目の悪い少年
人助けその3
「じゃあ今夜も早速人助けに行こうかー」
「クリームシュカは呑気ですね」
「えー、そんなことないよー。なんでそう思うんだい?」
「人助けしている間に吸血鬼ハンターに見つかったらどうするんですか」
「あー、まあ僕そんなに弱くないしねー。大丈夫大丈夫」
「だから、そういうところが呑気なんですって」
「えー?」
とりあえず、クリームシュカの背中に乗っかります。クリームシュカの無駄に早い足と無駄にいい嗅覚で怪我を負っている人を探します。
…早速今日の困ったさんを見つけました。なにやら地面に這い蹲りなにかを探しているようです。
「こんばんは。なにかお困りですか?」
「こんばんはー。もしよかったらお手伝いするよー」
「あ、ありがとうございます…えっ、ま、魔族!?」
ああ、早速怖がられてしまいました。
「大丈夫ですよ。クリームシュカは人間が大好きで、人間と仲良くなりたい一心で夜中人助けして回るほどのお人好しなのですから」
「え?クリームシュカ?もしかしてあの噂の吸血鬼の?」
「あ、噂になってたのー?ふふふ。そうだよー、僕がクリームシュカだよー」
「改めてはじめまして。私、アデリナ・クドリャフツェフと申します。気軽にリーンカとお呼びください」
「改めてはじめまして。僕はクリメント・スミルノフ。気軽にクリームシュカと呼んでねー。僕は悪い魔族じゃないよー」
「そ、そうなんですね。失礼な態度をとってすみません。僕はミハイルといいます。」
よろしくお願いします、とミハイルさん。話がわかる上に礼儀正しい方ですね。感心感心。
「さて、貴方は何にお困りですか?」
「あ、えっと。僕、目が悪くて。目がよく見えないんですけど、この辺で大事なロケットペンダントを落としちゃって…」
「ああ、なるほどねー」
クリームシュカはそういうと魔法を使い眼鏡を生み出します。そして少年に眼鏡をプレゼントしました。
「この眼鏡あげるよー。この眼鏡をかけて探して見てー」
「え!?い、いいんですか!?」
眼鏡は高級品ですから、少年の驚きもわかります。でも大丈夫。なんせクリームシュカの魔法で生み出した眼鏡ですから無料です無料。
「大丈夫ですよ。魔法で生み出した眼鏡ですから。タダです、タダ」
「あ、ありがとうございます!…あ、こんなところにあった!」
早速見つかったようです。よかったよかった。
「ありがとうございます、おかげで見つかりました!」
「どういたしましてー。ついでに、君、怪我してるよね?治療しとこうかー」
そういうとクリームシュカはミハイルさんの足の傷口を舐めます。すぐに傷口は塞がりました。
「大事な物ならもう落としてはいけませんよ。あと、出来れば良い吸血鬼としてクリームシュカの噂を流してあげてくださいね。クリームシュカは人間と仲良くなりたいのです。よろしくお願いします」
「は、はい!任せてください!」
よかったよかった。これでクリームシュカが人間と仲良くできる確率が上がりました。
「さあ、クリームシュカ!次の人助けに向かいますよ!」
「もー、なんでいつもリーンカばっかりが仕切るのさー」
「え?なんで私が仕切るのか?貴方が優柔不断だからですよ!ほら、早くいきますよ!」
「はーい。じゃあばいばーい」
「それではまたいつかどこかで。あと、今更ですが子供がこんな時間まで外に出ているのは感心しません。気をつけてくださいね」
「…リーンカさんにクリームシュカさん、噂通りいい人だなぁ。もしかしたら本当に、人間と魔族が仲良くなれる日も近いのかもね」
眼鏡をあげる