第一話 転生
新作書きました。作者の書きたいものしか書きません(予防線)。よろしくお願いします(汗)。
「んん…?」
徐々に意識が覚醒してゆく。何故か妙に青臭い。視界に入ったものを見る。草。いや、面白いわけでもWの文字をここぞとばかりに並べ立てているわけでもない。葉緑素に満ち溢れ、朝露とともに酸素と負のイオンを吐き出しているっぽい雰囲気を醸し出している、リアル草だ。
「!!」
ガバッっと起き上がる。草原で寝ていたようだ。何故に草原なんかで寝ている?
手元に何かがある。それがなんであるのかを把握するのに、数秒を要した。いや正確にはそれがなんであるかはよく知っていたが、実物を見たのが初めてだったことと、なによりなぜそれがこんなところにあるのかがわからず事態を飲み込むのに時間がかかってしまった。
手元にあったのは革のトランクと「FAL」だ。ベルギーはFN社が世に送り出した、傑作自動小銃「FAL」。そう、銃だ。鉄砲。ライフル。なぜそんなものがこんなところにある?そもそも俺はなぜ草原で寝て…
ズキッと頭に痛みが走る。ああ、そうだ。俺は…
死んで神様にスキル貰って魑魅魍魎跋扈す剣と魔法の世界へレッツ以下略
転生した、ということか。
転生モノの作品を見聞きして前々から不思議だったが、人間の成体が突如出現するという事象はこの世界では一体どういう形で説明ないしは受容される、もしくはされているのだろうか。うっかり正直にぶちまけたら人体実験よりもおぞましい系の魔法実験に供されたりしないだろうな…
まぁそれはいい。いやよくはないがひとまず置いておくべきだ。少しだけ視界に違和感を感じるが、見えているものを確認する。かなり遠く(おそらく数km先だろう)まで行かないと森に行きつかない、見渡す限りの草原。それほど背の高い草なんかは生えてない、かなり見晴らしのよい草原だ。誰か何かがいればすぐに見えるし、逆に向こうもこちらを見つけやすい。それが味方ならいいが、敵であっても条件は同じだ。猛獣とか魔物なんか出てきた日には一瞬でこちらの居場所を知られることになる。足の速さで負けたら一巻の終わりだ。
こういう状況に、FALはなかなか向いているんじゃないかと思う。アサルトライフルよりは射程があるし殺傷力も高い。問題は気の利いたオプティカルサイトの類はなく、肉眼と銃に備え付けのアイアンサイトで戦うしかないことと、使い手のエイム力だ。スキルとやらがあるとはいえ未知数、ド素人が狙って中てられるほど、実銃ってやつは甘くはなかろう。そして双眼鏡すらない。「敵」のほうが目では有利だと考えるべきだ。
とするなら俺のすべきことはひとつ。周囲に最大限注意を払いつつ、そこまで背の高くない草に隠れて動く。つまり匍匐前進だ。いや出来るかド阿呆。
だが動かないにしても姿勢を低くしないと目立つので、とりあえずまた寝そべる。すると妙なものが視界に現れた。そっちのほうを向く…ために寝返りを打ってうつ伏せになると、実にらしいウィンドウがあった。Cock、匍匐前提かよ!推奨と書いて強制じゃねぇか!
確認する。
【目標地点まで移動せよ】
どうやらチュートリアルをやってくれるらしい。どっかの変態企業のゲームよりは有情なようだ。
メッセージウィンドウが消え、かなり離れたところ、草原を超えた先の森のあたりに白い点が出た。どうやらここが目標地点らしい。どこのFPSゲームだ。
さて、訓練なんぞ受けたことのない運動不足のヘタレオタクでは、匍匐していては何日かかるかわからないから歩いて行く。幸い周囲に敵影はないし、匍匐はいろいろ痛くなるし。
しかしこうしてみると、なかなか気持ちのいい草原だ。ここはどこかの高原だったりするのだろうか。遠景の山々がそこそこ近く感じられる。
変わり映えのしない景色を歩き続ける。最大限に警戒しつつ、最大限に急ぐ。ただ歩いているだけだが、かなり疲れ…む。
【敵が出現】
どこだ!?と思いつつも確認するより早く地面に伏せる。少しだけ頭を持ち上げて前方を見ると、森のあたりから何かが出てくるのが見えた。あれ、俺ってこんなに目よかったか…?
するとその何かのあたりに、三つの赤い矢印のようなものが立った。これはもしや…?
【発見した敵は赤いマーカーで表示される】
やはりそうか。しかしいよいよFPSだなこれ。最もゲームはゲームでも、命というチップを賭けた、現実という名の難易度=史実WW2大日本帝国のデスゲームだが。いや難易度それじゃ死ぬわ。
しかしどうしたものか、この距離ではFALを撃ったところでまず中るまいし…と、ここでFALと一緒に置いてあった革のトランクの中身を確認していないことに気付いた。今のうちに確認しておこう。徐々に近づいてきてはいるが敵はまだ遠くだし、こちらにまっすぐ向かっているわけではないな…よし。
直角になるほど大きく開けなければ草より高くなって目立つようなこともなさそうだ。恐る恐る開けると…
宇宙が広がっていた。いや、どうなってんだコレ。
【アイテムボックスを確認】
すかさずウィンドウが出てきて自己主張する。
どうやらこれは4次元ポケットの親戚のようだ。未来人謹製、安心安全のネコ型印なのかは知らん。中身はFALの予備マガジンが2つ、そしてスイスはSIG社製の拳銃「P225」と、その予備マガジンが4つらしい。らしいというのはこのアイテムボックスのウィンドウにそう書かれているだけで、影も形もないからだ。
とりあえずFALのマガジンを一つ、P225とその予備マガジンを一つ取り出そう…と思ったらトランクの中に出現した。まだ敵が近くに来ていないことを確認しつつ取り出す。
P225はP220という、自衛隊でも9mm拳銃として採用されている傑作拳銃の小型版である。ドイツ警察でP6として採用されていたほか、かの有名なFBIでも手の小さい女性用に使用されている。
そう、手の小さい女性でも扱えるくらい、こいつはグリップが細身だ。マガジンはシングルカラムで装弾数は今時の自動拳銃と比較するとかなり少ない8発。しかしそうであるがゆえにグリップを細くでき、手が大きくない人には持ちやすい。武器兵器の良さというのはカタログスペックだけで決まるものではないのだ。
とはいえ俺はそこまで手は小さくないので、別にもっと弾のいっぱい入る拳銃でも多分困らなかったし、そっちのほうが良かった。だがまぁ装弾数自体は自衛官の持つ9mm拳銃と一発しか違わないわけだし、その分全体としてコンパクトなことを思えば気にはならない。そもそもあるだけありがたいというものだし、何より俺はP225が好きだ。
しかしどうしたものか。ホルスターもタクティコゥなベストも何もない。予備のマガジンなんてどう持てばいいんだ。
敵が徐々に近づいているので、FALのマガジンは閉じたトランクの上に置き、P225のマガジンはポケットへ。P225は…仕方がない、ベルトで挟もう。
とここで今持ってるFALとP225に弾が入っているのか確認していなかったことに気がついた。危ない危ない。とりあえずマガジンを抜き、弾が入っていることを確認。銃本体に装填されているかを確認し――されていなかった――マガジンを戻しチャージングハンドルを引く。これであとは安全装置を解除し引き金を引けば弾が出る状態だ。
P225も同じ要領で同じ状態であることを確認し、こちらはマガジンを戻した後スライドは引かないでおいた。大丈夫だとは思うが、ホルスターに入れられないから暴発が怖いのだ。
P225をベルトに差し込み、さぁいよいよ戦闘だ。敵もすこしズレた方向へ向かってはいるが、だいぶ近づいてきた。このままでは敵の嗅覚で悟られるような可能性があるかもしれない。
【敵を排除せよ】
なかなかに過激なことを言ってくれるウィンドウが、いよいよ戦闘だぞと嫌でも緊張感を高める。
300mほど先、三体の敵がいる。人型、子供くらいの体躯だが子供のようなちんちくりんさのない引き締まった身体に纏うのは襤褸だけ。その手には雑多な凶器を持ち、緑色の肌が生理的嫌悪感を齎す。何より一目で尋常の生物ではないとわかる禍々しい気配、あれは…俗にいうゴブリン、か…?
こちらはうまく草むらに隠れてはいるが、こちらから目視で見える以上いつ向こうに見つかってもおかしくはない。引きつけるのでは撃ち漏らした時ヤバい。しかしこの距離から撃ってもまず中らないだろう。どうしたものか…
Q.P225って何?P226じゃなくて?
A.作者の趣味。
こんな感じに登場武器兵器も基本的に作者の趣味が全開なので、文句は受け付けません()