18 戦闘開始
「まずは、オティーヌ王国の城下町に向かおう」
精霊の里の偽装魔術が作用するその限界地点。
静かで薄暗い森の中で、僕は次の目的地を決めた。
恐るべき万能魔術の使い手、リリカの襲来でそれどころではなかったが、あの賞金稼ぎギルトの女店主が話していたことを思い出す。彼女によると、彼らは長年リーバイン神皇国と争ってきたオティーヌ王国からやってきた。
リリカが向かったであろう『影』の本拠地であるオティーヌ城も考えたが、もしかしたら有益な情報を持って帰ってきてくれるかもしれない。まずは、『影』に支配されたオティーヌの国情を知ることも悪くないはずだ。
森から外へと歩き始めると、偽装魔術がいつの間にか消え去った。
そこはただの草原に戻っていた。
すこし草原から歩いたあたりで、僕は懐から巻物を取り出す。
数歩後ろを共に進んでいるシャルとロラマンドリへと振り返り、
「この草原を抜けたら、どこかで休憩して解析の結果を――」
「ユーリィ!!!!」
声をかけた瞬間、シャルの口から悲鳴が上がった。
「え?」
何かが、空を切り裂いた。ゴウッ! と風を切る音がする。
その刹那、振り返った僕の視界の先、二人の少女の背後で。
激しい爆発が生み出された。
「ぐあああああああ!!!!」
僕は、灼熱の爆風で後方に吹っ飛ばされる。
ゴロゴロゴロと、草原を転がり、ようやく止まったと思ったときには、草原一面が火の海と化していた。
なんなんだ、これは!?
一体、何が!!
「シャル! トカゲさん! どこに――!?」
急いで辺りを見回すと、二人の少女も爆風で吹き飛ばされたのだろう、遥か遠くで倒れている姿が確認できる。
幸い、まだ火の手はあの辺りにはかかっていなかった。
これは……!!
なんなんだ、これは!!
一体、何が……!!
……。
……いや。
待て。
これは。
この光景は。
一体、何が、だって?
「……この感じ……覚えがある……」
僕は独り言ちる。
何度か、僕は経験してきたじゃないか。
今の感覚は、初めてじゃない。
この、まったく意味がわからずにやってくる、圧倒的な破壊。
しかしだからこそ。
何もわからないからこそ、わかる。
「これは……ヤツらだ」
そうだとしたら……。
つまり僕らは、何らかの方法で、
「ずっと、見張られていた――?」
まさか、リリカさんが呼び寄せたのか?
いや、そんなはずはない。
彼女は魔術具を持っていない。あれはシャルが持っているから、そんなことはできないはずだ。それに、彼女のコテージでの決断。あのときの様子から考えても、ありえないと思える。
――今はそれどころじゃない!!
僕は立ち上がり、急いで火の海と化した草原を駆け抜ける。
遠くで倒れていたロラマンドリとシャルを渾身の力で抱え込み、
「ぐ、おおおおお!!!!」
そして、倒れていたその先、ゆるい傾斜となっていた下り坂の草原へと転がり落とす。
「きゃ……!」
「人族……!!」
「僕から離れてください!! できるだけ遠くに!! 逃げて!!」
叫んでいるうちに、再びの飛来の気配がする。
今度は、敵の狙いは外れなかったようだ。
爆発。
灼熱が直撃した。
僕の肉体が、おもちゃのように吹き飛んだ。
激痛。
そして意識の喪失。
消える意識の直前、吹き飛ぶさなかに、自分の四肢がバラバラになったのが見えた。




