4 これはただのご機嫌取り
コロッケパンを食べ終えた俺は、美鈴の居る方をチラッと見やった。
美鈴はクラスの女子達と弁当を食べながら、楽しそうに談笑していた。
さて、どうやって渡そうか。
渡そうかというのは、言うまでもなくあのイヤリングである。
男の俺が持っていてもしょうがないので、美鈴にやる事に決めたのだ。
いや!
だからって美鈴の事がどうとかいう訳じゃあ全然ないんだぞ⁉
本坂先輩は気になる女の子にあげればいいとか言ってたけど、それは全然関係ないのですぞ⁉
ただ美鈴がここのとこ俺に対して機嫌がすこぶる悪いから、何かプレゼントでもあげてご機嫌を取ろうと思っただけなんだ!
そう!
これはただのご機嫌取りなんだよ!
ようござんすね皆さん!
「イナゴン?どうしたんだよボーっとしちゃって」
まあそういう訳であのイヤリングは美鈴にやる事にしたんだけど、実は今日学校に持って来てるんだよな。
だって沢凪荘で渡すと矢代先輩や沙穂さんにメチャクチャ冷やかされそうだし。
でも、かといって学校の中で渡すのも無理だ。
万が一他の生徒に見られたら大変だからな。
となると、やっぱりバイトの行き帰りの時に渡すしかねぇか。
あいつと二人っきりになる時といえば、その時ぐらいしかねぇもんな。
「なあ、イナゴンってば」
決めた!今日学校が終わってバイトに行く時に、あいつにさりげなくイヤリングを渡す!
「よし!この作戦で行くぞ!」
「・・・・・・どの作戦?」




