6 覚醒前夜 その⑥
ああ、幸せだ……。
全身を包み込むこの感じ……とっても気持ちがいい……。
このままずっとこうして微睡んでいたい……。
……遠くの方から教会の鐘の音が聞こえる……あれ、これって……前も似たようなことがあったような……なんだっけ……すごく大事なことがあったような……。
「はっ!!」
……まただ!?
また寝坊してる!?
急いでベッドから飛び起きる。教会の鐘がカーンカーンと鳴り続けてるけど、それに耳を傾けている場合じゃない!!
いつものようにテーブルの上に準備しておいた麻製の服に着替え、そばに立てかけていた、リーバイン神皇国近衛騎士団入団試験用の片手剣と釣り竿をもって、慌てて食卓に出る。
「また寝坊? お弁当できてるわよ」
かあさんが事情を察しながら籐籠を差し出してくる。僕はそれを受け取って、
「ありがとう母さん! いってきますおばあちゃん! マリィ!」
ロッキングチェアでくつろぐ祖母と、お手製の髪飾りをつけてもらっている妹に声をかける。
「はい、いってらっしゃい。今日の夕飯は縞きのこのシチューよ」
「気をつけてねえ」
「お兄ちゃん、ばいばーい」
庭で伐採用の斧を研磨している父親の脇をすり抜けて家を出る。
「とうさんも! 行ってきます!」
まず目指すのは、日課のお祈りをするあの場所だ。