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クロとシロ

“いつまで寝てんのよ”


強く揺すられて、眠っていたことに気付く。

もう朝だ。

昨夜、雨に打たれたことですごく疲れたんだろう。

寝起きの目を瞬かせて、黒い子猫を見る。

子猫の目に、もう鋭さは残っていなかった。


“おはよう、…えっと”


何と呼んでいいか分からず言葉に詰まっていると、子猫は名乗った。


“わたしはクロよ。…ご主人には、そう呼ばれてた”


黒猫だから、クロ。

単純だけど、シンプルで覚えやすい名前だ。


“とっても素敵な名前だね”


“そんなことないわよ”


クロは照れたように、右手で顔を洗った。


“あなたの名前は?”


“ごめんね。僕はもう、名前を忘れちゃったんだ”


“…ふぅん”


クロは興味なさげに相槌を打つと、本格的に毛繕いを始めた。

僕は何をするでもなく、風に吹かれていた。

昨日は取り乱していたけれど、今はもう大分落ち着いているみたいだし、僕はそろそろ行こうかな。

ちょうど、そう思っていたときだった。


“シロ”


クロが呟いた。


“何?”


“シロでどうよ、あなたの名前”


“白猫だから、シロ…?”


さっきまで黙り込んでいたのは、それを考えてくれていたのか。

いつもは、猫が自分は捨てられた、と受け入れたら、そのまま離れるんだけど。

何だか、離れがたくなっちゃったな。

僕がそんなことを考えていると、クロは不満気に僕をチラリと見た。


“単純で悪かったわね。何よ、気に入らない?”


“い、いや…”


僕は喉をゴロゴロと鳴らした。


“すっごく、嬉しいよ”


“…あっそ”


クロは大きく伸びをして、立ち上がった。

尻尾がピンと立っている。

猫の尻尾が立つのは、嬉しいときだ。


“で、これからどうすればいいのよ”


“そうだなぁ…。まずは、トラに挨拶かな”


“トラ?”


“ここら辺のボス猫だよ。知り合いになってる方が野良では生きやすくなるから”


“ふぅん、面倒だけど、仕方ないわね”


クロはチラリを僕を振り返る。


“案内してくれるんでしょ?”


“もちろん”


僕も立ちあがって、クロの隣に並ぶ。


“名前、本当に嬉しいよ。何だか、クロとシロって対みたいだよね”


“…チッ”


“えっ、舌打ち!?僕らってそんな器用なこと出来たんだ!?”

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