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イグ恋!-愛機のF-15が美人になっていてー  作者: 室内あるみ
第二話「俺はイーグルドライバー」
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この気持ちは御せない

 コックを捻ると水が飛び出す。

「つめてぇ」

 思わず呟くと、体を震わして温度を上げて待つ。

 水が体をしたたり全身を冷やし、頭の頭痛に響き始めた。頭に残る今日一日の大騒動。朝のスタンバイから始まり、イーグルが人間になり、査問が昼間を潰して夕方は荷物持ちに、イーグルの最後の言葉。ぐるぐると思考が周り、頭に熱を浮かばす。

 段々とお湯に切り替わっていく。もういいだろうとコックをさらに捻ると勢いよくお湯が飛び出してきた。体中の垢を流し落とすようにかけ流しながらボディーソープで体を洗う。

 一つ、ため息。

 頭に手を回し、頭皮を擦りだすと誰かがシャワー室に入ってきたようで入口の摺りガラスドアが開けられる音がする。

 二つ目の、ため息。

 今日は色々あったし、なにより疲れた。けれど、イーグルの最後の笑顔を見た時のことを思い出すと自然と笑いがこぼれ、心が晴れ晴れする。

「私の名前は、イーグル!です・・・」はにかみながらそう言った彼女の笑顔を思い浮かべるとなんだかモヤモヤした。

 俺がその笑顔を曇らして・・・でももう一度笑わせることができたんだよな。

 一度の後悔。そして喜ばすことのできた感動、今日だけで心の変動も大きく感情の運動で脳が疲れた。けれど、最後にあの笑顔を見ることができたという事実が大きく心の中で光っていた。

 もう一度でも、いや何度でもいい。あの笑顔を見たい。そう思ってしまった瞬間恥ずかしくなって頭皮を擦る手を早くする。何だよ今の気持ち・・・なんか若返ったみたいで、なんだか不思議な気持ちだ。まるで高校生や思春期の男子のように思考を女子に振り回されることを自覚すると更に恥ずかしくなって、お湯のコックを捻る腕に自然と力が籠った。

「あぁーもう。なんなんだよ。今日は」

 今日だけで色々ありすぎて、ひたすらに疲れた。なのに、心のどこかで高ぶる気持ちがあって、お湯をぶっかけてただもう滅茶苦茶に今の思考を流したくて、けれどこの高ぶりを止めたくなくて。

 そうやって葛藤している中、後ろから声を掛けられた。

「お疲れさん、アテネ」

「おす、コブラさん」

 同じイーグルドライバーで3年先輩にあたるコブラだ。今日もバディを組んでスクランブル待機に入っていたけれど、今日一日の疲れを彼も流しにきたらしい。

「今日のスタンバイ、どうなった?」

「あー中国機の奴な。ベイルアウトしたみたいで空母の艦載機を海保のヘリが誘導して一件落着。相手のDD(駆逐艦)の艦載機が回収した」

 そうか、よかった。ベイルアウトできたんだな。一体どんな事故があったのか知らないが、EEZ周辺の微妙な空域だし、領空侵犯してない限り敵なわけでもないし。命が助かればよかったって思うのが俺たちの本音だ。たまに過激派が相手のパイロットを思わない事を言うが、こちらとしては有事でもない限り、良い友人として彼らと接したい。そんなにイライラして気を張っていたらパイロットなんてやってられないんだ。

 シャワーヘッドを置き、コックを反対側に捻った。

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