下着を買おう
顎に手を当てながら、窓際に肘をかけて窓の外を流れる風景に身を委ねる。移り変わる風景は、人の生活という雰囲気を感じさせてくれた。スマートウォッチを操作して脈拍を計る。結果の数値が出るまで深呼吸をしてリラックスさせる。結果がアラート音と共に表示される。液晶をタップして表示を消しつつ、ため息を吐く。少し早すぎるな・・・
それに査問の疲れも今になって響き始めて・・・疲れが出てきている。
「アテネさん」
肩を揺らされて起きながら、周りの風景を確かめると僅かに時間が飛んでいた。どうも寝ていたらしい。脈拍が早いまま寝れるというのは大層だが、もっと健康的な生活をしたいな。そうしないとパイロットからも降ろされてしまう。というか物品損失の責任を被るなら飛行停止とかもありうるのだろうか、一応明日も勤務が入っているからその時に命令は下ると思うが、何もかも事情が初めてな物で上手く事が進んでいない。
ゆっくりと息をつきながら、車を降りた。
一ノ瀬三尉が背中を小突きながら、モール施設「リゾートウォーク」に足を踏み入れていく。夕方の人波に押されないように099号機の腕を軽くつかんでこちらに寄せると、彼女は顔を俯かせた。変なことした気持ちになるからやめてくれ、と思いながらも口には出さない。
デパート棟になっている場所の階段を降りると衣料品売り場に出た。
「風見三尉、玲子さん、まずは下着類ですね」
「俺は外で待ってるわ」
流石に下着まで俺が責任を持つことはないだろ、なんのために一ノ瀬三尉を連れてきたのか理由がなくなる。
下着売り場に歩いていく2人を送り出しながら隣の紳士下着エリアで下着を見ながら時間を潰す。
そしてふと思い出す。
結局寝床は今日中に何処かに用意するんだろうな、そうでもしなきゃ俺が部屋を明け渡さなきゃいけないぞ?ゲストルームを使うなんてことはできないから廊下の固い固い廊下で寝ころばなきゃいけない、まぁどこでも寝ようと思えば寝れるから問題はないが明日の勤務に異常が発生しても困る・・・っていうか明日の飛行用機材も099号機じゃねぇか!
こういう時に099号機がC整備にでも入っていてくれればよかったと思うが今の彼女は人間だ。彼女と言っている時点で八割人間であるが。それにしたって自称戦闘機なのだからして、なお扱いに困る。現状彼女を人間だというしか方法はなくて、また同様に彼女が099号機であるとも認めるしか現実はないのだ。今から頭が痛い。それに加え、頭に残っているのは彼女が傍に用意していた機械。あれを思い返すと、嫌に寒気がするのだ。
詳しく見ていなかったが、ノズルが後ろに2本、エアインテークが2つ、尾翼が2本生え、主翼がデルタ翼で伸びていたような気がする。全部気がするだけなんだが、嫌に記憶に残っている。
まるで戦闘機の要素を機械に詰め込んだような・・・そんなような機械だったような気がした。なにも根拠はないのだが。あれがもしかしたら装着すれば飛行できたり・・・なんていうのはSFの読み過ぎかな。
あーもうやめやめ。変なこと考えたら心拍数上がった気がする、慣れないことなんてするもんじゃない。
頭を振ると、大きくため息をつきつつ、丸刈りに収めている髪の毛を触った。じょりじょりした感触が不安を少しだけ消してくれたような気がする。