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7 精霊の少女 その③

 

 遥か昔、アーシア神が天地を創造し、天界に帰り、数百輪廻が経った頃。


 地上では、人族と魔族、そして精霊の三種族が暮らしていた。


 人族は工作とその技術に長け、農機具を編み出し土地を耕した。


 魔族は世界を満たす魔素(マナ)を発見し、魔術を練り上げた。


 精霊は自然を(たた)え寄り添い、そこから生まれる稀少物を得た。


 三種族はそれぞれの生活を守り、貿易や親交によって文化を掛け合わせた。


 災害や病はあれども、戦や侵略はなく、世界は平和だった。

 しばらくの時がたち、人族に悪知恵が働き始めた。生活のために土地を開墾するのではなく、贅沢と謳歌のために土地を支配し始めた。


 一部の人族は、階級制度を布き軍隊を生み出した。


 そして、人族同士で争い始めた。


 その余波は、魔族と精霊の住む地域にも及んだ。


 自らの身を守るため、魔族は争いを避け、闇に身を堕とした。


 魔族は自らの信仰を人族ばかり気に掛けるアーシア神ではなく、地底深くに潜む深淵の神へ見出した。


 そして人族を嫌い、敵視した。


 精霊はまだ人族がいない未開の地へ逃げ延びた。


 逃げるさなか、多くの同胞が人族によって殺されたが、しかし精霊は、人族を恨みはしなかった。


 元のような、三種族で力を合わせて平和に暮らす世界を夢見た。


 そこで精霊は、自然を讃えて得た稀少物を使うことにした。


 この世界が創造されたときに、大地から最初に芽が出た苗木である『世界樹』。


 そこから流れ落ちる朝露を、人族に飲ませた。


 すると襲い掛かる人族の、闘争の心がきれいに洗い流された。


 以来、『世界樹』に精霊が寄り添うこの土地には、人族は二度と現れることはなかった。


 精霊は、『世界樹』の守り人となった。


 精霊である我らは願う。


 また三種族が幸せに暮らすことができる日が来ることを。


 世界樹はその日までずっと、精霊を見守り、また精霊も世界樹を見守っている。


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