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1 美鈴はやっぱりツンツンしていた
俺と小宵ちゃんがファミレスニューハーフに着いた頃には、辺りはすっかり夜になっていた。
外から店を覗くと、店内にお客さんの姿はほとんどなかった。
俺と小宵ちゃんは店の裏手に回り、勝手口から店の中に入った。
するとそこで、大きなゴミ袋を両手にひとつずつ持った、ウェイトレス姿の美鈴とバッタリ出くわした。
「わ、稲橋君、と、小宵ちゃん?二人とも何でここに?」
「ちょっと店長に用があってな。そのゴミ袋、俺が捨てて来てやるよ」
俺は両手を出してそう言ったが、美鈴はぶっきらぼうに、
「いいわよ。それより店長に用があるならさっさと行きなさいよ。今休憩室に居るから」
と言い、さっさと裏口から出て行った。
「美鈴お嬢様は、聖吾様にはいつもあんな感じなのですか?」
「まあ、そうね・・・・・・」
遠慮がちに尋ねる小宵ちゃんに、苦笑しながら答える俺。
俺と美鈴って、これから先もずっとこんな関係なんだろうか?
そう思うといささか気が重くなる。
が、今はそんな事でヘコんでいる暇はないので、早速岩山店長の居る休憩室へ向かった。




