8 先生に聞くのは間違いだった?
その日の昼休み、俺は職員室にやって来た。
担任の鏡左京先生に、この前教室に落し物がなかったか聞きに来たのだ。
鏡先生は自分の机で弁当を食べていた。
その鏡先生に俺は声をかけた。
「先生、ちょっといいですか?」
すると鏡先生はにわかに顔を赤らめながらこう答えた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。先生に、心の準備をさせてくれ」
ちなみにこの人は真正のホモで、あろうことか俺に恋心を抱いている。
しかし今はそんな事はどうでもいい(今じゃなくてもどうでもいい)。
俺は平静を保ってこう続ける。
「何に対しての心構えか知りませんが、その必要はありません。
それよりちょっと先生に聞きたい事があるんですけど」
「心配ない。先生に、恋人は居ないぞ」
「んな事聞きたいんじゃありません。そうじゃなくて、最近ウチの教室で、落し物がなかったですか?」
「落し物?・・・・・・いや、先生の元には何も届いてないが」
「そう、ですか・・・・・・」
「何か落としたのか?」
「いえ、無いならいいんです」
「先生に対する恋心を、落としたんじゃないのか?」
「それではこれで失礼します」
「ちょっと待て稲橋。先生からも話がある」
「何ですか?」
「・・・・・・いや、やっぱりいい。この話はまた、日を改めてする事にしよう」
「・・・・・・?」
一体何なんだ?




