雪菜とのデート
中学の卒業式が終わると、高校の練習に参加することができる3月下旬までの3週間、暇を持て余すことになる。そんな中、俺は雪菜とデートすることになった。
「おはよ、健ちゃん」
「ああ。おはよう、雪菜。準備遅いな」
「だってせっかくの健ちゃんとのデートだもん。そりゃ準備に時間かけちゃうよー」
俺は雪菜を迎えると基幹バスに乗り、およそ1時間かけて名古屋駅周辺まで足を伸ばした。雪菜は春らしく、白のワンピースとピンクのカーディガンを羽織り、雪菜の綺麗な長い黒髪とよくマッチしている。
俺たちは、今話題の映画を見ることにした。この映画は少女漫画が原作で、雪菜も原作の漫画を持ってた気がする。映画の感想はただ良かった、感動した。これに尽きる。そして雪菜は感動のあまり泣き出していた。しかも、「健ちゃん。私、この映画に感動したよ、感動したよ…」と何度も言っている。
映画を見終わってからは、ファミレスに行き昼食を食べる。俺はステーキセットを、雪菜はパスタとピザを注文した。昼食後はカラオケ店に入った。結局3時間くらい歌ったのだが、最後に雪菜から「これ私と一緒に歌ってよ」と言われたので雪菜と一緒に歌うことになった。で、その歌うことになった歌が…
「とっとり~走るよナシ太郎~さきゅーを~走るよナシ太郎~だーい好きなのは~(はいせーの!)にじゅせーきなし~(オレもー!)やっぱり~走るよ~ナシ太郎~(タイガー、ファイヤー、サイバー、ファイバー、ダイバー、バイバー、ジャージャー)」
『とっとりナシ太郎』。鳥取県を舞台に、梨の形をした動物と人間の子供が絆を深めていくアニメである。放送開始から約20年経った今でも人気の歌で、アニソンランキングでは常に上位だ。…しかし、なぜ雪菜がこの歌を歌いたいと俺に言ったのは不明である。
そして最後は2人でプリクラを撮って帰宅した。流石にチューはしなかったが、お互い手を繋いだ写真、そして2人でハートの形を作った写真はまさにカップルそのものだ。我ながら見てて恥ずかしい物がある。
「これ言うのもアレなんだけど、我ながら見ていても恥ずかしいと思うの。どう考えてもカップルにしか見えないよね…」
雪菜もそう思っていたらしい。そして帰宅。季節は春、だいぶ陽が落ちるのも遅くなった。…しかし、クタクタだ。そもそも雪菜とデートらしいデートをするのも初めてだしな。いろいろ疲れた。野球の練習よりキツいかもしれない。
「今日は楽しかったよ!健ちゃん、おやすみ」
「ああ、俺も楽しかった。ゆっくり休めよ、雪菜」
俺と雪菜はお互い別れの挨拶をし、それぞれの家に帰宅する。まぁ、お互いの家が隣同士だから、その気になったらすぐ会えるんだけどな。しかも窓伝いで、お互いの部屋からその気になれば飛び越えれるし。
そして、最後に雪菜が俺へ最高の笑顔を見せてくれたのは言うまでもない。