7 美鈴、ちょっと機嫌がなおる
教室にたどり着くと、他の生徒の姿はまだなかった。
「よかった。じゃあ早いところ教室をかたっぱしから探そうぜ」
「そうね」
俺と美鈴は早速愛の雫を探し始めた。
自分の机やその周辺はもちろん、教室の中のあらゆる場所を徹底的に探し回った。
・・・・・・が、愛の雫は何処にも見当たらなかった。
「ねぇな・・・・・・」
「ないわね・・・・・・」
そう言って肩を落とす俺と美鈴。
どうしよう。
ここでも見つからねぇとなると、一体何処を探せばいいんだ?
そう思いながら青ざめていると、美鈴がひとりごちるように言った。
「もしかして、他の誰かが拾って持って行っちゃったのかなぁ?」
「その可能性もあるな」
「そもそもどうしてそんな高価な物を、学校に持って来ようなんて思った訳?
万が一無くしたり盗まれたりするかもって考えなかったの?」
「だ、だってその時は、あのイヤリングがそんなに高価な物だとは知らなかったんだよぉ」
「あ、そうか、田宮先輩にプレゼントする為に持って来たんだ」
「だからぁ、それは違うって!」
「じゃあ、本坂先輩?」
「それも違う!」
「分かった。矢代ちゃん先輩だ」
「違ぁああう!」
あれはお前にあげようと思ってたんだよ!
とよっぽど言ってやりたかったが、そこまで言う度胸は俺にはなかった。
すると美鈴は一転してしおらしくなり、おずおずとした口調でこう言った。
「あの、それじゃあ、もしかして、私、とか・・・・・・?」
「え・・・・・・」
その問いかけに、俺は言葉を詰まらせる。
な、何だよこの妙な雰囲気は?
そもそも俺は別に深い意味であのイヤリングを美鈴にあげようと思った訳じゃねぇぞ?
ただ美鈴のご機嫌をとろうと思っただけだ。
なので俺はぶっきらぼうな口調でこう返す。
「ああ、そうだよ。でも別に、深い意味はねぇぞ?
最近ずっとお前の機嫌が悪かったから、何かプレゼントをして機嫌を取ろうと思っただけだ」
「そう、なんだ・・・・・・」
そう言って黙り込む美鈴。
いや、あの、そこで黙られると俺もどうしていいのか分からないんだけど。
と、この何とも言えない雰囲気にモヤモヤしていると、
「おはよう!」
という声とともに他の生徒達がゾロゾロと教室に入って来たので、俺と美鈴は慌てて自分の席に戻った。
だぁああっ!何なんだよこの感じ!
美鈴が何か変な態度を取るから、俺まで何か変な感じじゃねぇか!
もぉおおっ!
あいつは一体何考えてんだ!




