道に迷ったおじいさん
人助けその4
「じゃあ今夜も早速人助けに行こうかー」
「はいはい。背中お借りしますよ」
「どーぞどーぞ」
「クリームシュカの背中は無駄に落ち着きますよね」
「む、無駄にって…全く、君は一言多いんだから」
「まあまあ、さっさと行きますよ」
「はーい」
とりあえず、クリームシュカの背中に乗っかります。クリームシュカの無駄に早い足と無駄にいい嗅覚で怪我を負っている人を探します。
…早速今日の困ったさんを見つけました。なにやら路上できょろきょろしています。
「こんばんは。なにかお困りですか?」
「こんばんはー。もしよかったらお手伝いするよー」
「…ま、魔族!?お願いします、助けてください、助けてください!わしはただ、初孫が産まれたと聞いて会いに行きたいだけなのです!せめて初孫の顔を見るまではどうか!」
ああ、早速怖がられてしまいました。おじいさんは土下座をして命乞いをしています。
「大丈夫ですよ。クリームシュカは人間が大好きで、人間と仲良くなりたい一心で夜中人助けして回るほどのお人好しなのですから」
「え?そ、そんな魔族いるはずが…」
「ふふふ。実はいるんだよー。僕とかねー」
「改めてはじめまして。私、アデリナ・クドリャフツェフと申します。気軽にリーンカとお呼びください」
「改めてはじめまして。僕はクリメント・スミルノフ。気軽にクリームシュカと呼んでねー。僕は悪い魔族じゃないよー」
「で、では殺さないでくださるのですか?」
恐る恐る、といった感じで顔を上げるおじいさん。話がわかる方でよかったです。泣き叫ばれるとちょっと困りますから。
「大丈夫、殺したりしないよー」
「さて、貴方は何かお困りですか?」
「じ、実は、初孫が産まれたので会いに行きたいのですが、道に迷いましてな…」
「ああ、なるほどねー」
クリームシュカはそういうと転移魔法を使い、おじいさんを娘さんとお孫さんのいる家まで送っていきました。
「これで大丈夫ー?」
「え!?す、すごい!これが魔法ですかな!?」
驚くおじいさん。わかります。私も最初は大はしゃぎしましたから。
「そう、転移魔法です。ここで大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます!大丈夫ですぞ!」
無事辿り着けたようです。よかったよかった。
「ありがとうございます、これで初孫の顔を見られます!」
「どういたしましてー。ついでに怪我の治療をしとこうかー」
そういうとクリームシュカはおじいさんの腕の傷口を舐めます。すぐに傷口は塞がりました。
「いくら初孫の顔を見たいからといって無茶してはいけませんよ。あと、出来れば良い吸血鬼としてクリームシュカの噂を流してあげてくださいね。クリームシュカは人間と仲良くなりたいのです。よろしくお願いします。」
「は、はい!わかりましたぞ!」
よかったよかった。これでクリームシュカが人間と仲良くできる確率が上がりました。
「さあ、クリームシュカ!次の人助けに向かいますよ!」
「もー、なんでいつもリーンカばっかりが仕切るのさー」
「え?なんで私が仕切るのか?貴方が優柔不断だからですよ!ほら、早くいきますよ!」
「はーい。じゃあばいばーい」
「それではまたいつかどこかで」
「…魔族とは思えない、良い方でしたなぁ」
道に迷ったおじいさんを送っていく