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従者は攻略対象者と悪役令嬢に再会する

一方。


リリー様を連れて会場に入る。


リリー様は周囲をキョロキョロしていた。


「初めて夜会というものに来ましたが、限定した貴族しか参加できないとはいえ、人が多いですね?」


「そうですね。王家から開かれるものですから、皆参加する人が多いのですよ。」


「お姉様は大丈夫かしら?」


リリーお嬢様はロザリアお嬢様の事が心配なのかそわそわしている。

でも逆に心配なのはリリー様だ。


…なぜこの場で眼鏡?


「ロザリア様は大丈夫ですよ。リリーお嬢様も心配な気持ちはわかりますが、公爵令嬢としてしっかりしましょう?皆様が見ています。」


「そうですね、ごめんなさい…。」


注意をすると、しょぼんとリリー様の兎耳が下がる。

この子は人間のはずに仔兎に見えて仕方ない。


「いいえ。分かってくだされば結構ですよ?」


苦笑していると、リリー様はほっぺたを膨らませる。


「もう、お兄様ったら。いい加減私の事をリリーと呼んでください。お兄様が私のパートナーですよ?」


「そうですが…でも、リリーお嬢様のお相手は会場に入ってから最初のダンスだけですよね?その後はグレン様と交代になります。」


そう。リリー様のお相手は最初のダンスのみ。

その後リリー様はグレン様と過ごす予定だ。


「そうですけど、この場だけではなく普段も私を呼び捨てにしてくださって良いですよ?養子になっても、お姉様と結婚することになっても、私のお兄様になるのは変わりませんから。」


小声で話すリリー様に慌てる。


「リリー様、そのお話はここでは止めてください!」


シッと口に指を立てて注意すると、リリー様は満面な笑みで返す。


この子は反省してなそうだ。


ロザリア様と結婚なんて…ルーベルト様とお嬢様の婚約パーティーなのに不味いだろう?

確実に周囲の誤解を招く。


ただでさえ公爵家の者は目立つのに…ほら周りの貴族がこちらをみている。


入場からずっと注目されて視線が痛いのに、更に肩身が狭くなってしまう。


そう思った矢先、背筋が凍る様な殺気を感じた。

振り返ると貴族達が集まっている中で一人の見覚えがある黒髪の青年がこちらに向かってくる。


その青年はリリー様の婚約者、グレン・マーカス様だ。

彼は俺を睨んでいる。


「リリー。」


「グレン様!」


リリー様は嬉しそうにグレン様に微笑む。


こんな殺気を帯びた相手にリリー様は全然怯まない。

仔兎な子なのに…すごい度胸だ。


「遅く登場すると聞きていましたのに、大丈夫なのですか?」


「うん。最初は場が落ち着くまで裏部屋で待つつもりだったけど…そうも、いかなくなったから出てきた。」


んん!?

グレン様が俺をもの凄く睨んでいる。



「グ…グレン様お久しぶりです。」


「…リリーの願いで貴方にエスコートを譲ったが、必要以上にリリーに近づかないでくれないか?」


グレン様の殺気が強くなる。

この凄い殺気の理由はリリー様に近づきすぎって、俺は下心などありませんよ!

でも、言い訳しても聞く耳持たないだろう。


「それは申し訳ありません。」


素直に謝る方が得策だ。



「リリー行こう。」


謝る俺を無視してグレン様はリリー様を連れ出そうとする。


「もうすぐ始まりますよ?グレン様の元にいるのはお兄様とファーストダンスを踊ってからという約束です。」


「必要ない。君は俺だけで良いだろう?さあ、行こう。」


リリー様も困ったように言うが、それでもグレン様は連れて行こうとする。


「眼鏡がありますから大丈夫ですよ?」


「それでもだーめ。」


リリー様が眼鏡を持って主張しても、グレン様は聞く耳を持たない。


あの眼鏡の意味、少しわかったかも…。


可憐なリリー様を隠したいのですね?

今後、貴族内で噂になると分かって…


この人は相変わらずリリー様に執着している。


でも、どうしてここまで執着するのか分からない。

リリー様はグレン様を執着するような出来事はもう無いはずなのに…。


それでも、彼の今後の行動でリリー様が悪役令嬢になりかねない。


二人の様子を静かにみていたが、視線を感じて現実にかえった。

周囲の貴族達が俺達をずっと見ている。



今まで表に出なかったリリー様を品定めするように見る者達。


マーカス侯爵にそっくりとグレン様をみている者達。


俺達が三人居る事でリリー様を巡って三角関係とひそひそと話している者達。


さまざまな視線を向けられて居心地が悪い。


これは更に不味い…これは場所を替えた方がいいと焦った直後、後ろから声が掛かった。


「こんなところで何やっているのですか?」


後ろを振り返るとそこにはシリウス様とナージャ様がいた。


「シリウス様、ナージャ様お久しぶりです。」


シリウス様は「お久しぶりです」と俺に軽く挨拶してグレン様に視線を移した。


「グレン、こんな所でリリー嬢を巡って喧嘩勃発なんて止めてくださいね?親友の縁を切りますよ?」


茶化す様に笑うシリウス様にグレン様は無言名のまま睨む。


「お久しぶりですカムさん。そしてロザリア様の妹様と婚約者の方、初めましてナージャ・カレントスと申します。ロザリア様にはいつも仲良くさせて頂いておりますわ。」


ナージャ様が挨拶をするとリリー様も同じようにカーテシーをとり挨拶をした。


「初めましてナージャ様、リリーと申します。姉からとても素敵なご友人だと聞いておりますので、私もいつかお会いしたいと思っていました。こうしてナージャ様とお会いできて光栄です。」


「グレン・マーカスと申します。お会いでき光栄です。」


リリー様に続きグレン様も挨拶をする。


その様子を見守っていたシリウス様が軽く手を叩き周囲の視線を散らせた。


「さあ、もうすぐ開始されますよ?皆で主役達を出迎えようではありませんか?」


その言葉の後にすぐファンファーレが響き渡る。


その音に貴族達は一斉に頭を下げると、大扉から国王陛下と王妃様、アルベルト王太子殿下が現れた。

そしてその後に今夜の主役であるルーベルト殿下とロザリアお嬢様、その後ろに護衛騎士達がついて大行列で王座に向かい大広間を歩く。



とうとうパーティーが始まる。


王座の間で宰相と騎士団長が王たちの到着を見守る中、王座にたどり着いた国王が振り返り貴族達を見渡した。


「今宵は良くぞ我が息子ルーベルトとブロッサム公爵家の御息女ロザリア嬢の婚約パーティーに集まってくれた。」


王の言葉に俺達は敬意を示す為、更に頭を下げる。

すると王は「頭をあげよ」と合図する。


「今宵の式は間もなく成人を迎える息子達を皆に紹介するいい機会だと思う。今後この国を支える者として励むために皆で二人を祝福してほしい。」


国王様の挨拶を終え下がったところで、ルーベルト殿下とロザリアお嬢様が前に出る。


ルーベルト殿下は落ち着いているが、ロザリアお嬢様は何処か緊張して表情が硬い。


先にルーベルト殿下が一礼して挨拶を述べる。


「この度、私達の為にお集まり頂いた事に感謝します。こうしてこの日を迎えられたのは皆様の日々の支えがあってこそ。私は今後もこの国の為、民の為により一層に励んでまいりたいと存じます。どうぞ皆様も私達と共にこの国を守っていきましょう?」


ルーベルト殿下の後にお嬢様がカーテシーをして優雅に微笑みながら挨拶を述べる。


「グラジオ・ブロッサム公爵の娘、ロザリア・ブロッサムです。この度わたくし達のお披露目に来て頂き誠にありがとうございます。わたくしもルーベルト王子殿下を支え皆様と共にこの国に尽くしてまいりますので、何卒ご支援ご鞭撻のほどよろしくお願いしますわ。」


二人の挨拶に貴族達は拍手喝采した。


作法も挨拶も素晴らしい、よく頑張りました。

そう思い手を叩く。


この式の進行を務めるハワード宰相が次の指示をする。

次は殿下とお嬢様のダンス。


楽団員達が楽器で奏でる。

曲に合わせてルーベルト殿下とロザリアお嬢様は会場の中央で踊り出した。


周囲はその姿に見惚れる。

勿論俺も…。


ルーベルト様の白色を基調した正装と、お嬢様の紅色のドレスが踊る度に紅い花咲き開くように美しく輝いている様に見えて美しい光景だ。


「綺麗ですね?」


「はい。」


ナージャ様がうっとりと二人に見惚れながら呟くとリリー様も頷く。


そしてシリウス様とグレン様も優しい表情で二人を見守っていた。


そしてお嬢様たちが踊る一曲は終わった。


殿下達がその場で礼を取ると盛大に拍手喝采して会場が沸き上がる。


お嬢様たちが王座の間に戻った後、すぐに楽団員たちが次の曲を弾き今度は貴族たちが踊りだした。


この時間からは夜会と同じで自由に貴族達の交流会である。


「さぁナージャ踊ろうか?」


「はいっ!」


シリウス様の誘いにナージャ様は嬉しそうに応え手を取りダンスフロア化とした会場の中央へと向かった。


その一方でグレン様とリリー様は…。


「リリー、あっちで俺と踊ろう?」

「で、でも…。」


グレン様の誘いにリリー様が俺を見ながら困っていた。


リリー様は律儀に約束を守ろうとしている。

でもこれ以上はグレン様の我儘を聞いておかないと大事になりそうな気がする。


「リリー様、俺は大丈夫ですので二人で踊ってください。」


リリー様を押し出す様に手を前に出す。

別にファーストダンスがエスコートした人という決まりを素直に守らなくていい。


若い子達は案外自由で好きに踊る者も多いのだから。


リリー様は小さく頷きグレン様の手を取り、二人は踊る人達の中に入っていった。



一人会場の壁側に移動する。


ふぅ…正直こういう場所は得意ではない。


でもお嬢様の婚約パーティーだ。


お嬢様の晴れ姿を観たい。


それとルーベルト殿下の事が気になっていた。


ゲームの殿下はお嬢様に興味はないが入学式の前からブロッサム家が悪事を働いていると聞き婚約者のままお嬢様を泳がしている。


そんな回りくどい事をしている理由は、中々尻尾を出さないブロッサム家を調べるため、王子は極秘で彼女の動向を監視し証拠を掴むために敢えて婚約者にしているのだ。


でも今はレゼット夫人が捕まりブロッサム家は悪事に手を染めずに済んでいる。


だからルーベルト殿下は何もしていない家を調べる理由がない。

それなのになぜ婚約を続けているのか気になっていた。


今、お嬢様とルーベルト様が賓客に挨拶をしている。


二人の様子はとても仲睦まじくみえる。

ルーベルト様を危惧していたが、案外大丈夫かもしれない。


「ロザリア様の従者のお方が、そのようなところで何しているのかしら?」


突然声が掛かって振り向くとそこにはレティシア・ヴァンデル公爵令嬢がいた。


彼女に目を合わせると彼女は微笑む。


「これはヴァンデル令嬢。ご機嫌麗しゅう?」


「ええ。貴殿も何よりで。でもクラベル伯爵家のご当主は本日欠席と伺っておりますが、カルフェン・クラベル様が代理で参加されたのですか?」


ある言葉に一度沈黙した。


…この人は俺の()()を知っている。


「いいえ。本日はリリー・ブロッサム令嬢のお供で参りました。あと修正させて頂きますが、私はカム・クラベルと申します。」


何とか取り直して笑顔で返すとレティシア様は笑みを崩さず首を傾げる。


「あら?それは愛称でしょう?確か貴族名簿の正式名はカルフェン様だと思いましたわ?」


「その名前は既に()()()いますので、今はカムと呼ばれています。ヴァンデル嬢も是非その名で呼んでいただけると助かります。」


その名前を聞きたくない。


レティシア様は何でもない様にニッコリと花が咲くように笑う。


「ではわたくしの事もレティシアと呼んでくださいな?…ふふふっ、ねぇカム様、わたくしと一曲踊って頂けるかしら?」


深堀せずあっさりと切り返すレティシア様。

安堵するどころか逆に困惑してしまう。


まさか、レティシア様からのダンスの誘い…。


相手はお嬢様と同じ公爵令嬢だ。

誘われたら無下にできない。


「私で宜しいのでしょうか?」


確認するとレティシア様は笑顔で頷く。


「レディに恥をかかせないで下さい。」


やはり逃げられないか…。


「喜んで。」


レティシア様に手を差し出し彼女をエスコートする。


まさか踊る羽目になるとは思わなかった。

でも貴族である以上、彼女に恥をかかせるのは出来ない。


ホールの中央で彼女と踊る。


奏でる曲は甘く苦い表現をしたスローワルツ。

ダンスが中堅レベルの俺でも何とかなる。


「ふふ、カム様はお上手ですね?」


踊りに集中している俺にレティシア様が楽しそうに褒める。


「有難うございます。」


「普段はロザリア様と踊っているの?」


レティシア様は雑談できるぐらい余裕がある。

なのに、作法が一つ一つ丁寧で綺麗だ。


「彼女が幼い頃はお相手をさせて頂きましたが、今はお相手をしておりません。」


「まぁ、もったいないわね?」


レティシア様は綺麗にターンを決める。

彼女はダンスがかなり上手い。


流石は完璧令嬢と言われる程だ。


誰もが皆彼女のダンスに見惚れている。

でもレティシア様はそんな視線に無視。

周りに興味がなさそうだ。


「ロザリア様もルーベルト殿下と楽しそう、婚約者として幸せそうね?」


レティシア様は踊りながらロザリアお嬢様に視線を向ける。

その視線をつられるように見るとお嬢様と目が合った。


…どうしたのだろう?


お嬢様が動揺している様に見える。


「…そうですね。」


肯定しても心の中では心配になる。

そんな心情の中でも、レティシア様は話を続けた。


「二人を祝福している貴族は多いですわ。…でも一人だけ歓迎してない御方もいるみたい…。」


「歓迎していない?」


突然の事で頭に入らない。

レティシア様はそんな俺に分かる様に教えてくれた。


「カム様の丁度後ろかしら?一人のご令嬢が殿下達をずっと睨んでいましてよ?ほら、ピンク色の可愛らしいフリルのドレスを着た御方よ。」


ダンスに違和感ない様に踊りながら後ろを窺うと、確かに何処かの令嬢が憎らし気に殿下達を見つめている。


でも彼女がどこの誰かが分からない。

少なくてもお嬢様の知り合いではなさそうだ。


「レティシア様はあの方をご存知ですか?」


「いいえ、でも少なくても招待者の方ではなさそうですわね?だって礼儀がなってないですもの。」


ふふっ、とおかしそうにレティシア様は笑った。


招待者でない者…この夜会は来賓を除けば限定の貴族達しか呼ばれていない。

そのうえ貴族の格差でこのホールの立ち位置も決まっているのだ。


王家の近くに居られる相手は殆ど顔見知り。


じゃあ知らない彼女は何者か?


曲が終わりを迎えると睨む令嬢がその場から離れた。


何故だか胸騒ぎがする。


一曲が終わり俺はレティシア様に礼を取る。


「レティシア様、踊って頂き有難うございます。」


「ええ。わたくしもとても素敵な時間でしたわ。」


レティシア様に再度一礼しその場を離れる。


まずは彼女が去った先に行ってみよう。


彼女はまだここにいるのだろうか?


一人の令嬢を探しに向かった。



お読み頂き有難うございます。


次はロザリア視点に戻ります。


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