穂さん。

すると理奈は、一層鋭く沙穂さんを睨んでこう言った。

 「もう、孝をたぶらかすのはやめてもらえないかしら?」

 それに対して沙穂さんは、穏やかな口調のままこう返す。

 「たぶらかす?私がいつ、孝おぼっちゃまをたぶらかしましたか?」

 「あなたが王本の屋敷で働いていた時よ。あなたのせいで孝は、おかしくなっちゃったんだからね」

 「それは誤解です理奈お嬢様。私が孝おぼっちゃまをたぶらかした事は一切ありませんし、そもそも孝おぼっちゃまは、理奈お嬢様の許嫁ではありませんか」

 「しらばっくれないで!」

 理奈はそう叫ぶと同時にバン!とちゃぶ台を両手で(たた)く。

その迫力に俺と浜野さんは思わずビクッとなった。

しかし沙穂さんは全く意に介さない様子でこう返す。

 「しらばっくれてなどいませんよ、理奈お嬢様」

 すると理奈はバッと立ち上がり、沙穂さんに右手を差し出して言った。

 「返して」

 「返す?何をです?」

 「とぼけないで!愛の(しずく)よ!あなたが孝からかすめ取ったんでしょ!」

 「とんでもない。私はそんな事していませんよ」

 「嘘おっしゃい!孝は今愛の雫を持ってないのよ?

あなたが持ってないなら誰が持ってるって言うのよ!」

 「ちょっと!いい加減にしなさいよあなた!」



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