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第八話 二週間後

やっと話が動いた…()

 それから丸二週間。俺は一歩も外へ出ず、この空間に立て籠っていた。


 起きている時間の半分くらいはトレーニング施設で訓練をしていたので、スキルの熟練度はそこそこ上がってきた。銃はもちろんグレネード、ナイフ、トマホークを使っての立ち回りも身についてきた実感があるし、このトレーニング施設、かなりの優れものなんじゃなかろうか。


 今日も今日とて訓練を終え、手に持ったアサルトライフルAk 5Cをガンラック――初日のトレーニング後に召喚した――に置く。


 ちなみに、俺が召喚したAk 5Cにはオプションでドットサイトとフォアグリップが装備されている。


 ドットサイトというのは、覗き込むとレーザーポインターのような赤く光る点で狙いをわかりやすくしてくれる等倍のスコープのようなものだ。他にもいくつかのタイプがあるこの手の光学照準器(オプティカルサイト)は、備え付けのアイアンサイトと比べて狙いやすさが段違いだ。結果オーライとはいえ、初戦でFALにこれが載っていればどれだけ心強かったか…


 もう一つのフォアグリップというのは、利き手でないほうの手で銃を保持するサポートをしやすくするためのもので、早い話が某機動戦士のビームライフルについている、()()()()()()()()()()()()()()()()のことだ。これがあると反動を抑え込んで撃ちやすくなる。ちなみに機動戦士のように横向きにフォアグリップを付けても、それほど持ちやすくはならない。


 とまれAk 5Cをガンラックへ置いた俺は、リビングのソファに腰掛けながら考える。


「いい加減何かしら行動しないとな…」


 このままではまごうことなき引きこもりである。かといって、正直どう動けばいいのか皆目見当もつかない。


 町を目指す?どの方角にあるのかすらわからないのに?距離なんて当然わからないし、何日間歩けば人里に辿り着くのやら。ここの食料は無限だが、持って行ける量には限りがあるし、食料が持つはずが…あ。



 ああああああああああ!!


 そうだよ、これ装甲車(MAV)だったじゃん!!





 とてつもなく重要なことを失念していた。一生、いや二生の不覚ッ…


 しかしそうとわかれば善は急げだ。ひとまず操縦席に行こう。トレーニング施設に戻り…移動の可能性を考慮してAk 5Cと装備、ついでにFALといくつか余計に召喚した品物をいれた革のトランク(アイテムボックス)を持って、兵員室にそれらを置き、操縦席へ…


 なんだこれは。非常に未来的でSF感しかない。明らかに本来のものではないだろこれ。そういえば操縦席と兵員室は、初日に確認してないんだった。まぁでも実用する分には、リアルにごちゃごちゃ計器やスイッチがいっぱいあるよりは、わかりやすくていいか…


 態々謎仕様に変更された操縦席があることからして、コイツは間違いなく動く。そして動くからには燃料は神様パゥワーで無限のはず。だってどこにもガソスタないし。もし普通にただのディーゼルエンジンだったとしても、燃料自体は無限に供給されるはず。ディーゼルオイルだって現代製品だし、スキルで呼び出せる可能性もある。


 と、するなら問題は…どの方向へ向かうのがいいか。結局見当はつかない。


 まぁ、どのみち今はMAVを草原の側へ出してしまわないと、このまま森の方へはどうあがいても進めない。かといって草原の側に出るにも木を切り倒す必要がありそうだ。チェーンソーを召喚できるようになるまで、「神器召喚(現代)」のレベルを上げなきゃならないかもしれないなぁ…上げたら出るのかもわからないが。


 とにかく情報収集のために車外の様子を確認しなければ。ここにもハッチはあるし、兵員室側なら後方も見やすいだろう。一応RWSもある。いろいろ手はある。


 ひとまず操縦席のハッチを少しずつ開き…前には進めないことが瞬時に把握できた。木が鬱蒼と生い茂っている。身を乗り出して周囲を見渡すと、草原は右手側やや後方にあることがわかった。どの道前へ進むのは得策ではなさそうだ。


 さて、そうなると後方だ。兵員室へ戻り、天井のハッチを開く。お?


 道だ。道がある。いや正確には道ではないのだが、木が生えていないところが道のように伸びて、草原の方に出られるようになっている。


 決まりだ。ひとまずバックで草原の方に出る。話はそれからだ。





 二週間ぶりに草原に戻ってきた。


 前回と違って(MAV)があるし、この盾は光学迷彩実装だし、見晴らしの良い草原でも大丈夫だろう。


 そして今の脱出で一つ思いついた。「どこへ行くべきなのか」ではなく「どこへなら行けるのか」と考えるべきだ、と。考えてみれば単純な話だ。今のように、もしかしたらこの草原を囲んでいる森には、こういうふうに道が隠れているかもしれない。それが人里までつながっているかもしれない。今はそれに賭けてみるのがベストだろう。


 ひとまず、ここからこの草原の外周を回ってみることにしよう。





 走る~走る~俺~た~ち♪


 …俺は一人だ。


 茶番はいい。とにかく走る。走る。MAVに乗って。


 だが走れど走れど道などない。まぁ見落としがないようにそんなに飛ばしていないし(あと揺れるし)、そもそもが希望的観測だ。だが流石にここまでなにもないと不安になってくる。



 などと考えていた、その時だった。


「…ん?」


 森の方から何か聞こえた気がする。ちなみにこの神仕様MAV、鈍行ならモーター駆動(電気自動車)かと思うくらい静かだ。案外実際にそうなのかもしれない。神様ならインホイールモーター(研究中の最新技術)だって造れるだろう。…実は軽量戦闘車両システムよろしく超信地旋回(その場で回転)できたりしないよな?後で説明書で確認してみよう…


 それはそうと目下重要なのは森から聞こえた気がする物音だ。一旦停止し、耳を澄ます。


 すると、確かに聞こえる。ギャアギャアと喚くような複数の声が。


 なんとなくいい感じがしない。この感じ…そうだ、ゴブリンだ。初めての戦闘で感じた、魔物であるゴブリンの禍々しさ。それが喚き声に乗って伝わってくるような、そんな感じがする。


 この直感を信じるなら、これは魔物…敵襲だ。


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