3 美鈴が不機嫌なワケ
ブロロロロ。
俺と小宵ちゃんは、バイトを終えた美鈴とともに、バスで御撫町へと向かっていた。
「ホントにドジね。そんな大切な物を持っていた事に気づかないなんで」
俺から事のあらましを聞いた美鈴は、呆れた顔でそう言った。
それにカチンときた俺は、ムッとしながらこう返す。
「しようがねぇだろうが。岩山店長がアレを俺にくれた時、そんな事は一言も言ってなかったんだからよ」
「そもそも男のあんたがイヤリングなんかもらってどうするのよ?誰かにあげるつもりだったの?」
「そ、それは、お前には関係ねぇだろうが」
そう言って口をつぐむ俺。
まさかここで美鈴に『お前にやるつもりだった』なんて口が裂けても言えねぇ。
そんな事言ったら余計馬鹿にされるかもしれねぇし。
するとそんな俺に美鈴は目を細めてこう言った。
「分かった。あのイヤリング、田宮先輩にプレゼントするつもりだったんでしょう?」
「は?はぁあっ⁉何でだよ⁉何でここで田宮先輩が出てくるんだよ⁉」
「だってあんた、田宮先輩の事が好きなんでしょ?」
「違ぇよ!俺がいつそんな事言ったよ⁉」
「この前仲良さそうにしてたじゃないの!」
「うっ・・・・・・」
こいつ、この前の事(第二巻おまけドラマ参照)をまだ根に持ってんのか。
ていうかこいつがずっと不機嫌なのって、もしかしてそれが原因なのか?
とか考えていると、俺と美鈴の間に座る小宵ちゃんが、おそるおそる声を上げた。
「お二人とも、喧嘩はよくないですよ。同じアパートの住人なんですから、もっと仲良くした方が・・・・・」
すると美鈴は、
「フン、今日は小宵ちゃんに免じてこれでカンベンしてあげるわ」
と言ってそっぽを向いた。
まったく、相変わらず可愛くねぇ奴だ。
そんな可愛くない美鈴はほっといて、俺は小宵ちゃんに笑顔で言った。
「ところで、今日はもう遅いし、また沢凪荘に泊っていけばいいよ」
「え、でも、ご迷惑なんじゃ・・・・・・」
「そんな事全然ないって。矢代先輩もきっと喜ぶだろうし」
「そ、それじゃあ、お言葉に甘えて・・・・・・」
「フン、相変わらず可愛い女の子には優しいんだから・・・・・・」
美鈴がひとり言のようにそう呟いたが、ここで言い返すとまた喧嘩になるのでグッとこらえた。
何でこいつはこんなに可愛くねぇんだ。
こいつの考えてる事がさっぱり分かんねぇよ。




