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閑話 悪役令嬢達のお茶会


本日晴天


お茶会には良い日だわ?


ゲストを迎える支度に力が入る。


今日はとても楽しみね?


「お嬢様、楽しみの所申し訳ありませんが、ここは私達に任せて頂けませんか?お嬢様は時間までお部屋でお休みくださいませ。」


「アリア、もうすぐみんな来るのよ?居ても良いでしょう?」


「いいえ、お嬢様がいますと準備に時間がかかりますのでお部屋でゆっくりとして頂けると助かります。」


「ええ!?せっかくマリアンの快気祝いなのにぃ!」


そう、今日はマリアンをブロッサム邸に呼んでお茶会をするのだ。


勿論ナージャとリリーもいる。悪役令嬢たちのお茶会である。


このお茶会は攻略対象者の4人は来ない。


そしてカムもこの場にいない。


カムは学園の臨時講師として居ないので、わたくしが入学するまでは会えない。


でも…全く会えないわけではないけどね?

休日は帰ってくるのだから。


しかし臨時講師になるなんて思わなかった。

わたくしの為だとわかるけど、よくお父様を説得したわね?


「お嬢様、ナージャ・カレントス様とマリアン・アンバー様がお見えになりました。」



思い更けていると使用人から到着の報告を受ける。



「はーい。こちらに通してもらって?」


彼女達が到着したようだ。


「ほた、早く来たじゃない?ここで待っていて良かったわ。」


「お嬢様落ち着いてください。公爵令嬢とあろうものが…まったく」


アリアのため息を吐く。


別にいいじゃない。友人だけのお茶会なんて初めてなのだから。


普段はブロッサム家の親戚筋でよくお茶会をしているけど、全くと言って楽しくない。


『お茶会なんて狐の皮を被った婦人達ばかり。』


公爵令嬢に自分の家を取り入れて貰おうと必死に化かし騙そうとする者達。

騙されるふりして逆に掌で転がす。


それがわたくしの仕事だった。


そんなつまらないお茶会しか行ってこなかったけど、今回のお茶会は違う。


不貞腐れていると目の先でナージャと後ろにマリアンの姿が見えた。



「ナージャ、リアン、いらっしゃい?」


「本日はお誘い頂きありがとうございます。」


「少し早かったかしら?」


二人は約束時間よりも早めだったことに気にしている。


「大丈夫よ。さぁ、こっちに来て?」


いつもわたくしとカムが破滅フラグの対策をしているテラスに二人を招く。


ここは一番落ち着くところだから二人に是非見て貰いたい。


「さすがブロッサム家だわ。とても綺麗ね?」


庭に咲く色んな花々をみてナージャは感嘆する。


「そうでしょう?ここは一番わたくしのお気に入りなのよ?」


アリアに三人分のお茶を入れて貰う中、ある事に気づく。


「ねぇアリア、リリーは?」


「先ほど他の者がリリー様にお伝えに行きました。すぐお見えになると思いますよ?」


「そうなの。…噂をすれば来たわ?」


リリーもこちらに向かってきた。


「遅くなって申し訳ありません。ナージャ様、マリアン様、ごきげんよう。ようこそブロッサム家においで下さいました。」


リリーは満面な笑みでナージャたちを歓迎する。


そんなリリーに二人も挨拶を帰した。


「リリー、仕事は落ち着いたの?」


「ええ、本日は処理済み書類の整理をハーンと共に仕分けしていただけなので、後はお任せしました。残りは目途が立っていたので左程時間が掛からないでしょう。」


お父様の机に積んである膨大の書類をよく二人で片づけられるわね…?


こういう分野に二人は強い。


「リリーは凄いわね?ナルシェもお父様の仕事を手伝っているけど、あの子はナディルがやっていた事さえ覚える気が無くてお父様がカンカンに怒っていたの。」


ナージャは頬に手を当ててため息を吐いた。


様子を見ると、よほど手を焼いているよう。


そうか、ナディルの双子の弟は兄と違って奔放な性格のようだ。


ナディルといえば、あの事件からずっとナージャはナディルに手紙を送っている。

一応返事が来たらしく、元気にやっているらしい。


「そういわれると、私も父の仕事に関与していないので胸が痛みますね?」


マリアンがバツわるそうに呟く。


「リアンは騎士でしょう?」


もう騎士団に属しているのだ。

しかも父親も騎士。騎士副団長だ。


それは別の話だとマリアンは苦笑する。


「アンバー家は私しか子供はいませんので、私が爵位を引き継ぐ予定なのです。だから伯爵家の管理について私は全く何もしていません。それか婿養子を貰う予定なのでその相手に任せるとお思います。相手は父が決めると思いますけどね。」


深く話を聞くと、マリアンの相手は難航しているそうだ。

アンバー副団長のお眼鏡に適った相手じゃないといけないらしい。


それもマリアンと同等の戦士…

「…マリオットじゃダメなの?」


マリアンが残念そうに首を振る。


え?自分より弱いからダメ?そ、そう…。


『死ぬ気で頑張りなさい!』


心の中でマリオットにエールを送る。


「皆様も色々と事情があって大変そうです。…ねぇお姉様?最近はよくルーベルト殿下とお手紙のやり取りをされているみたいですけど、将来はルーベルト殿下に婿入りとしてブロッサム家に来てくれるのでしょうか?」


「んんっ!?」


お茶を飲もうとしたところルーベルト様の話題…吹き出しそうになった。


よ、良かった…飲む前で…。


「…知らないわよ?そういう話はルーベルト様と一切話していないわ。」


今、わたくしたちはブロッサム家付近で不穏なものがないか探って殿下に報告している。

ルーベルト様もヒロインの動向を手紙で教えてくれるだけだ。


まるで仕事仲間の関係…わたくし達は協力者だからね?


「もう、婚約同士なのにお姉様ったら。私はお兄様でもいいのですよ?お父様もお兄様を望んでいますもの。今からでも婚約解消に口添えしますよ?」


私が一肌脱ぎましょう!と意気込むリリーにストップをかける。


婚約パーティー以降からリリーの暴走は更に拍車がかかり余計にカムを推す様になった。


「結構よ。それにいくらアルベルト王太子殿下いるからって、まだルーベルト様が王太子にならないとは限らないわよ?その時が来たらわたくしはルーベルト様についていくもの。その話はもうお終いにしましょう?」


王家から望まれた婚約を軽視してはいけない。


「今はそうですね?」


リリーは渋々頷いた…が。


「…でも、万が一という事もありますから。」


満面な笑みで呟くリリー。


…諦めた様な顔ではない。


恐らく機会が来るまで水面下で動くつもりだろう。

王家に喧嘩を売る真似はしないで欲しい。確実にブロッサム家が潰れるわ?


『でも…気になる話はあったのよね?』


ルーベルト様と面談した日、彼から気になる話があった。


< もしすべて終わったら君を自由にしてもいい。だからそれまではよろしくね? >


あれは乙女ゲームの事を言っていたと思っていたけど…まさかね?


「カム様と言えば王立学園に臨時で講師されていると聞きました。財務大臣補佐だけでなく講師もされるとは凄いです。…でもどうして教師になったのでしょうか?」


「カムさんが教師しているなんて初耳だわ?ロザリアどうして?」


不思議そうに二人がわたくしを見る。


やはり疑問になるわよね?


破滅フラグを防ぐために潜入しているとは言えないし、どうしよう…?


「私もお父様から聞きましたが、お姉様の護衛の為に教師なったそうですね?それは本当ですか?」


『護衛…』


リリーの助け舟にわたくしは笑顔で頷く。


「そうなのよ?王子妃になるわたくしを守る為に、公爵家からの護衛ということでカムにお願いしたのよ。ほら、学園に従者は連れて行けないでしょう?」


苦しい言い訳に二人は頷いた。


「成る程…。」


「カムさん色々とやっていて凄いわ…。」


良かった。納得してくれたわ?


「お兄様に会えなくなるから寂しくてお願いしたのではないのですか?…出来ればそうであって欲しいのですけど…。」


リリー…だからカムを異常に推すのはやめて?


でも、マリアンの言う通りカムは従者以外の事を沢山やっている。

休む暇があるのかしら?


「どうかしましたか?」


「いえ、今思うと確かにカムは色々やっているから、よく疲れないかなと思って。…せめて何か疲れが取れるような事が出来たらいいのに…。」


カムはお父様の補佐とわたくしの従者を兼任して、さらに追加で教師になり学園に講師をしている。

わたくしの破滅を無くすために色々と動いているからキャパオーバーだ。


倒れないかしら…?


つい心配になる。


「わたくしに何か出来ないかしら?」


彼に何か労ってあげたいのに、その方法が分からない。


「ロザリア、もし良ければ今度一緒にお菓子作りしない?それでカムさんにプレゼントしてみたらどう?私、結構得意なのよ?」


小さいころからナージャは侍女と一緒にお菓子を作ってはシリウスや弟たちに振舞っていたらしい。侯爵令嬢なのに家庭的である。


ナージャの提案は温かくて良さそうだが…


でもわたくしは厨房すら入ったことないのに作れるかしら?


「いいけど…わたくしは全くの初心者よ?」


もしお腹を壊したら元の子もない。


「なら、お兄様の休憩時にお姉様が膝枕してあげてみたらどうでしょう?結構喜ぶかもしれませんよ?グレン様もよく乗って来て寛いでいます。」


疲れが取れるそうですよ。と笑うリリーにまた肩を落とす。


膝枕って、それを聞いたカムが逃げ出す…ん?


「…貴女…それグレンにやっているの?」


「はい。一緒に本を読むときに…どうかされましたか?」


「…何でもないわ?…へぇー…。」


あのヤンデレ…いつもリリーにベタベタして…。

今度会ったらガツンと言ってやる!


「私もシリウス様にやってみようかしら?」


そう考えるナージャの隣でマリアンが苦笑している。


「でも婚約者でもないのですから流石に無理があるでしょう?」


それもそうだ。恋人でもないのに膝枕は不味いだろう。


「カム様の性格を考えると。余計なことしなくて笑顔で隣に居たら宜しいのではないでしょうか?ロザリア様と一緒にいるカム様は楽しそうです。それでいて労いの言葉があげればきっと喜びますよ?」


日頃の感謝の気持ちを伝えたらいいのではないですか?か…


確かに…いつもカムに色々して貰っているのに、わたくしは感謝していない。


「…そうね。」


マリアンの提案が一番良さそうだ。


でもなんだかわたくしの悩み相談会になっているわね?


そう思っている中で、アリアがあるものを持ってきた。


「お待たせしました。本日のメインのお茶請けでございます。」


「ああ、やっと来たわ?待っていたのよ。」


アリアがテーブルにあるものを置くと皆の反応が様々になる。


「まぁ、美味しそう!」


ナージャは素直に美味しそうと反応するが一方マリアンは…。


「こ、これは!?…な…なぜこの時期にこれが?」


「ふふふ、なぜこの時期にこれが手に入るかって?ブロッサム公爵家を甘く見ないで頂戴。マリアンの快気祝いよ?是非食べていってね?」


マリアンを喜ばせるためにこの日までに取り寄せて貰ったのだ。


「栗を使ったお菓子ですか?確かにこの時期はもう採れませんね。美味しそうです。」


リリーは栗のクリームがたっぷりと入ったパイを手に取る。


そう栗を使ったお菓子たちがテーブルに並べられた。


目の前でマリアンが珍しく狼狽している。


「ど、どうして私の好物を知っているのですか?」


「どうしてって?それはマリオットに聞いたからね。」


あの男…と恨めしそうに呟きながらも目の前の誘惑にマリアンは勝てなかったみたいだ。


すごく嬉しそう…。


見舞の時にマリオットを捕まえて正解だったわ。


奴はマリアンの好物を知っていた。

マリアンは栗を使った料理や菓子が好きだと言いながら不貞腐れた顔かつ若干照れているマリオットを思い出す。


こんな春に栗は手に入らないからブロッサム家の力で調べ取り寄せたのだ。


マリアンが目を輝かせて栗菓子を見ている。


持ち帰り分も手配もしているから抜かりはないわよ?


「リアン、食べて?」


促すとマリアンは嬉しそうに栗のタルトをとる。


ナージャもお菓子を取った。




春の温かい良い風が吹く。


わたくし達は来月から学園に入学するから、今みたいにゆったりはできないだろう。


「もうすぐ学園ね…?」


「そうね。」


私たちはもうすぐヒロインと会う。


彼女と出会ったらどうなるのだろう?


立ち向かうとは決めても先がまだ見えない。

だからこそ不安に感じる。


「…みんなに…お願いがあるのだけど、いいかしら?」


3人は一斉にわたくしに視線を向けた。


「…もしね?わたくしが間違った行動をしていたり、人を傷つけるようなことをしようとしたら、立場関係なくみんなでわたくしを止めてほしいの。」


もしわたくしが乙女ゲームみたいに道を外す様な事があれば、きっと3人を傷つける。


ヒロインが攻略対象者の誰を選んだとしても、きっとわたくしの存在は悪になる。


大好きなみんなを傷つけたくない。


「ロザリア、大丈夫よ?…貴女はそんなことしない。」


ナージャは優しく微笑む。


「勿論そんなことしない、…けど…」


もしこの世界の神様がわたくしを悪役として仕向けているのなら絶対とは言えない。


「もしそうなったら勿論、私は貴女を叱ってあげます。そして傷つけた人に一緒に謝りましょう?」


貴女を一人にしませんよ?とマリアンも頷く。


叱るだけじゃなく一緒に謝ってくれるの?


「お姉様…。私も出来る限りを尽くして止めます。だから不安にならないでくださいませ?」


そう言ってわたくしの手を握るリリー。


前よりも強くなった妹。


三人はわたくしに寄り添ってくれる。

それが何よりも嬉しい。


「有難う」


わたくしはこんなに大切な人達が出来た。


だからきっとこの先の事は大丈夫。


「そうね。みんなと一緒ならきっと学園も楽しいわ?」


皆の優しい笑顔にわたくしも笑顔になる。

3人も嬉しそうに笑った。



きっと大丈夫。わたくしは絶対に負けない。


悪役令嬢達のお茶会はその後も穏やかに過ごした。





・・・・・



後日おまけ


「ただ今、戻りましたー、んん?お嬢様そこで何しているのですか?」


「カムお帰りなさい!」(にこにこ)


「出迎えてくれるのは大変恐縮ですが…何かあったのですか?」


「違うわよ。ねえカム“いつもありがとう!”」


「…はい?‥俺、何かしましたっけ?」


「違うわよ、いえ、しているわね?…とにかく有難う!」


「…お嬢様…もしや熱があるのでは?」


「なんでそうなるの!?うーんとね、じゃあカム疲れていない?」


「…はい?」


「ひ、膝枕してあげるわよ?」


「……。今、何て言いました?」


「もう、恥ずかしいじゃない!何度も言わせないでよ!」


「ハーンさん。…お嬢様、今日朝から変な物食べましたか?」


「食べてないって…!? じゃあお菓子を作るけど食べる?」


「…結構です。取り敢えずお嬢様…かなり重症なのでお布団に入ってください。」


「なんで!?」


とあるロザリアとカムの一日。


ブロッサム邸の使用人たちは奇妙な目でわたくし達をみていたのであった。


お読み頂き有難うございます。


おまけはセリフのみだけで分かりずらいですが、お茶会で話が出たカムへ感謝の気持ちをロザリアにやって貰いました。

結果はドン引き…ロザリアの敗北です。


次回から第2章です。


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