表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た3  作者: 椎家 友妻
第三話 消え去ったアレ
36/73

12 沙穂の気持ち

 「えええええっ⁉な、無くしてしまったんですか⁉」

 (さわ)(なぎ)(そう)の食堂に、小宵(こよい)ちゃんの叫び声が響き渡る。

俺と美鈴(みすず)がバイトから戻った後、愛の(しずく)を無くした事を小宵ちゃんに告げたのだ。

今のところ愛の雫が見つかりそうなメドは全く立っていない。

それにこの事をいつまでも(かく)す訳にもいかないので、やむを得ず話す事にした。

そしてそれを聞いた小宵ちゃんは、目を点にして呆然(ぼうぜん)としていた。

が、そんな小宵ちゃんにかける言葉を俺は持ち合わせていなかった。

 ちなみにここにはいつも通り()()さんと矢代(やよ)先輩も居て、そんな俺の言葉を聞いた沙穂さんが、不思議そうにこう言った。

 「愛の雫ってもしかして、(おう)本家(もとけ)に代々伝わる家宝のイヤリングの事?」

 「はい、そうです・・・・・・」

 力なく答える俺に、沙穂さんは続けて(たず)ねる。

 「どうして聖吾君がそれを知っているの?しかもそれを無くしたってどういう事?」

 「実は・・・・・・」

 ここで俺は、今回の一件を洗いざらい沙穂さんに話した。

(たかし)さんの言伝(ことづて)の内容、そして三年前にそれを岩山(いわやま)店長に(たく)した事。

でも岩山店長は沙穂さんに愛の雫を渡さず、

それを勝手に俺にプレゼントして、俺がそれを無くしてしまった事。

 それらの事を一通り聞いた沙穂さんは、苦笑しながら言った。

 「そう、だったの。孝おぼっちゃまが、私の事を・・・・・・」

 「沙穂さんが屋敷に勤めていた頃、そういう事には気づかなかったんですか?」

 美鈴(みすず)がそう(たず)ねると、沙穂さんは首を横に振りながら言った。

 「私、その頃は他のメイドさん達にエッチなイタズラをする事で頭が一杯だったから、全く気付かなかったわ」

 駄目だこの人。岩山店長も大概(たいがい)駄目だが、この人も負けず(おと)らず駄目だ。

どうして孝さんはよりにもよってこんな人を好きになっちゃったんだ?

という言葉は()み込み、俺は沙穂さんにこう言った。

 「まあとりあえずそういう訳なんで、一旦(いったん)愛の雫を孝さんに返そうという事になったんですけど、それを俺が、無くしちゃいまして・・・・・・」

 「それを探す為に、今日は(はよ)うに学校に行ったん?」

 と矢代先輩。

それに俺が「はい」と言って(うなず)くと、矢代先輩はイタズラっぽい笑みを浮かべてこう続けた。

 「な~んや。ウチはてっきり、二人でイチャイチャする為に、早く学校に行ったんかと思うた」

 「なっ⁉そ、そんな訳ないでしょ⁉」

 顔を真っ赤にして声を荒げる美鈴。

そんな中小宵ちゃんがうつむきながら言った。

 「で、でも、どうしましょう。もしこのまま愛の雫が見つからなかったら・・・・・・」

 「や、やっぱり、俺のせい?」

 俺がひきつった笑みを浮かべながらそう(つぶや)くと、その場に居た全員が無言で頷いた。

 どうしよう、もう、何処(どこ)かへ消えてしまいたい・・・・・・。

 そんな事を本気で思っていると、美鈴が神妙な口調で沙穂さんに言った。

 「あの、ちなみに沙穂さんは、孝さんの事をどう思っているんですか?」

 すると沙穂さんは少し困ったような笑みを浮かべながらこう言った。

 「うーん、その答えは、孝おぼっちゃまから直接そういうお話があった時に、取っておくわ」

 「そう、ですか」

 と美鈴。

正直俺も聞きたい所だけど、これは沙穂さん自身の問題だ。

 「で、お兄ちゃんは今回の件について、どう落とし前をつけるの?」

 極道の孫娘らしい言い回しで、矢代先輩は俺に言った。

 「う、まだ見つからないと決まった訳じゃないですよっ」

 俺はたじろぎながらそう返すが、沙穂さんが不敵(ふてき)な笑みを浮かべてこう続ける。

 「でもこのまま見つからなかったら、王本グループ全体を敵に回す事になるでしょねぇ」

 「こ、怖い事言わないでくださいよ!」

 俺、下手したら王本家の人に殺されるんじゃないの?

と、本気で思ったその時だった。

 「ご、ごめんくださ~い」

 と、玄関の方から男の人の声が聞こえてきた。

とりあえず一旦この場から離れたかった俺は、

 「あ、俺が出ます」

 と言って食堂から出た。そして

 「はい、どちら様ですか?」

 と言いながら玄関に行くとそこに、さっきの声の主であろう二十代半ばくらいの男と、俺と同い年くらいの女の子が立っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ