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イグ恋!-愛機のF-15が美人になっていてー  作者: 室内あるみ
第三話「テイクオフ」
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エンジンスタート

 イーグルの腰についたアダプターに機械の根元が合体される。機械のはまった音がすると、技術者の一人が「起動したぞ!」と叫んだ。技術者たちが集まって機械のセットアップを始めると意外にも事は順調に進み、ついにはエンジンスタートまで漕ぎつけてしまった。

「宇月一佐の言う通りでした。本質は変わっていない。セットアップもスクランブル前の那覇基地で止まっていました」技術者がそう隊長に耳打ちする。

 隊長は椅子に座りながら顎に手を置きながら、ガムを噛んで考え込む仕草を見せながらも、起動してくれと物事を進ませた。

 隊長の仮説は当たっていたのだ。イーグルは、F15MJ099号機としての本質に変わりはなかった。那覇基地に所属していてINSの数値もアラートハンガーの位置で記憶されている。機械でも、そして人間でもあるという相反しなければならない事実を併せ持った謎の生物ということが生体電流の計測からも導かれた。本質には変わりはないが、肉体は合金ではなく、人間の肉体に代わり、思考も人間のように脳で行っている。謎は深まるばかりであった。けれど機械がF15MJを模しており、整備の互換性があること、機械の中にはAPUがあるということ。おそらく燃料にJP4が必要だということ。そのあたりの隊長の仮説は見事に的中していた。

 技術者たちはイーグルの周りに付けた計測機器を取り外して、整備士に身柄を引き渡す。

 今度は整備士たちが駆け寄ると、F15を始動させるような手順を取り始める。イーグルの前に整備士が立ち上がり、ライトエンジンスタートの指示を出すと、格納庫内には風が吹きすさび始めた。

 そして隊長と俺は立ち上がってしまう。イーグルドライバーには聞きなれているエンジンの警報音がなったのだ。

「窓とハンガードアを開けろ!インテーク前退避!」

 隊長のすさまじい怒鳴り声で整備士たちは雲を散らすように退避した上でジェットの勢いでハンガー内の機材が壊れないように、前と後ろのハンガードアをあけ放つ。

 ジェットエンジンの勢いで空気が流れる中、レフトエンジンもスタートされた。

 2基のミニチュアともいうべきF100IHIエンジンは出力を65パーセントまで上昇させると、今度はノズルの先から青い炎が出始める。技術者たちは悲鳴を上げた。

 ジェットエンジンの轟音がイヤーマフの上からも聞こえてくる中整備士たちは冷静に各部のチェックに取り掛かり始める。

 腰から展張されたデルタ翼の下の武装ラックにはAIM9を模した模型が展開され、ドロップタンクも空間から表示された。もう驚くことばかりしか起きない。何もない空間から短距離ミサイルと増槽が展開されたので、隊長は腰を抜かした。技術者の一人が実験を中止させると叫ぶと、整備士たちは、帰投時の整備の要領でエンジン停止の指示を出す。イーグルはやはりともいうべきか、本質は変わっていないからか素直に操作方法を実施してエンジンを停止させた。

 ハンガーに静けさが訪れた中、俺は隊長の腕を掴み立ち上がるのを助ける。

「隊長、大丈夫ですか」

「あぁ、でもイーグルちゃんは予想以上にF15MJだぞ・・・」

 こんな状況で腰を抜かしたにも関わらず研究者根性丸出しの隊長に呆れながらも、ほぼ俺も同意だった。あの機械が空を飛ぶだけの機能を持っていても驚きだったが、武装も懸架していたのだ。それはつまるところイーグルに戦闘能力があるという事実なわけで、人が戦術兵器となりうるとんでもない事実なのだ。

 機械の整備に移った整備士たちが、懸架されていたミサイルと増槽を取り外し、付けられた固有ナンバーを読み上げている。その数字はやはり那覇基地に運ばれていたもので当日に懸架した記録が残っていた。

 エンジンを停止させたイーグルはアダプターを外すとこちらに向かって歩いてくる。

 一つため息をついてから出迎える用意をした。

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