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第4話 レンVSシェリフィム

更新遅れてすみません。

前回のあらすじ


 森の奥からティリンス学園に転入してきたレンを待ち受けていたのはクラスメートからの歓迎だった。


 しかし、食堂でシェリフィムのことを名前で呼んだせいで、シェリフィムと実技の時間に手合わせすることになったのだった。





 レンVSシェリフィム





 レンは昼食が食べ終わると、すぐにシェリフィムのところに急いだ。


 別に次の時間までの余裕がないわけではないが、自分の方の準備もしたかった。


 武道館の場所を他の生徒に聞き、武道館を目指す。


 この学校の設備は様々な要望に答えられるためにかなり充実している。


 武道館も騎士や渡り鳥を目指す生徒が自らの技術向上のために常に開放されている。


 そのため、シェリフィムのように真面目な生徒は次の時間が実技だとすれば、準備運動のために武道館に訪れることも多い。


 レンが武道館に着いた時にはシェリフィムはレイピアを納めたところだった。


「こちらの準備運動は終わった。そっちの準備が終わったら、わらわを呼べ。」


 シェリフィムはそう言うと、壁にもたれかかり、レンの方をジッと見ている。レンの動作を一挙一動見逃さないとばかりに。


(観察されているな。)


 レンもシェリフィムの視線に気づいている。レンは武器を選んで、重さだけ確かめる。


「ルナライトさん、こっちの準備は終わった。そっちが良ければ、始めないか。」


 レンとしては手の内をさらすくらいなら、いっそのこと準備運動無しでぶつかればいい。ある程度なら、レンは準備運動せずに動くことができる。


 シェリフィムは怪訝そうにレンを見ている。準備運動せずに模擬試合をするなんてことはシェリフィムからすれば、考えられないことである。


 シェリフィムの方は幼い時から、周りから英才教育を受けてきた。だから、自分の実力を常に100%出せるように自分で調整できる。全力で戦えるように準備することが当然だった。


 しかし、レンの方は母親の気まぐれでトレーニングをいきなり始められたり、森で獲物を狩れるように、自分の実力を100%にいかなくとも、ある程度は常に発揮できる。逆に準備運動などをあまりしたことがなかった。不測の事態にどれだけ動けるように身体に叩き込まれている。


「本気か。準備運動もせず、試合をするなど。」


「本気だよ。少なくとも手加減する理由はないだろう。こっちとしても実力を見せておきたいし。」


「あの小太刀は何なのだ。見たところ、そなたは太刀一本しか持っておらぬ。一緒に持ち歩いていた二本は何なのだ。」


「別に。ただ形見みたいなモノだから持ち歩いているだけだから。使えるわけじゃない。さっきは一番手元に近かっただけ。」


 レンはシェリフィムの問いに答えると、刀をシェリフィムの方に向けて構えた。


 レンが木製の模造刀を構えると、シェリフィムの方も本気だと感じたのか、レイピアを抜き放つ。こちらも木製である。


 レンの刀とシェリフィムのレイピアには突き刺しても怪我しないように、表面上は衝撃吸収の素材でできている。


 二人の構えを見たところ、レンは攻撃に重視した構えを、シェリフィムは防御に重視した構えをしている。


 レンの構え方は一応太刀の持ち方になっているが、剣術を習っている者の構えではない。少なくとも正式な修行をしていない。


 一方で、シェリフィムは完璧な持ち方であり、相当な訓練をしたことがわかる。レイピアの構え方が様になっている。




 二人はある程度睨み合いをしていたが、先に動いたのはやはりレンの方からだった。


 レンは一気に距離を詰めて、一気に太刀を振るう。その振りは構えはおかしいのに恐ろしく速い。


 シェリフィムは予想外のスピードに一瞬だけ、構えが崩れかけたが、すぐに持ち直すと、きちんと受け止め、逆にカウンターで攻め返す。


 正確に打ち込んでくるレイピアをレンは全部払い退け、距離を大きく離す。


 周りから歓声が上がっているが、二人の耳には届いていない。


 二人は全身を警戒に充てていた。今のところは互角、一瞬でも気を抜いた方がやられる。


 次に攻めたのはシェリフィムの方からだった。軽くレイピアを引いたかと思うと、連続で突きを放つ。狙ったのはレンの頭、両肩に両脚だ。


 自分でもかなり速く放ったつもりだったが、レンは見事に対応してみせた。


 レンは太刀で軽く剃らしながら最小限の動きで避けると、前に詰めていた。レイピアはその特性上、突くのには向いているが、斬ったりする方向に弱い。


「くっ。」


 レンはそのまま太刀でシェリフィムの胴を斬る。


 シェリフィムはとっさにレイピアを引き戻して、間に入れて回避した。


 レンはそこで止まらず、防御しきれていないシェリフィムを一気に攻めたてる。


 シェリフィムは防御が難しいことを悟ると、すぐにレンから離れようとするが、レンはそんなことはさせなかった。常に腕の届く範囲から逃がさない。


(こやつの太刀は読みきれぬ。変則的すぎる。しかも、速いせいで練気法を使う間がない。)


 シェリフィムは焦っていた。軽く捻れると考えていたレンの予想外の強さに動揺を隠せなかった。


 レンの太刀は本人が思うように振っている。構えや型は存在していない。シェリフィムのように対人戦に慣れ、相手の太刀筋を予測する者にとってはやりにくい相手だ。


 レンの方も少し焦っていた。これだけ攻めているのに未だに有効な一撃は入っていない。


(くっ、防御が堅いな。こいつを破るには距離を空ける必要がある。)


 レンにしても、シェリフィムの防御を破るには練気法しかない。しかし、それはシェリフィムにもチャンスを与えることになる。


(まぁいい。やるだけやるか。)


 レンは現状打破のため、一気に距離を空けた。


 シェリフィムはそれを読んでいたかのように、体内から気が溢れ出す。


 レンもまた体内に気を練りこんで、一気に勝負に出た。


 ルナライト流

 ファング・ラッシュ


 シェザード流

 交叉刃


 シェリフィムは連続で気を前に打ち出した。それに対して、レンの方は一撃に全てを込めた。


 直ぐ様、シェリフィムは動く。シェリフィムとて、これで終わるとは考えていない。練気法で強化された肉体は一気にレンとの間の距離を詰める。


 レンの方もまた動きを見せていた。練気法で強化された肉体で上空に跳ぶ。


 その間に二人の技はぶつかり合い、互いに消失する。


 シェリフィムは上空に跳んだレンに狙いをつけて、レンは地上のシェリフィムに狙いをつける。


「はぁ。」


「せいやぁ。」


 二人の武器がぶつかり合う。上空から叩きつけた分レンの方に力比べでは分があったが、シェリフィムは一気に力を抜いた。


「くっ。」


 自分を半分支えていた力が消え、態勢を崩したレンにシェリフィムは足払いをかけ、横に回りこんでレイピアを突きつけようとする。


「そこまで。」


 二人の間には教師が割って入った。周りの生徒たち全員が二人の方を見ていた。


 シェリフィムのレイピアはレンの喉に突きつけられている。


 レンの太刀もまたシェリフィムの首のすぐ隣にあった。


 レンは倒れそうになった自分の身体を左手で支え、太刀のみをシェリフィムに向けていた。


「引き分けでいいな。」


 教師が二人に確認をとる。それは審判として、有無を言わさぬ迫力があった。


 二人は首を縦に振るしかない。もし、これが実戦だったならば、不穏な動きを見せた方が殺られる。


「よし、お前ら。そろそろお前たちも稽古を始めろ。もう試合は終わったぞ。」


 試合を見ていた生徒たちが一人、また一人と減っていき、先生が離れたころには周りには誰もいなかった。


 先ほどまで試合を見ていた生徒たちはそれぞれの練習に精を出す。


 一人で型の練習をしている生徒もいれば、二人で打ち合いをしているところもある。基本的に訓練は自由らしい。


 レンは壁にもたれかかって、休憩していた。久しぶりにまともな戦闘をおこなったため、非常に疲れた。すぐ近くにはシェリフィムも座りこんでいる。


 レンが息を整えた頃に、いきなりシェリフィムの方から話しかけてきた。


「そなたは強いんだな。この学校でわらわが勝てなかったのは2人目だ。」


「あと1人って、誰なんだ。シェリ・・・・・・じゃなかった。ルナライトさん。」


「シェリフィムで良い。わらわは実力のともわない者ぎわらわの名を呼ぶのが嫌いなだけだ。わらわが認めた者なら構わん。

 それと、後一人は今日は来ていないが、イリスという奴だ。」


 イリスと聞いて、レンが思い浮かべるのは昨日の礼儀正しい少女だ。確か、日本刀を持っていたはずだ。


「えっと、イリスってあの小さな奴か。飛び級しているって聞いたが。」


「昨日来たばかりと聞いておるが、もうイリスに会ったのか。もしや、そなた。」


 シェリフィムは驚いた表情になったかと思うと、すぐに怪しい奴を見る目になっている。


「違う。昨日、寮の前で会っただけだ。それと、なんで今日は来ていないんだ。」


「イリスは倭の国からの留学生じゃ。それゆえに色々とやらなけばならない手続きもある。今日来ていないのはそのためと聞いておる。」


 レンは適当に聞き流しながら、周りを見渡していた。見た感じ、シェリフィムを超える実力者はいない。それどころか、大半の人間はかすれることすらできないのではないか。


 周りの生徒は人形を相手に何やらやっているが、動きに拙いのが目立つ。


「武術を本気でやる人間は近くにある専門の学校に行っている。ここは魔法を重視しておるからな。わらわみたいに魔法剣士か、魔法使いを志す人間が中心だ。」


「そういうことか。」


「例外はある。武術の専門校には届かぬ者がこちらに来ることも多い。また、ここで努力して専門校の連中を倒した奴もおるぐらいだ。」


 それもあるだろう。学生同士の試合ぐらいなら、突出した実力者でもいない限り、より多く練習した者が勝つに決まっている。


「精霊魔法がありだったら、状況は違ったな。」


「勝負に『もし』や『だったら』はない。」


 シェリフィムは断言する。


「その通りだ。あんたとはいい仲間になれそうだよ。」


「なら、わらわのグループに入るか。今は3人だからな、後一人ぐらいなら入れられるぞ。」


「よろしくお願いしてもいいか。」


「うむ。レンよ、これからよろしく頼む。残りのメンバーは後で紹介するぞ。」


 そう言って微笑んだシェリフィムの笑顔は誰でも恋に落ちそうな魅力的だった。


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