第一六話 脱出行
昨日は投下できずすいません…
可能な限り一日おきペースは維持します…がズルズルとゆっくりになっていく予感…()
「離脱は妖精の群生地を調べてからにしたい?」
準備を済ませてさぁ森から脱出、というところでお姉さんがそんなことを言い出した。
「ああ、一応ここまで来たからには調査を一通り済ませておきたくてね。君は私を置いていってくれてもここで待っててくれても構わない」
「その群生地ってのはどのあたりにあるんです?」
「まず間違いなくこの草原の中心だろうね。だからこそ、ボア・ウルク=ハイも引き返した。妖精の魔物避けがかかっている」
「俺は以前、この草原の中でゴブリンと戦闘になりましたけど?」
「ゴブリンくらい小さければまぁ通り抜けくらいはすることもあるだろう。それでも妖精の住処そのものを目指そうとはしないだろう。そうだったろう?」
「ええ、ちょっと中心とはずれた方向へ向けて移動していました」
「だったらまず間違いない。妖精たちの住処はこの草原の中心だ」
「それならこれで送りましょうか?近くに止めておいたほうがお姉さんも見つけやすいでしょうし」
「そうかい?それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」
「このあたりかな」
「わかりました、一旦止めますね」
兵員室の天井を開けて外の様子を見ていたお姉さんからの合図でMAVを止める。
なるほどほぼ草原の中心付近まで来たんじゃなかろうか。なんとなく景色に見覚えがある。最初に目覚めたあたりに近いはずだ。
ハッチを開ける。
「ハッチの開け方はお教えした通りです。ここで待ってますんで、お気をつけて」
「ああ、ちょっくら行ってくる」
そう言うとお姉さんは草原へ降り立ち、しばらく歩いた後、見えない何かと会話し始めた。兵員室の天井を開けて様子を見ているが、非常にシュールというか、なんか電波だ。
さて、お姉さんが戻ってくるまで暇だ。調査には時間がかかるかもしれないと言っていたし、しばらく装備を吟味しつつトレーニング施設で訓練でもしていよう。スキルのレベルや実際の能力という形で成果が出るから、だんだんトレーニングが楽しくなってきた。それに、例の兵器の練習をもっとしておかないと、まともに中てられる気がしない。
結構時間が経ってから。
お姉さんが戻ってきた。
「成果はどうでしたか?」
「ああ、実によかった。妖精研究の大いなる一歩になる」
「何か画期的な発見でもあったんですか?」
「これだけの規模の妖精の住処というだけでも画期的だ。君にも感謝しているよ」
「どういたしまして。それじゃあ草原の縁まで戻って、いよいよ森を脱出しましょう」
「そうだね、行こう!」
そんなわけでお姉さんは調査を終え、俺たちは森の近くまで戻ってきていた。今度こそ森を脱出する。
装備を身に着け、MAVから降りて、アイテムボックスからTERYXを出した。トランクよりも大きいためか、トランクを開けると目の前に一瞬で出現する。なんかシュールだ。
「ほう、これに乗り換えるのかい?」
「ええ、これならなんとか森の中も進めるでしょう」
「そうだね、えむえーぶい?と言ったっけ、今まで乗ってたやつよりは小さい。これならいけそうだ。なるほど、これが君の言っていたユニークスキルの片割れか。いつの間に召喚したんだい?」
「お姉さんがお風呂入っている時にいろいろ準備したうちの一つですよ」
「なるほどね、だからあの広い空間にいたのか。確かにこれは部屋じゃ出せない。何から何まで世話になるね」
「構いませんよ。それより早く行きましょう。あのデカブツが嗅ぎ付ける前に」
「それもそうだ」
MAVをアイテムボックスへ仕舞う。お姉さんを助手席に乗せ、革のトランク(アイテムボックス)を持ってもらい、俺は運転席へ。
さぁ、出発。この草原と森とおさらばだ。
森の中を、木々を縫うように車を走らせる。かれこれ20分ほどこうして進んでいるだろうか。当たり前と言えば当たり前だが、結構難しい運転を要求される。いかなATVといえどもTERYXは二人乗りの4輪自動車、流石に全く道のない森の中で転がすには少し大きかったか。
「ははっ、これは楽しいね!」
「それは何よりですっと!」
しかしまぁ、絶対に歩くよりは速いし楽だ。そのためにこれを用意したのだから意味はあったさ。お姉さんも楽しんでくれているようで何よりだ。こっちはそれどころじゃないけどな!
「おっと、また木が」
「ぬおおっ!」
正面に現れた木を躱しながらお姉さんに尋ねる。ところでこれトレントとかいないだろうな?!
「魔法妨害は弱まってきましたか?」
「ああ、結構弱くなってきた。ぼちぼち多少の攻撃魔法くらいなら使えると思う」
「よかった、なんとか逃げ切れそうですね!」
あ、しまった、フラグだったか…と思ったその時。
ズシン、と、地響きがした。
「マジでフラグかよチクショウめ!」
「おいでなすったようだね!…右手側100ミード!」
「近っ!…できる限り飛ばして引き離してみます!」
「ああ、そうしてくれ!少しでも魔法阻害の力場から離れれば魔法の威力はそれだけ上がる!」
爽やかな高原の森の中、死のチェイスが始まった。
いくらATVでも普通の車と同じスタイルのやつはそれなりに大きい→通り抜けできるのは巨体のオークが通る獣道ならぬオーク道→オークの縄張りの中を通るので発見される、というような感じですかね…
このボア・ウルク=ハイ戦、結構予想外の幕引きになると思います。




