うどんをすすろう
荷物を車に乗せるととんぼ返りするようにリゾートウォークの専門店街、その中のうどん屋に入った。
どうも099号機はたぬきうどんを食べたいようだ。そう言えば冬のアラート前は俺もよくたぬきうどんを食べてたな。IFFアンテナの件もあるし、彼女、俺の影響受けすぎなんじゃないかって思うのはかなり自意識過剰か。
店に入ると一ノ瀬三尉がたぬきうどんを3つ頼み、099号機と俺は同時に唐揚げを1人前ずつ頼んだ。
「なんか、行動を見るに玲子さんの行動パターンは風見さんを中心に組まれていますね」
うどんをすすって、考える。こいつも同じこと考えてたか、どうしても俺と099号機の行動がそっくりすぎるもんな。
「だって私、アテネさんの愛機と言っても問題はありませんもん」
「うん・・・うん?そうか?」
空自のパイロットは固定の機体に乗るわけじゃなくてアサインされた機体を借り受けて乗るのだが、確かに言われてみれば099号機とは星の迎撃の時に命を助けられたり、アグレッサーとの演習で独り勝ちした時もアサインされていた。
そんなものか?と思いながらもいつもの癖で唐揚げを掴み、うどんに浸す。
「やっぱり2人は同じ動きをしますね」
「うん?そうか・・・あぁみたいだな」
「へ?あれアテネさんも唐揚げ浸すんですか・・・」
心底不思議そうに語る一ノ瀬三尉がお茶を飲み干しながら指摘した。
俺が唐揚げを掴んで浸すのと同時に横に座っていた099号機も浸していた。まったく行動が同じである。
何だよこれ、ドッペルゲンガー現象かよ。なんでこうも行動のタイミングまで同じなんだ?
「俺、この癖・・・誰にも話したことないんだが」
「あれ、先月の中ごろにアラートハンガーで整備士さんと雑談してませんでした?」
099号機にそう言われ、思い返すと確かに言った気がする。だがその一度だけのハズ、しかもその時の乗機は099号機、やっぱりこいつ099号機なんだな。
「そうだ、名前の件、どうされるんです?」
「名前、あっそうだアテネさん決めてくださいよ!」
せかされると言葉が詰まる。まだ決まったわけじゃないのだから。でも気負う必要もないのだ、なのにどうしても自分の気持ちに反する話をしたくない。
「名前、な。機体ナンバーじゃなくて機体名で呼ぶってのはどうかと思ったんだ」
無言の重圧が続いた中、意を決して話す。すると素っ頓狂な声が横から飛んできた。
「つまり、イーグルって呼ばれればいいんですか?」
「いいや、それを決めるのは君次第よ、という話です」
補足するように語る一ノ瀬三尉の言葉で一通り落ち着き、湯呑を持つ。