5 美鈴はまだまだ怒っていた
と、いう訳でその日の放課後。
終礼が終わると美鈴はスッと席を立ち、サッと教室から出て行った。
俺も立ち上がり、その後を追う。
俺と美鈴は同じ所でバイトしているので、シフトが同じ時はいつも一緒にバイト先に行く。
が、美鈴はまだ怒っているのかして、俺から逃げるようにさっさと歩いて行く。
「おい、ちょっと待てよ美鈴」
と俺が呼び止めても、足を止める事すらしない。
こりゃあイヤリングをプレゼントする以前に、口も聞いてもらえそうにないなぁ。
美鈴は自転車を押しながら足早に校門を出た。
その傍らを俺がついて行く。
本当に口も聞きたくないなら一人で自転車に乗って先に行っちまいそうなもんだけど、そうしないって事は、一応話はしてくれるって事なのかな?
そう判断した俺は、恐る恐る美鈴に尋ねる。
「なあ、まだ怒ってんのか?」
「別に、怒ってなんかないわよ」
間髪いれずに美鈴が答える。
う~む、怒ってないと言いつつ、こりゃあ相当怒ってんな。
なので俺は至極穏やかな口調でこう続ける。
「思いっきり怒ってるじゃねぇか。いい加減に機嫌直せよ」
「だから!怒ってないって言ってるじゃない!」
「怒ってるだろ」
「怒ってないわよ!」
「お前はホントに素直じゃねぇな!」
「何であんたに素直になんなきゃいけないのよ!」
「ぐぬぬぬ・・・・・・」
せっかく人が穏やかに話を進めようとしてんのに何だこの態度は!
相変わらず可愛くねぇ!
もういい!こんな奴にプレゼントはやらん!
そう決めた俺は、そっぽを向いてそれ以上口を聞かなかった。
対する美鈴もそっぽを向き、それ以上は何も言わなかった。




