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第一一話 豚顔の大オーク、登場

 地響きとともに現れたのは、豚顔の巨人だった。


 一瞬気圧されるが、すぐにAk 5Cを向けて射撃。


 しかし弾が巨体に命中しても、巨大なオークはこちらに敵意を向けてくるだけだった。


「…ッ効いてない!」


 多少の血は流れているが、オークは殆ど意に介していない。これは手持ちの手段では無理だな…


「その武器でも無理か。流石にあれは私も対処できん、逃げるぞ!」


「ちょっと待て、逃げるならいい場所がある」


 すぐに逃亡態勢に入る。スモークグレネードを足元に一発、オークから見て進行方向が隠れるほうへ一発投げる。


「煙が出たら行くぞ!」


 オークを混乱させるためにもう一度攻撃を試みる。胴体と腕は無理だったが、どうあっても頭は急所だ。奴は巨体だし頭部を攻撃されることにも慣れてはいまい。きっと防衛本能が働くだろう。


 耳のあたりを適当に狙い発砲、耳のそばを掠める銃弾のソニックブームで奴を怯ませ、混乱させる。


「よし、こっちだ!」


 耳を気にした奴の視線が逸れ、スモークグレネードがもうもうと煙幕を吐き出したのを見計らい、命中確認もせず逃げに移る。今度は俺がお姉さんの腕を引っぱり、来た方向…草原に置いてきたMAVのほうへ向けて走る。


「煙玉か、いい手だね」


「なに、もっといい手が向こうにありますよ」


「ほう、そいつは楽しみだ」


 軽口を叩きながらもとにかく逃げる。ある程度はオークを離したが、すぐに煙幕を破って追ってくるだろう。


 あっという間に森の端まで戻ってきた。草原へ飛び出す。


「ほう、こんなところに草原が…いや今はそれどころじゃない!いい場所ってのはどこだい!?」


「…あった!あれだ!」


 光学迷彩を切っているのに、通常の迷彩塗装で風景に紛れたMAVを一瞬見つけられなかった。これ塗装もなんとかしたいな。


「なんだい、あれは…」


「乗ればわかります!わからなくても乗れば大丈夫!」


「乗るってことは乗り物かい?その武器といい、面白いものばかり持っているね君は!」


 MAVの後ろのハッチに回り込んだとき、ズシンズシンと巨人の足音が近づいてきた。


 直ちに操縦席に飛び込み、MAVを叩き起こす。


「乗りましたか?!」


「ああ、乗ったよ!」


「OK!扉を閉めます!気を付けて!」


 ハッチを閉め、光学・魔力欺瞞をオンにする。草原の中心へ向けバックで走り出したところで、オークが森から出てくるのが見えた。耳から結構な量の血を流している、適当に撃ったのが中ったらしい。


「さぁて、どうしようかね…」


 そろそろと音を立てないように低速で後退しながら、あれをどう倒すか考える。手持ちの武器で一番威力があるのはアイテムボックスにしまってあるFALだが、さて通じるか…


「…興味深いね。なんなんだいこの乗り物は?」


「おわっ!?」


 突然お姉さんが身を乗り出してきた。


「びっくりした、驚かさないでくださいよ」


 振り向くとお姉さんの綺麗な顔がすぐそばにあってまた驚く。


「すまんね、あまりにも面白いものばかりでついつい気になってしまった。ところでこの乗り物も興味深いのだが…」


 そう言ってお姉さんがSFな全面モニターに映し出された前方の景色を、より正確にはそこに佇みきょろきょろとあたりを見回している豚顔の巨人を指差して言う。


「どうしてあれに見つからないんだい?」


「ああ、これ外から見た時透明にできるみたいで」


「なんと!魔力欺瞞はわかったが、視覚も誤魔化せるとはね。いやはや実に興味深い」


 魔力欺瞞はわかった…?ということはやっぱりこのお姉さん魔法使いなのか?そういえばさっきから面白いとか興味深いとか連呼してるし、なんかそういう学者系キャラいるよな。魔法使いも学問として自分で研究する系のキャラはどこか学者肌だったりするような相場だし、やはり彼女もその例に漏れないのかもしれない。


「で、隠れたはいいがどうするか思案中、といったところかな?」


「ええ、まさに。ところで…」


 いい機会だ、いろいろ聞いておこう。


「ありゃなんなんです?オークってやつですか?」


「ああ、そうだよ。あれはボア・ウルク=ハイと言ってね…まずオークには二種類いるのは知っているね?」


 そうなのか?


「いや、初耳です」


「おっと、そうか…ふむ、まぁそれくらいの年で、まだ世の中に出ていないのならない話ではないかな…」


 おっと、これはカミングアウトするチャンスかもしれない。場所を聞き出すにはやはりそのあたりの事情をぶちまけてしまうのが一番手っ取り早そうだ。それにこのお姉さん絶対珍しいもの好きだ、興味を惹けるはず。というわけでここらで一旦後退を停止する。


「というより、なぜここにいるのかわからないんですよ。ここがどこなのか、自分が何て名前なのか、何をしていたのか(職業というニュアンスで言っているので嘘ではない)も」


「ほう、記憶喪失というやつかい?」


「そうみたいなんです」


「ふーむそれはそれは…珍妙な品々の数々といい君自身にも興味は尽きないが、とりあえずそのあたりは後回しにして、今はあれへの対処の為に話を戻すよ?」


 よし、後で話を聞けそうだ。


「ええ、お願いします」


 そうして、お姉さんのオーク講座が始まった。

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