9 精霊の少女 その⑤ ★挿絵アリ★
「き、聞いてません!! そんなの、絶対ダメ!!!」
突然、怒り心頭な幼馴染少女の声があたりに響く。
「仕方ないだろう。この人族を回復させるためだ」
彼女をたしなめるロラマンドリ。
「だ、だって! そんなの!! ダメです! 絶対許されません!!」
「『因果共鳴』は、我ら精霊族の感応力を使い双方の精神を通じ合わせ、この人族を精霊と似た体質へと変化させる儀式だ。そうすれば、世界樹の樹液による治療が促進され、刻印の浸食を止められるかもしれんのだぞ?」
「めっちゃ丁寧に説明ありがとうございます!! でもでも!! だからって!! だからって――」
先ほどの部屋は少女二人きりとなっていた。そうして、そこでシャーロットと会話するロラマンドリは、
「なんでトカゲさんとユーリィが裸で抱き合わないといけないんですかっ!!」
胴体に大型植物の葉っぱを巻いた以外は、一糸まとわぬあられもない姿だった。
そうなのだ。
なぜか赤毛の少女は何も着用していない。
いやもちろん、本来(?)のトカゲ姿のときだって裸ではあるのだが、美しく凛々しい少女の姿で肢体を露わにされてしまうと、同じく美少女であるシャーロットでさえも、背徳的な誘惑に駆られてしまうほどだった。
ユーリィが眠る植物製のベッドの前に立つ裸のロラマンドリを必死で止めようとする幼馴染の少女。
「いやだから、精霊族に伝わる『因果共鳴』は、双方の精神を――」
「それさっき聞いたよ!!!! じゃなくて!!! えーとえーと、ユーリィを目覚めさせる方法! 回復させる方法は! 他にないんですか!? お祈りするとか!! 歌を歌うとか!! 舞いを舞うとか!!」
「あったらやってる。それに……」
「それに!?」
「わ、私だってはずかしい……。すまんが、出て行ってくれないか。集中できん」
植物の葉っぱの隙間から見え隠れする美しい肢体を必死に隠そうとする赤毛の少女。羞恥心も相まって、その動きはむしろ逆に艶かしい。
「なっ! なななななな!!!!」
てめえ! こんな時だけ、お兄ちゃんに向ける愛らしい妹です♡的な女の子口調を私の前でも出しやがって!!!! という非難をのど元でどうにか押し殺すシャーロット。
自分で自分を必死に宥め、どうにかこうにか平静を装うまでに精神を安定させた三つ編みおさげ少女は、キッとロラマンドリ(全裸)に向き直り、
「ぜ、絶対変なことしないでくださいね! もしやったら、あなたは変態トカゲさんになるんだから!!」
といって、部屋を出ていく。
「へ、変態トカゲ……」
バタン! と勢いよく、扉が閉められた。




