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第一七話 VS豚顔の大オーク

前半、唐突に入るオークパート(若干の胸糞&性的描写ありなので注意)

 彼は考えていた。なぜこうなったのか、と。


 己に瑕疵などなかったはずだ。いつも通りにゴブリン共を利用して追い込んだ。そう、いつも通りだったはずだ。


 例えばこの前、村を襲った時のように。ゴブリン共に三方向から村を襲わせ、己は気配を消して、同じく気配を消せる少数の精鋭を連れて残る一方向へ回り込み、包囲して一網打尽にした。その時捕まえた雌共はゴブリン共が玩具にしていたが、そのうち一匹はなかなかいい声で鳴くので巣に掘った穴に入れてある。


 例えばその前、隊商を襲った時のように。これも確か村を襲った時と同様、ゴブリン共を使った包囲網で絡めとった。肉棒を挿れ泣き叫ぶ雌を見て、若い雄がなにか喚いていた時の、悲嘆と憤怒と憎悪が入り混じったような表情が何故だか無性に愉しかったのを覚えている。そしてその雄がゴブリン共に裂かれるのを見て雌が何やら喚くのも、それを突き上げて何も言えなくしてやるのも格別だった。


 そのまた前も、そのさらに前も、大体似たようなものだった。ゴブリンで囲み、抵抗する奴は殴り倒して、雌は肉を味わい雄も肉を焼いて胃袋に入れる。同族は手強いが、それでも己の敵になるものはいなかった。この肉体は、同族のどれより強靭だった。まして人間など問題外だ。それなりに強そうな奴はいたが、己に傷をつけられた者はいなかった。脆弱な人間とは我々魔物に食われ犯されるために在るものだ。そのはずだった。


 翻って今回だ。ちっぽけな人間が二人…いやそもそも最初は雌が一人だったはずなのだが、恐らく男の方は見落としたのだろう。なんにせよこんなところまで人間が侵入するのは珍しいし、手練れには違いない。だがそれでもこの肉体の前には些細なものだし、あの憎たらしい妖精共の魔法阻害がある限り、人間共は唯一の対抗手段であるところのあの目障りな魔法を使えない。草原にさえ踏み込まなければ、ここは理想の狩場であり、住処だったはずだ。


 それがどうだ。ゴブリン共の包囲は雌一人に突破され、人間共は煙玉で、そうたかが煙玉で己から逃げおおせた。おまけに雄のほうは何やら喧しい杖のようなものをこちらへ向けて、攻撃してきた。腕にあたってもかすり傷程度だったが、耳をやられた。耳を抉ったあの耳障りな音は鮮明に覚えている。草原の方へ逃げ、追ってみたが奴らは忽然と姿を消していた。


 とにかく見たことも聞いたこともないことばかりやってくる奴らだった。人間共がなにかするものと言えば魔法なのだろうが、妖精の魔法阻害の下で何故魔法を使えるのか。


 どれだけ考えてもわからない。奴らは一体何者なのか。


 もし、彼が吸血鬼(ノスフェラトゥ)の存在を知っていたならその類であることを疑っただろう。だが彼はそれを知らなかったし、知っていたなら生きてはいなかっただろう。


 そうして考えていたところへ、何やら聞いたことのない音が聞こえてきた。もしやこの音も奴らの仕業なのか、そう思って珍しく自分から確かめに行ってみればビンゴだった。馬の曳かない馬車のようなものが、謎の音を発しながら森を駆けていた。


 そういえば雌のほうはなかなか具合がよさそうだった。雄のほうには耳の借りを返さねばならない。このままでは妖精の魔法阻害から離れてしまう。追わねば。追って雄には借りを返し、可能なら雌を捕まえて穴の具合も確かめたい。馬なき馬車は森の中にも関わらず存外に速いが、追いつけない速さではない。


 彼は人間共を追って駆け出した。






「あがががががどぅおちきしょうがあああ!!」


「それっ、来るぞ!」


「ぬおおおお!!」


 揺れに尻を叩かれながら、左へ思い切りハンドルを切る。ちょいちょい右後方から木が飛んでくる。比喩ではない、木が根っこから枝葉まで丸ごと一本飛んでくるのだ。


 奴さんやけにお怒りだ。右の耳を吹っ飛ばしたのがまずかったか!?なんにせよ、徐々に距離を詰められている。木を抜き投げる動作が入る分奴のほうが遅くなるようにも思えるが、こちらは回避行動を強いられてまっすぐ草原から離れるコースを取れない。その間にみるみる距離を詰められている。非常にまずい状況だ。


「お姉さん!そろそろこいつを捨てて戦闘するしかないかも知れない。アイテムボックスを!」


 お姉さんから革のトランク(アイテムボックス)を受け取っておく。俺が戦うにはこいつが必須だ。


「そうだね…もう少し先まで逃げられれば、奴にもダメージを通せる魔法を使えるかもしれない。あとは戦いながら逃げるしかないか…!おっと、そろそろやばそうだ…」


 明らかに地響きが近くなってきたのが分かる。一瞬後ろを見ると、馬鹿でかい木を丸ごと一本抱えた豚顔の大オーク(ボア・ウルク=ハイ)がすぐそこまで迫っていた。


「追いつかれたか!打ち合わせ通り、飛び降りたあとすぐに閃光弾を使いますのでこちらを見ないように!飛び降りる合図はお任せします!」


「任された!」


 スモークグレネードを右へ向けていくつかばら撒きながら、お姉さんも俺もシートベルトを外す。お姉さんにも着脱の仕方は乗るときにしっかり練習してもらった。どうせ道なき森の中、それほどスピードは出ていない。


「来るぞ!」


 肩を叩くお姉さんの合図で飛び出す。次の瞬間、TERYXに木が振り下ろされた。


「ちィッ!」


 飛び降りながらフラッシュバンを取り出す。


「閃光弾!」


 ピンを抜いてお姉さんに聞こえるように叫びながら、奴が潰したTERYXの手前に向けて投げる。よし、上手く車体側面にあたって奴の気を引け…んん!?


 TERYXが光の粒子になって消えていく!?


 おっといかん、フラッシュバン投げたんだった!!


 とにかくスモークグレネードを出鱈目に投げまくりながら耳をふさいで離れる。


 奴が消えゆくTERYXに気を取られているタイミングで、フラッシュバンが爆発した。


 見ると、奴が呻き声を上げながら目を抑えている。奴から見て木の影に隠れながら、アイテムボックスからこの戦闘の主役を取り出した。

オークパート、上手く書けてるかな…()

どうにもR-18の才能がなさそうな作者

そして引き伸ばされる主役登場

次回、フォースの英国面(違

紅茶と共にあらんことを()



ちなみに「馬鹿でかい木を丸ごと一本引っこ抜いて」くるのは、この戦闘の主役を生み出した国のある昔話に出てくる「人食いの大男」のオマージュ。

主人公の(悪)知恵の働きっぷりや振り回されながらも実に恐ろしい人食いの大男も見所だが、なんといってもあの話大男の家族があまりに悲惨過ぎるし何よりも王様が悪辣過ぎると思うんだ(笑)

なんで大男の財産の場所を事細かに知っているのやら…()

なんて野暮なことを考えてしまう私はもう純粋ではいられないのだろう()

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