第十話 戦闘開始
今回の戦闘は三人称視点
秘境の森に、乾いた音が響き渡る。
ゴブリンのうち一体が、後ろのゴブリンに自らの血を浴びせながら倒れる。血を浴びせられたゴブリンもまた、変形しつつも貫通した5.56mm弾にその身を穿たれ、同じように倒れていた。
刹那、戦場の時が止まった。片手剣を振るうローブの女も、ゴブリン共も、聞いたことのない連続する炸裂音と同時に敵(仲間)が倒れるという状況を飲み込めず固まった。
再び連続した炸裂音が轟き、ゴブリンが数体斃れる。ローブの女が先に立ち直り、再び剣を振るう。三回目の炸裂音の連続までに数体が斬られたところで、ゴブリン共も再起動した。
突如出現した飛び道具使いを狩らんと、女の脇を通り抜けようとしたゴブリンの首が刎ね飛ばされる。粗末な棍棒を握りしめ、女を昏倒させ犯さんと横合いから迫ろうとしていたゴブリンが、胴を撃ち抜かれる。
血に塗れてなお鈍らない剣が、次々とゴブリン共を血祭りにあげていく。身の縮む炸裂音とともに、ゴブリン共がばたばたと斃れていく。
ゴブリンの屠殺場の色を一層強めた戦場に、ゴブリン共は恐慌状態に陥った。やがて雑多な武器を放り出し我先にと逃げ出したゴブリン共だったが、その背中にも無慈悲な斬撃と銃撃が襲い掛かった。
1分としないうちに、生きたゴブリンはその場から消えていた。
ふう。これで打ち止めか。案外あっさり終わったな。
今回は数が多かった。フルオートも手伝って、弾薬の消費量が大変なことになった。フルオートはこれが問題だな。薬莢とマガジン、どうしたものか…
しかしまぁ、これだけの数の敵に勝てたのは自信になった。案外冷静でいられているし、懸念していた精神ダメージも、そこまでのものにはならずに済んだようだ。
二回目という慣れもあるのだろうか…それはあまり好ましくないかもしれない。緊張感は保ちつつ、メンタルはタフに、それを常に心がけよう。
敵の数が圧倒的に多くて緊張感は前回よりも大きかったが、それでも前回よりも危なげなく敵に対処できた。ドットサイトの狙いやすさ、フォアグリップによる反動の抑えやすさ、フルオートの安心感、俺自身の射撃の腕、そして味方の存在だ。
そう、彼女が敵を引きつけてくれたおかげで、こちらに来るゴブリンが少なかった。近づいてくるゴブリンには余裕をもって対処できたし、その分彼女の援護に回ることができてより効率が上がった。味方のありがたさが身に染みる戦いでもあった。
その彼女は、動くゴブリンがいないことを確認すると、剣を一振りして血を払い、鞘に納めた。
さて、目的を果たそう。この世界の人間とのファーストコンタクトだ。言葉が通じればいいが…まぁ、神様もそこまでの無理ゲーを強いてはこないだろう。そう願おう。
「誰かは知らないが助かったよ」
近づいたところでそう声をかけられた。言葉は通じるようだ。
「いいえ、どういたしまして」
そう言いながらこちらを向いた彼女の前に進み出る。
「…ふむ、見たことも聞いたこともない攻撃を使うから何かと思ったが、変わった格好に変わった武器だね…」
彼女がAk 5Cを観察している間に、俺も彼女を観察する。
動きやすそうな服の上にローブを纏っている。なにやらじゃらじゃらと小物を体に巻き付けているが、鎧の類は身に着けていないようだ。豊満な身体のラインが浮き出る煽情的な恰好は、印象としては剣士というより魔法使いのそれ。鞘へ納められた剣は魔法の杖のようにも見えるし、もしかすると本当にそうなのか、あるいはなんらかの意図のもとそのように擬装しているのかもしれない。
年齢は20代半ばといったところだろうか?綺麗な金髪を短めに切り揃え、レンズの奥にエメラルドの瞳が輝く。大きな丸眼鏡をかけていても調和が取れた顔で美人だ。何より大きい。なにがとは言わないが。っと、じろじろ見るのは良くないな。このお姉さんから情報を得るために好感度を稼いでおかねば。
「いやしかし本当に助かったよ、さっさと奴らを殲滅してここから離れたかったからね」
「血肉の臭いは獣が寄ってきますからね…」
「いや、それもあるんだが…」
そう言いかけた彼女が何か大事なことを思い出したような表情になる。
「そうだ、こうしちゃいられない!君、すぐにここから離れるんだ!」
「え!?」
その時だった。ズシン、と。地響きがした。
「奴だ!」
言うが早いか彼女は俺の腕をひっつかみ、猛烈な勢いで引っ張っていく。その間にも、ズシン、ズシン、と大きな何かの足音のような地響きが近づいてくる。
「奴が来た!」
何事かと混乱する俺は後ろを振り返り…そいつを見た。
「豚顔の大オークだ!!」
豚顔の巨人が、木々の間から顔を覗かせた。
ランダムボス出現
そしてこの魔法使いっぽい剣使いの眼鏡お姉さんはヒロインなのか…
ちなみにお姉さんは20代後半、主人公は13~14で顔はまだ子供っぽい(第五話 説明書(中編)参照)のでおねショタとも言えるかもしれない()




