表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/87

5 覚醒前夜 その⑤

 中央通りに備え付けられた臨時の街灯が、村の大人たちによって片付けられ始めている。もうほとんどが油切れになってしまっているからだ。中央通りの出店も、ほぼすべてが店じまいに忙しい。


 僕とシャルは幕切れが近い降臨祭の名残を惜しむようにゆっくりと通りを歩く。


「そういえば聞いた? 最近また魔女が出たって……。リーバイン城の近衛騎士まで捜索に駆り出されているって」


「へえ、それは物騒だね」


「だから、ユーリィも気を付けてね」


「『災厄の執行者にして呪いの化身』――『呪いで人を支配し、すべてを食い尽くす』だっけ? 今の時代はむしろ魔女より隣の国との争いのほうが大変だって。気にしすぎだよ。『呪い』だってあやしいものだし」


「またそうやって軽々しく……ほんとに心配してるんだからね」


「ありがとう。気持ちはしっかりと受けとったよ」


 僕らの足取りは自然と帰路に向かい、ついにそれぞれの家への分かれ道にたどり着いた。


「今日は楽しかった! ユーリィ、ありがとう」


「こちらこそ。何度も言うけど、シャルの歌、すごくよかったよ! これでぐっすり眠れそうだ」


「神様をたたえる歌を子守唄にする気!? まったくもう……」


 互いに顔を見合わせて笑い合う。


「ねえ、お城の近衛騎士団試験もうすぐでしょ?」


 シャルは胸元のアーシア神像の首飾りをいじりながら、


「……私、神父様からのお給金ずっと使わないでとっておいててね、そのお金があるから私もお城までいけるの。だから……応援しにいってもいいかな」


「え……いいのかい? だって、ずっと貯めていたんじゃ……」


「貯めたお金は、いざというときに使うためにあるのです」


 幼馴染の少女は、人差し指をピッと立て神父様の真似事をするように言う。


「……シャル」


 心が温かく、満たされていく。


「じゃあ……じゃあ、お言葉に甘えるよ。うん。絶対に受かってみせるから」


「ふふ……期待してる」


「また明日、教会で」


「ええ、また明日ね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ