4 意外と通じるアイコンタクト
沢凪荘に着くと矢代先輩が、
「おかえり~」
といつものように出迎えてくれた。
そして再びここに戻ってきた小宵ちゃんを見て、嬉しそうな声を上げた。
「小宵ちゃん!また来てくれたんやね!」
そう言ってガバッと小宵ちゃんに抱きつく矢代先輩。
この人は本当に小宵ちゃんの事が好きなんだな。
一方の小宵ちゃんは、
「も、もう少しだけ、ここでお世話になります・・・・・・」
と言いながら顔を赤らめている。
するとその声を聞いた沙穂さんも食堂から姿を現した。
「あら、小宵ちゃんじゃないの。お屋敷に戻らなくてよかったの?」
「あ、えと、孝さんがもう少しゆっくりしてきてもいいって言ってくれたんで、またここに来てもらったんですよ」
愛の雫の事は一応内緒にしなきゃならないので、俺は咄嗟に嘘をついた。
沙穂さんはそれを疑う様子もなく、
「あらそうなの。良かったわね小宵ちゃん♡」
と言って嬉しそうにほほ笑む。
それを確認した俺は、美鈴の方を見て
『いいか、さっきの話は沙穂さんには内緒だぞ』
という念を送った。
するとそれを受け取った様子の美鈴は
『分かってるわよそんな事』
という目で俺をにらみ返してきた。
よし、これで沙穂さんに愛の雫の事は内緒にできるはずだ。
あとは俺の部屋にある愛の雫を小宵ちゃんにこっそり返すだけ。
なので俺はそそくさと自分の部屋に向かった。




