6 メイドさんご案内
「ただいまぁ」
沢凪荘へたどり着いた俺は、沢凪荘特有の開きにくい引き戸を何とか開けてそう言った。
すると食堂の入口からネグリジェ姿の矢代先輩が顔を出した。
「お帰りお兄ちゃん。遅かったなぁ」
その瞬間隣に居た彼女、小宵ちゃんは、ササッと俺の背後に隠れた。
この子はどうやらかなりの人見知りみたいだな。
と思っていると、それを見た矢代先輩がトタトタとこちらに歩み寄って来た。
『ねえねえお兄ちゃん、その子誰?』
矢代先輩はそう言うと同時に、俺の背後をひょいっと覗きこむ。
同時に小宵ちゃんが
「ひっ」
と小さく声を上げて顔を伏せると、矢代先輩はジトっとした目つきでこう言った。
「まさかお兄ちゃん、どこかの屋敷からメイドさんをさらって来たん?」
「ち、違いますよ!」
あらぬ誤解に、俺は咄嗟に声を荒げる。
「この子は俺がさらって来たとかじゃなくて、沙穂さんに用があるらしいからここに連れてきただけです!」
「あら、私に用があるの?」
俺の言葉を聞いた沙穂さんが、食堂から顔を出してそう言った。
しかし小宵ちゃんは俺の背後で縮こまったままだ。
本当に人見知りが激しいんだなぁと思いながら頭をかいていると、矢代先輩が軽い口調で言った。
「とりあえず上がってもろうたら?そんな状態じゃあ話もでけへんやろうし」
「それもそうですね」
そう言って頷いた俺は、小宵ちゃんを沢凪荘の食堂に案内する事にした。
はてさて、この後どんな話が聞けるのやら。




