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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た3  作者: 椎家 友妻
第三話 消え去ったアレ
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9 尾田先輩はやっぱり知っていた

 「はぁ~っ・・・・・・」

 その足で食堂にやってきた俺は、注文したカツ丼の前で大きなため息をついた。

 見つからない。

愛の(しずく)が見つからない。

 クラスの皆にも一通り聞いてみたけど、誰もそれらしいイヤリングを見た奴は居なかった。

で、最後の希望をかけて(かがみ)先生に聞きに行ったんだけど、やっぱり先生も知らなかった。

こうなると、愛の雫を落としたのはまた違う場所という事になるんだろうか?

学校の廊下、トイレ、その他の教室、はたまた通学路?

だぁぁっ!そんな広い範囲をどうやって探せっていうんだよ⁉

 「はぁ~っ・・・・・・」

 再び深いため息をつく俺。

と、その時。

 「何やらお(なや)みのようね」

 と声がしたかと思うと、一人の女子生徒が俺の隣にオムライスを置いて腰掛けた。

ミナ高三大美女の一人にして新聞部部長でもある、尾田(おだ)清子(きよこ)先輩だ。

ちなみに俺は、この人の事がいささか苦手である。

 「あら、こんなに素敵な女子が隣に座ったんだから、もっと(うれ)しそうにしたらどうなの?」

 そんな俺の心中を見透かしたような笑みを浮かべ、尾田先輩は言った。

相変わらず人の心を見抜くのがお上手なこって。

おまけに自分に対してこれだけの自信が持てるというのは、むしろうらやましいくらいだ。

そんな尾田先輩に敬意を表し、俺は最大級の棒読みでこう言った。

 「ワァイ、ウレシイナァ」

 「言い方に問題があるけど、言葉そのものは正しいわね」

 尾田先輩は特に気を悪くするでもなくそう言うと、(うす)い笑みを浮かべながら続けた。

 「で、何をそんなに(なや)んでいるの?」

 この人に下手に隠し事をしてもすぐにバレるのは重々(じゅうじゅう)承知(しょうち)しているので、俺は正直に答える事にした。

 「ちょっと、ある大事な物を無くしちゃって・・・・・・」

 「それって、愛の雫っていうイヤリングの事?」

 「・・・・・相変わらず情報が早いですね。もう凄いを通り越して怖いですよ、マジで」

 「大げさねぇ、ちょっと夕香奈(ゆかな)に聞いただけよ」

 「本坂(もとさか)先輩ですか・・・・・・」

 あの人は尾田先輩に何でも(しゃべ)っちゃうからなぁ。

そう思いながらカツ丼を一口頬張(ほおば)ると、尾田先輩はさも愉快(ゆかい)そうに続けた。

 「何だかまた面白い事に巻き込まれているみたいね」

 「巻き込まれている当人は、全く面白くないですけどね」

 「君を見てると退屈しなくていいわ」

 「()め言葉には聞こえないです」

 「それで、お探しの物は見つかりそう?」

 「そのアテが全くないから、こうして悩んでるんですよぉ」

 俺がそう言うと、尾田先輩はズズイッと俺に顔を近づけて言った。

 「ねぇ、君の探し物、私が見つけてあげようか?」

 「ええ?」

 まるで私が探せば必ず見つけられるわよという口ぶりだ。

でもこの人なら本当に見つけてしまいそうな気がする。

が、しかし、俺はそんな尾田先輩にこう答えた。

 「いえ、結構です」

 「あら、私じゃ役不足かしら?」

 「そうじゃなくて、尾田先輩に頼むと、その、借りを作っちゃう事になるんで」

 すると尾田先輩は少しムッとした様子でこう返す。

 「失礼ねぇ、私は純粋に、君の力になりたくて言ったのに」

 「じゃあ、貸し借りとかは関係なしで協力してくれるんですか?」

 「それとこれとは話が別よ」

 「やっぱり俺に借りを作らせようとしてるんじゃないですか!」

 「だから、私は純粋な気持ちで君に貸しを作ろうとしているのよ」

 「尚更(なおさら)タチが悪い!」

 「じゃあこのまま探し物が見つからなくてもいいの?相当高価な物なんでしょう?」

 「うっ・・・・・・」

 「君にそれを弁償するだけのお金があるのかしら?」

 「うぅ・・・・・・」

 「無くした物を弁償するか、私に借りを作るのか、どっちがいいの?」

 「何かもう脅迫みたいになってますけど⁉」

 「私は純粋な気持ちで君を脅迫しているのよ」

 「脅迫ってハッキリ言っちゃったし!まさか尾田先輩が愛の雫を隠し持ってるんじゃないでしょうね⁉」

 「もしそうなら、さっさと君に返してそれを貸しにするわよ」

 「・・・・・・」

 もはやグゥの根も出ない俺。

これは尚更早いところ愛の雫を見つけ出さなきゃいけない。

俺は心の底からそう思ったのだった。



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