第1話 退屈な日々
作者の第二作です。できる限り、同時進行したいと思いますので、よろしくお願いします。
(退屈だ。)
読んでいた本を閉じて、テーブルに置いて伸びをする。テーブルに置いてある冷めてしまった紅茶を飲み干した。
外で日向に当たりながら本を読んでいたが、飽きてしまった。
両親が死んでから一年になるが、こうも退屈になるなんて思わなかった。
レンにとって、両親とは悪魔のような存在だったが、居なくなると寂しいものである。
森の中での一人暮らし、いっそのこと街に出ようかと考えたこともあるのだが、まだ16歳であるレンが街で暮らすには問題があった。
(お金がほとんどないんだよな。)
そう、街で十分に暮らすためのお金がほとんどなかった。ずっと森で自給自足の生活を続けていたので、お金はほとんどいらなかったし、大半は大きくなるにつれての服代に消えていった。
(母さんも父さんも二人とも家事だけは下手だったからな。)
両親は丸太小屋などを作ったりしたのはいいが、この森の中での食事はレンが作れるようになるまで、単純な物しか作っていなかったらしい。
両親からの鬼や悪魔と呼べるような修業の後に、意識を半分失いながら料理を作った経験もある。
我ながらよく生きてこられたと思うぐらいだ。
(しかし、退屈だ。暇つぶしになりそうな物はないし、とりあえず今日の昼と夜の分だけでも採りに行くか。)
この森には動物が大量に住んでいる。森の外の人は悪魔の森と呼んでおり、近づくことはないが、その原因はレンのせいであった。
両親との修業でレンが絶叫しているのを聞いた森の周辺住民は悪魔が住んでいるのだと勘違いをしたらしい。
何度か近くにいる自警団が森に探索に来たこともあるらしい。
その噂もあながち間違いでもなかっただろう。実の息子にあそこまでの修業をさせる親はそうはいないと信じたい。
必要な分だけの果物を採ると、丸太小屋に帰る。肉類は昨日捕りすぎた物が残っているので、それを使うつもりだった。
手早く料理を済ませて、やや早めの昼食を食べてしまうと、ほとんどやることがなくなった。
(退屈だ。)
何度目か分からないため息をつく。果物の採取などは特に苦労することではないし、ここの動物たちは大人しい方だ。魔物に至ってはほとんど現れることがない。
騎士団などに入ろうかと考えたこともあるが、レンとしては学校には通っておきたかった。
そもそも騎士団などでは身分が分からない人間では入れないし、大抵の職業も学校は卒業しておかないと、就職させてもらえない。
テーブルの上に置いてある食器を片付けると、完全にすることがなくなった。
(のんびり釣りでもしよかな。)
年寄りじみたことを考えながら、のろのろと立ち上がると釣り道具を一式取り出すために小屋の中に入ろうとした時、玄関に一通の手紙が落ちていた。
(なんだ、これ。さっきはなかったはずだよな。いつ届いたんだ。)
手紙を裏返すと、そこには見覚えのある物で封がされていた。
(母さんがよくこの紋章をついた手紙をやりとりしていたよな。母さんはもう死んでいるし。)
手紙を表にすると、宛名はレン・シェザード様になっている。
(俺宛ての手紙なのか?)
特にすることもなく、暇だったレンは何の躊躇いもなく、手紙を開けた。
自分の母親の知り合いだということを忘れ、これから起こるであろう出来事への警戒がないまま。