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イグ恋!-愛機のF-15が美人になっていてー  作者: 室内あるみ
第四話「結成!特殊飛行班」
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発光物体とエンゲージ

 スロットルをゆっくりと、けれど力強く押し込む。

 加速度で体がギュっとしまり、シートのヘッドレストに頭が押さえつけられた。目の前一杯に雲が広がり、機内にエアシステムの音が鳴り響く。呼吸音が響く中、操縦桿をゆっくりと押し、風に乗った機体が頭をさげるように風下に落ちる。速度を上げつつ、高度をホールド。バイザーを上に持ち上げるとそこは雲の中。白く薄い雲を切り裂くようにジェットの轟音が轟く。

 操縦桿を適度に握りながらスロットルを引いた後、モニターのボタンを押してマップモードを天気に切り替える。

 サーチを掛け、雲量を改めて表示したモニターをもう一度切り替えると偵察用ポッドのカメラモードを表示した。トリガーを握ればすぐさま撮影が開始され、那覇基地から上空待機しているE2C早期警戒機にLink16で送信され逐一衛星を経由して防衛省まで報告される。

 雲が近づくにつれ、横風が強くなり機首をボールクラッカーが振り回されるように振られた。スロットルを押し出し、雲を突き抜けるように交差した瞬間。

「なんだ!」

「アテネ、ガンカメ!」

 鍛え上げられた動体視力が雲の中に光り輝く物体を捉えた。

 跳ねるように反応した指はマスターアームを選択していないトリガーを引き、腕をキャノピーに押し付けて後ろを首を回して確認する。Gで首が押し込められながらも、操縦桿を引いて機体をロールさせ、キャノピーの後ろ端に物体を入れた。

 キャノピーを抑える左手を動かし、マスタアームを切り替える。

 ロールの天辺、背面飛行に入ったところでJHCMSのバンドが当てられたヘルメットの周りを押して簡易HMDヘッドマウントディスプレイのバイザーを降ろすと、すぐさまにサイドワインダーをロック、機首を下げつつ、視界の端から内側に入れてロックボックスが広がる。

 トリガーを半押しのまま長押し、ロック音が無線に鳴り響いた。

 相手が航空機なら回避行動をするはずだが?

 相手はどうか、徐に動き出し、雲の中に隠れる。

「追いかけますか!」

 旋回を終えたゴールデンイーグルの機内で、ロックが外れサーチする音が鳴る。手を出せないまま謎の物体は高速で視界から下に向かって消える。

「ロック外れました!」

「偵察ポッドで捉えた!上昇して雲に行く!」

「追いかけます!」

 操縦桿を横に倒し、コクピットから横流しに風景が流れた。

 スロットルを押し出し、トリガーから指を離す。

 加速する機体、一気に上昇へと切り替わり、ベルトに体重ごと押し込められる体が射出座席に押し付けられた。

 体の呼吸が止められ、視界が真っ黒になる。

 謎の物体が発光したまま一度上昇した後、一目散に雲へと飛び込んでいく。

「ロック入れていいですか!」

「この動きの時点で民間機じゃない!一旦入れろ!」

 隊長がそう叫んだ瞬間、視界の中に逃げる物体を映す。無線に報告を入れていた隊長は驚いたような声を上げつつも、冷静に敵の位置を確認して報告した。

「また光りました!」

「避けろ!」

 操縦桿を引く。機体が横に向き、機首を引き、ベイパーが伸びる。

「コントロール、宮古空港から南東に10キロ、5000メートルの上空で謎の発光体と交差!」

 今、宮古空港とその周りの空域は封鎖されているハズ。飛行機なら飛んでいるはずもなく。そして、宇宙ゴミならありえない上昇を行った。ありえそうな可能性を全て否定した謎の物体は、光ったまま、雲に突っ込む。雲の中で、視界が真っ白に染まる。が、サイドワインダーはロックされる。

 HMDの高度スケールの中心に映った発光部分の高音がロックボックスに入った。

「ロック、入りました!ガンカメラに入ってます、入ってますよねっ?」

 確かめるように聞くと隊長は首を引き締められたような状態で応答する。

 気づけば、発光体を追いかけながらオーバーGに入っている。

「入った入った!偵察ポッドでも撮影できてる!」

 スロットルを引いて、操縦桿を抑えた。ガンカメラの中心に捉えたまま、機体を滑らすように物体の後ろまで下げると。呼吸が戻る。

 筋肉の収縮が収まると頭がガンと引っ張られるように感じた。

 トリガーを引いてガンカメラの撮影を行いながら、機首を下げ、水平飛行に移ると物体は再び光る。

「また光った!」

 そう叫ぶとその1秒後にあっけに取られた。

「消えた?」

「下です!」

 呆気に取られるが、それもあくまで一瞬。ロックボックスが下に落ちたのを見て、物体が降下したと叫ぶ。

 コクピットの中で鳴り響くアラート。ロックが外れ、虚しい感情と警告音だけが胸に残る。

 一瞬、周りを見回す。

 1秒、レーダーの表示を見る。

 物体は見えない。レーダーの反応も出ない。

 5秒経った、焦る。

 10秒、雲の中。ミルクをこぼしたように真っ白で前か後ろかもわからない。相手が敵だったら、今すぐ撃墜されて間違いない。

「旋回してさっきの空域戻りますか?」

「おう、一度ターンした後、帰投しよう」

「了解」

 スロットルを押して滑らかに加速しながら右に旋回する。

 雲の切れ間に入ると、一瞬だけ視界の端に光が入った。

 まさか、もう一度光った?

 そう疑うと体はすぐさまに反応し、操縦桿を引いていた。機首が上がり、機体が踊るように旋回する。

 光が雲の切れ間で屈折した。割れたガラスのような皮がついた岩石が、光を覆ったように前に現れる。スロットルを引き、エアブレーキで減速しながらガンカメラで撮影した。

 その時だった。

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