私のお友達は吸血鬼でヒーローです
人助けその1
吸血鬼といえば悪役?いいえ、そんなことはございません!吸血鬼だって十人十色。世の中には、ちょっと優柔不断でお人好し、人間大好きな変わった吸血鬼だっているのです!これはそんな吸血鬼に助けてもらった私が、彼と一緒に人助けに尽力する話。
…ということではじめまして。私、アデリナ・クドリャフツェフと申します。見ての通り金髪緑眼の一般人です。ウェーブのかかった腰まで伸びた髪が綺麗でしょう?ええ、元貴族です。まあ、隣の吸血鬼とは違って容姿は良くも悪くも普通ですが。まあ、気軽にリーンカとお呼びください。ええ、はい。魔族と気軽に関わるなど言語道断、というのはもう聞き飽きました。ですがちょっと待ってください!私を助けてくれた彼はそんじょそこらの魔族とは全く違います!なんせ人間が大好きで、人間と仲良くなりたい一心で夜中人助けして回るほどのお人好しなのですから!信用できない?そうでしょうとも。彼は黒髪赤眼で正真正銘の魔族。怖くて当たり前です。そんな彼が怖がられないために人間の私が側にいるのですから!え?無理矢理従わせられているんじゃないか?とんでもない!あの人にそんな度胸があるわけないじゃないですか!まあまあ、見ていてください。彼を見ていればそんな懸念は払拭されますから。
さて、そんな彼を紹介致しましょう。彼はクリメント・スミルノフ。気軽にクリームシュカと呼んであげてください。見ての通り黒髪赤眼の高位魔族。腰まで伸びた黒髪を一本に結わいているのがチャームポイントですね。え?言うほど可愛くない?それは彼を魔族として見ているからそう思うんです。慣れちゃえば可愛いですよ。あと普通の魔族がピンクや紫の瞳が多いのに対して、彼は高位魔族だけが持つ赤い瞳を持ちます。うん、普通に怖いですよね。でも彼本当に人を傷つけるような度胸ないですから。大丈夫大丈夫。それによく見てください。目は大きいし、二重だし、鼻は高いし、歯並びも整っているし、顔のバランスもいいでしょう?そう、よく見ると美形なんですよ!よく見ると!え?そんなによく見るとって言うと可哀想?あ、貴女だいぶクリームシュカに慣れてきましたね。大丈夫、それで良いんです!
さて、貴女怪我してますね。クリームシュカはいつも人の血の匂いを追って、怪我した人に人助けしているのです!えっへん!さあ、傷口を見せてください。クリームシュカの唾液をつければすぐに塞がっちゃいますから。ええ、舐めます。女性ですし、ちょっと抵抗はあるでしょうが、医療行為と思って割り切ってください。ええ、そうですそうです。…ほら治った。ついでに家まで送っていきますよ。クリームシュカは人間より足が速いですから。すぐにばびゅーんと家に着いちゃいますよ。大丈夫大丈夫。乗りかかった船ですから。荷物は私が持ちますよ。ああ、私はクリームシュカの背中に乗っかりますから大丈夫です。え?貴女?クリームシュカにお姫様抱っこされてください。大丈夫大丈夫。クリームシュカ無駄に美形なので堪能できますよ。さあ、レッツゴーです!
…はい、着きましたね。女性なんですから、これからは怪我には気をつけてくださいね。あと、出来れば良い吸血鬼としてクリームシュカの噂を流してあげてくださいね。クリームシュカは人間と仲良くなりたいのです。よろしくお願いします。さあ、クリームシュカ!次の人助けに向かいますよ!え?なんで私が仕切っているのか?貴方が優柔不断だからですよ!ほら、早くいきますよ!
怪我した女性を治してあげる