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10 覚醒前夜 その10
…
……
………
…………真っ暗だ。
僕は、死んだ……のか。
人族が死ぬと、善行を働いたものは天界に召され、悪行を働いたものは闇を彷徨い続けるって子供の頃に教会で聞かされた。
これはつまり……。
たしかに良いことをしたかって言われると自信はなかったし、仕方がないかもしれない。でもすごく悪いことをした記憶もなかったんだけど……。
せっかく頂いたご加護に応えられずに申し訳ありません。アーシア神さま。
なんて言ったら、こんな時だけ敬虔なふりして、ってシャルにまた怒られちゃうな。
……ずっと、この暗闇のままなのかな。
これが死なんだろうか。
永遠に続いていく、虚無的な暗がり。
何もない。
真っ黒。
からっぽの闇。
どこかで。
ゆらゆらと。
赤い光が揺れているのみだ。
……。
赤い、
光だって?
あれはなんだ?
闇の中にぼんやりと浮かぶのは、炎だ。
風もないのに揺蕩う輝き。
その輝きはだんだん大きくなっていく。
そうして僕の暗闇は消え去って――




