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12歳の悪役令嬢は走る

離れて行く父の後ろ姿をみながら何故か違和感がする。

あんな暗い表情のお父様をみたことがない。


「ブロッサム公爵もお忙しそうで大変ですわね?」


隣でレティシア様がわたくしを気遣う。


「…そうですわね。」


「では、そろそろ参りましょうか?」


レティシア様がわたくしの手を引いた。


頷こうとしたら後ろからカムが声を届く。


「談話中申し訳ありません。お嬢様、少し宜しいでしょうか?」


「何よ?」


振り返るとカムがいつもより余裕ない表情でわたくしをみている。


「業務について旦那様と急ぎにお伝えしたいことがありまして、少し席を外させていただきたいのですが許可を頂けますか?」


今から業務?意味が分からない。


「いきなり何よ?今から王子殿下の元へ挨拶に行くのに…」


でも、いつもと違うカムに戸惑う。


「お嬢様の為でもあるんです!お願いします!!」


更に顔を詰めるカムに怯む。

ううぅ…ほんとに何よ!


「わ、分かったわよ!許可するわ!」


「ありがとうございます!」


カムはアリアに「お嬢様を頼む」と告げて直ぐに行ってしまった。


「…はぁ…本当におかしくなっちゃったのかしら?」


昨日からやはりカムはおかしい。


「ロザリア、もう宜しいかしら?」


レティシア様が待っている事を忘れていた。

慌ててレティシア様に頷く。


「お待たせして申し訳ありません。」


「いいえ。では参りましょう?」


私たちは殿下達の元へ向かった。


・・・・・



「レジーナ王妃殿下、アルベルト王太子殿下、ルーベルト殿下ご機嫌麗しゅう。ご挨拶が遅くなりお詫び申し上げます。この度はお誘い頂き誠に光栄です。」


二人揃って淑女の礼をとる。


本来なら一人ずつ挨拶するはずなのに、まさか本命ライバル同士の公爵令嬢達が一緒になって挨拶する姿は周りからみればさぞかし異様だろう。


「お初にお目にかかります。わたくしブロッサム家が一の娘、ロザリア・ブロッサムと申します。」


「続いてヴァンデル家が一の娘、レティシア・ヴァンデルです。わたくしの場合は王妃殿下と王太子殿下にお会いするのは昨日ぶりですわね?」


レティシア様は楽しそうに小さく笑った。


「お二人とも来てくれて嬉しいわ。なかなか来ないものですから私の息子は振られてしまったとばかり思っていましたけど、安心したわね。」


王妃様は微笑みワザとため息ついて息子達を気遣った。


そんな王妃様に王太子殿下は優し気に微笑み、ルーベルト殿下は表情を変えないままじっと王妃様を見ている。


麗しく微笑むアルベルト王太子殿下と、冷静なルーベルト殿下…なんて眼福なのでしょう!?


そんな事を思っていたら、アルベルト王太子殿下が立ち上がってこちらに来る。


「ロザリア嬢はお初にお目にかかります。…レティシア嬢は昨日ぶりですね。」


「お、お会いできて光栄ですわ!アルベルト王太子殿下」


王太子であるアルベルト様も流石ルーベルト殿下の兄であって大変麗しい。

上がってしまうわたくしを見てさわやかに笑顔みせる王太子殿下はルーベルト殿下のほうに顔を向けた。


「ルー。君も挨拶しなさい。」


兄に言われてルーベルト殿下は席を立った。


こちらに来るルーベルト様は、初めてお姿を見た時と同じ幻想の薔薇が王子の周囲を囲っている。


「…ルーベルトです。お会いできて光栄です。」


静かにルーベルト様は挨拶をした。


「あっ、はじめ…」



「私は先に席へ戻ります。どうぞ皆様で楽しい談話を。」


こちらが挨拶する前に、ルーベルト様は話を終わせて席に戻ろうとした。


「…え?」


…淡白すぎて取り付く島もない?まだ全然しゃべっていないわよ!?


「ルー!」


そんなルーベルト様をアルベルト様が窘める。

でも、ルーベルト様は無視して席へ戻っていった。


「もうルーベルトったら…ごめんなさいね?あの子、誰でもこうなのよ。この国に帰ってきてからずっと…」


王妃は困ったように笑う。


元気がない?誰かが言っていたわね?『ルーベルト王子は傷心中』と…。


「こんな素敵なお嬢様たちに囲まれていたら少しは機嫌がよくなると思ったけど難しいわね。」


ため息をつく王妃様。


「でも少し注意は必要ですね。私がいって参ります。」


王太子殿下も軽く会釈しルーベルト様のところに行った。


そんな二人を見て王妃様は更にため息をつく。


「本当に困ったものだわ。」


「ルーベルト殿下はどうかなさったのですか?」


『この国に帰って来てから』と言っていた。

何かあったのだろうか?


「え?…ええ少しね。理由は言えないけど、あの子に悲しいことがあったのよ。」


王妃様は苦笑する。


「それより、ブロッサム公爵はどうしたのかしら?今日は貴女と一緒に挨拶に来ると聞いていたけどいらしていないわね?」


王妃様は疑問に思っている。


あれ?今回のお茶会は、わたくしだけが王子殿下に挨拶すると言う話になっていたはず。


もしかして…お父様は婚約者になるチャンスを別で用意していた?


「ブロッサム公爵様は先程お会いましたわ。でも緊急の用事がありまして、ブロッサム公爵様の代わりにわたくしがロザリア嬢と参りましたの。」


レティシア様が先に答えた。

何故そのセリフをあんたが言うのよ?


「緊急…こんな日に?…もしかして、この前話していた事と関係あるのかしら?」


この前話していた事?何の話か分からなくて首を傾けた。


「この前の話とは何でしょうか?」


問うと、王妃様は思い出す様に片手を頬にあてる。


「確かわたくしが公務の帰りにブロッサム公爵が隠れて女性と話をしていたのを見たのよ。それで公爵一人になった時に私は注意をしたの。」


父が女性と会っていた?


凄いカミングアウトに引きつっていると、王妃様は「誤解しないで」と一言断った。


「その女性は外交官だったの。公爵の話だと奥様の病気を治す為に薬の手配を彼女に依頼していたそうで、もうすぐ手に入いるという報告を受けていたそうよ。」


お母様の病気を治すために?


王妃様の話はまだ続く。


「昔からずっと奥様のことを愛していたもの。『妻を早く治してあげたい。家族4人で暮らしたい』って言っていたわ。それが実現するのではないかしら?」


嬉しそうに話をする王妃様を言葉がわたくしの頭の中を駆け巡る。


お母様を愛していた?あの母に会おうとしなかった父が?


…病気を治して家族4人で暮らすことができるの?


「…。」


先程のお父様の暗い顔を思い出す。


そしてその後カムの様子。


カムは先程なんて言った?



『お嬢様の為でもあるんです!』



なんだか胸騒ぎがする。


「王妃様、申し訳ありません。少し席を外します!」


王妃様に軽く頭を下げて、王城へ向かう為に走り出す。



アリアは慌ててついて行こうとするが振り返る余裕がなかった。


周囲が唖然する中、走るわたくしの様子をルーベルト殿下が見ていたことも知らずに…。


お読みいただきありがとうございます。


次はカム視点になります。


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