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イグ恋!-愛機のF-15が美人になっていてー  作者: 室内あるみ
第四話「結成!特殊飛行班」
35/50

防衛部長は意外と優しかった

 小牧三佐に連れられ、基地の会議室に入ると様々な人間がいる中の部屋の中心にある椅子に座らされた。

「さて風見三尉、君が呼ばれたのは他でもない。君の将来に関する話だ」

「はい」

 椅子に座った俺に向かって正面に座る小牧三佐が話を切り出す。周りの人間たちも頷いているが、三佐は徐に立ち上がると会議室のテレビの電源を付けた。

「防衛大臣、嵯峨原君」

「航空自衛隊、F15、099号機用途廃止について、防衛装備庁からの資料を用意してあります。お手元をご覧ください」

 テレビの中で始まったのは国会の生中継、常会の様子。

 答弁に立っているのは防衛大臣の男だ。マイクに向かって顔を突き出すと、饒舌に語っていく。

 曰く、099号機は事故が多かった機体であること。

 改修でアイソトープを掛けた時には異常がいくつかあったこと。

 先日のスクランブル待機中に動けなくなったこと。などが羅列されていく。この中継は食堂でイーグルも見ている。イーグルとある程度仲が良くなった整備士連中と仲良く見ているはずだ。

「よって099号機は維持費がかかりすぎると判断し、用途廃止とすることにいたしました」

 ここまで流したところで、小牧三佐はテレビを止め、会話に戻した。

「さて、099号機の処理は完了した。しかし、未だ懸案もある。それが風見三尉、君だ」

「風見三尉はF15MJの099号機、通称イーグルの人格形成及び人型変異に深く関わっており、今後も同様のケースが見られた場合の処置が難しいことから、こう処理することにした」

 防衛省のお偉いさんが指揮棒を持って語る。所謂参謀である幕僚の彼は、今回の秘密作戦の作成に関わっていた。

「F15Jの操縦ライセンスは維持したままの、309からの除籍、及び、那覇基地特殊飛行班への配置を命ずる」

 特殊飛行班、それがイーグルを運用する部隊の新しい名称なのか。そして俺がそこに左遷される。

「特殊飛行班は飛行開発実験団の隷下に入り、人型特殊飛行機であるイーグルの運用を担う」

「風見三尉には、人型特殊飛行機の人格形成者として、主に飛行のバックアップ及び前線指揮を行ってもらうがここまでに質問は?」

 首を横に振る。ここまでは予定通り、茶番も茶番。隊長から知らされていた情報通りの進み方だ。

「よし、質問はないようなので続ける。第9航空団第309飛行隊隊長宇月譲一等空佐は本日をもって、特殊飛行班司令に着任、他の人員として那覇基地警備科より一ノ瀬玲子三尉が警備責任者として配備。現在4名の人員でもって、これより下地島基地へ臨時で進出せよ、以上」

「下地島?!」

 思わず跳ね返るように椅子から立ち上がり、質問の許可ももらっていないのに声を上げてしまうが誰も咎めない。小牧三佐は注意することなく、肯定だけして、目線で俺を座らせる。

「そうだ」

 とんぼ返りじゃないか。今朝、下地島からC2で帰ってきたのに、この後すぐまた飛べというらしい。

「下地島を今後はホームベースとする、それだけは既に決定している。第1格納庫を自衛隊が間借りする形だ。機密保持をしっかりするための対処でもある。宇月一佐は飛行開発実験団に現地設営の指示を行え」

「了解」

 幕僚の男に隊長が敬礼をする。

「一ノ瀬三尉」

 小牧三佐が入口に向かって声を掛けると、すぐに一ノ瀬三尉が入ってきた。

「下地島に前進し、以後人型特殊飛行機の警備に当たります」

「ご苦労、本日中に那覇基地を出る用意をしてくれ。寮はあちらに用意してある」

「了解、警備体制の確認に入ります」

 入ってくるなり、素早く敬礼をした一ノ瀬三尉は、「ご確認ください」と言って手元にあったファイルを幕僚に提出する。

 受け取った幕僚は、頷くと手短にそれを読み流し、閉じると一言だけ語る。

「完璧だ、一ノ瀬三尉。流石防大主席だ」

「恐縮です」

 小牧三佐と幕僚の男は三尉に答礼すると、今度は俺に振り返ってきた。

「風見三尉、下地島に寮を用意させてある。今日中にビジネスジェットを飛ばすのですぐに私物を纏めたまえ」

「了解」

 礼をすると、小牧三佐が懐かしむように頷く。

「風見、お前はパイロット連中と仲が悪かったが、腕が悪かったわけではない。今後もライセンス保持のための飛行は飛実よりも309を借りられるように便宜を図っておく」

「ありがとうございます!」

 思わず椅子から立ち上がり、感謝の言葉を述べてしまう。

 だが再び咎められる事もなく、むしろ流れが良いとそのまま退出を促される。

 敬礼をすると、答礼を受ける。

 退出すると、三尉が話しかけてきた。

 呼び出されるなり呼吸が止まりかける。鼓動がドキドキしていた俺は、ようやく落ち着いたと思った瞬間に話しかけられたものだから、驚いて仰け反ってしまった。

 それを見た三尉は面白そうにコロコロと笑う。

「なんだよ」

 不機嫌になりながら、口を尖らすと更に面白いとばかりに笑ってくるのに流石にイラっとして声に出す。

「だって、ずっと、びくびく、してて」

 笑いつつ、途切れ途切れに声を上げる三尉にイライラが溜まる。手を握りしめてプルプル震わせてしまう。

 何を面白がっているんだ。こちとら知らされているとはいえ、もしかしてそれが覆りでもしていたら免職でもおかしくなかったのだ。ビクビクもするだろう。

「さぁて、準備してきましょう。私物纏めないと」

「あ、そうだった」

 自分の私物は、本来の性とパイロットになってからの習慣になった断捨離のおかげで一気に減ってはいるが。それでもやっぱり全部となると流石の量になるのだ。

 あちらに寮を作るというのだから、当分は帰ってこれない思って用意した方がいいだろう。

 三尉はイーグルを迎えに行くと言って、そこで別れた。俺は荷物を取りに自分の寮舎に足を向けた。

 独身幹部寮舎の俺の部屋の中は、閑散としている。ベッドとその周りの動線でモノを取れるように配置しており、最低限のものも、仕舞われていたからだ。

 デスクの引き出しから本や筆記用具を取り出し、タンスの中から出したボストンバックに詰め込む。服も、衛生用品も袋に仕舞い、ボストンバックに入れると、更に部屋の中は閑散としていった。

 スマートウォッチなどの充電が必要なモノもコンセントを抜いてバッグの中に入れる。

 全部モノを仕舞うと、部屋を確かめ、カギを締める。そのカギを寮監に手渡し確認されると、ようやく俺が2年過ごした寮を離れるということに気が付き、寂しいような、何とも言えない気持ちになった。

 そうだ、ここを離れるということは俺がイーグルドライバーを辞めるぐらいの出来事がなければ起きない事だったのだ。初めて寮の部屋に入った時、喜んだことを思い出す。自衛隊に入って初めての一人部屋だったのだ。若い子供が自分の部屋を作ってもらって喜ぶような純粋な喜び、今はどうだろうか。その部屋がなくなると思うとなんだか寂しいだけ。子供が大人になったようなものか。

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