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12歳の悪役令嬢は迷子になる。

ロザリア視点です。

「財務官の談話室ってどこ!?」


一人のメイドに押し掛ける。


「えっ…あ、西の棟の3階にあります!」


メイドはわたくしを怖がるように怯える。


「じゃあ案内して!!」


メイドの手を引っ張り案内する様に促した。


「申し訳ありません。業務がありますので、ご案内ができません!」


メイドは困ったような泣きそうな顔で頭を下げて去っていった。

周りの官僚やメイド達もわたくしの相手をする事もなく、逃げるように速足で去っていく。


「お願い!早くお父様に会いたいの!」


わたくしは必死に訴えた。


「…王城(ここ)の者達をあまり困らせないでくれないかな?ロザリア嬢。」


突然、背後から注意をされる。

振り返るとそこにはルーベルト王子殿下が私の後ろに立っていた。


うつくし…そんな場合じゃない!


「殿下!申し訳ありませんが西棟はどこへ通ったら行けますか?」


軽く頭を下げてルーベルト様に聞く。

でも殿下はただわたくしをじっとみているだけで答えない。


返事を待つ時間が長く感じる。


何だろう?あこがれの王子様が相手なのに、何故かイライラするわ…。


「教えて頂けない様でしたらもういいです。失礼いたします!」


とにかく西の方へ向かえば行けるだろう。

そう思って動こうとしたら突然腕を掴まれた。


「…あっち。」


ルーベルト様はわたくしが行く方向の反対を指した。


「えっ?」


ルーベルト様が何を言っているか分からなかった。


でもルーベルト様は淡々としている。


「官僚たちが通る道から行った方が早い。一般廊だと遠回りになる。」


…それは王族であるルーベルト様なら顔パスで通れるけど…


「でもわたくしは行けませんわ。」


その廊は王族とその関係者のみしか渡れない。

いくら公爵令嬢とはいえ、貴族子女が通れない。


ルーベルト様はわたくしの腕を放し歩き出した。


「ついてきて」


『…え?連れてってくれるの?』


唖然となっているが、身体が勝手に殿下の後ろについて行く。


『でもこの状況…一体どうなっているの?』


何故、先ほどまで無関心だったルーベルト様が来てくれたのか疑問だった。


「で、殿下は…」

「どうして気になるの?」


疑問を尋ねようとしたら、被さる様に話しかけられた。


気になる?質問に対して意味がわからない。


「え…?どういう意味ですか?」


ルーベルト様は歩くスピードは少し緩めて、わたくしの方に顔だけ振り返る。


「…君の目的は『王子の婚約者になる』だろう?それなのに君はブロッサム公の元へ行く。どうして?」


どうして?って、言われてもただ嫌な予感がするなんて言えない。


何も信憑性ないのに…。


「どうしてって言われても…。でも、さきほどの父の様子がおかしかったのです。…それがすごく気になるから…。」


気まずくてつい顔を伏せてしまう。


『カムはお父様と婦人を気にしていた。だからきっと何かがある…。そう言ったとして、ルーベルト様に信じて貰えるのかしら?』


とてもルーベルト様に信じて貰えるような説明が思い浮かばない。


でも、ルーベルト様は「そう。」と短く言って歩き出した。


『…何も聞かないでくれた。…どうして?』


わたくしは不思議に思いながら慌ててついていった。


そんなわたくしを置いてルーベルト様は何かを呟く。


「…僕は全てを知っているわけじゃない…ただ()()()()()。でも君は‥‥。」


ルーベルト様の小さな声はわたくしに届かなかった。



・・・・・



階段を昇りいくつかの部屋を通り過ぎたら突然ルーベルト殿下が立ち止まった。


「どうかしたのですか?」


何かあったかと思い、ルーベルト様の顔を覗き込む。


「少しだけここで待っていて。」


ルーベルト様はそう言い部屋の前で立っている兵士に声をかけると、兵士は敬礼をしてから部屋の扉を開けた。


ルーベルト様はそのまま部屋に入り扉が閉まる。


「…。」


ここで待っていて、と言われてもこんな広い廊下で子供一人いるのはすごく浮いている。


ちらほらわたくしを見る視線が痛い。


『…目立つから壁際に行こうかしら?それともドアの入り口の前で待っていようかしら?』


どちらにしようと迷いフラフラしていたら再びと扉が開く。

中からルーベルト様と文官が出てきた。


「じゃあ急ぎお願いね。」


「承知いたしました。直ちに手配致します」


すぐさま文官は後にする。


「じゃあ行こうか…と言いたいが、君は一体、何をしているの?」


「え、皆様のお仕事の邪魔をしているのかな?と。」


横歩きでフラフラしているところを見られてしまった。


「うん。確実に邪魔しているね」


ルーベルト様は呆れている。居たたまれない…。


気を取り直して再びルーベルト様と一緒に父の元へ向かった。


歩いていくとまた王子様は部屋の前に止まった。


「着いたよ。」


わたくしは部屋の扉を見る。


やっとたどり着いた。


そして扉のドアノブに手をかけたが開かない。


「鍵がかかっているわ!?」


扉を睨み叩こうとしたら目の前に鍵が出てきた。


「鍵を貰ってきたから。…扉を壊さないで。」


私に鍵を見せつける。


…ルーベルト様…扉を壊すなんて、言い過ぎではありません?


でもルーベルト様はわたくしに気にせず鍵を入れて扉を開いた。


部屋の奥にはお父様とカムそして婦人がいた。



お読み頂きありがとうございます。


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