魔法と大空の義賊
ベルンの町、そこはまるでRPGの世界の町のようだった。
武器屋に防具屋、それに酒場、教会まである。そして海もあった。僕は改めて地球ではない、別の場所にいるのだと実感した。
「大空の義賊のアジトはこの道をまっすぐ行ったとこにある。もうちょっとで着くからな!」
マクレーモさんがそう言った。僕は大空の義賊とやらについて質問してみた。
「大空の義賊ってどんな事してるんですか?」
「主にこの町や近隣の島から依頼を受けているんだ。依頼の内容は様々だ。モンスターの討伐やら、賊に誘拐された子供の救助や賊の殲滅だな!俺らはそれらの報酬で生活してるんだ」
結構重労働であった。どうやら命がけの仕事が多いようだ。
「けど俺らにはもっと大きい、別の目的があるんだ!けどそれにはまだ人数が足りない…おっと、もう着いたぞ!」
目の前には小さなウッドハウスがあった。そこには大空の義賊という文字と風をモチーフにしたロゴが彫られた看板があった。
因みに言葉と言語、その他諸々のことはカプターに来る前に狭間の番人にインプットされている。
僕はマクレーモさんが言っていた別の目的について気になっていたが、とりあえず中に入ることにした。
「ライトさん!今帰ったっす!」
「…遅かったな、ところでそいつは誰だ?」
マクレーモさんがライトさんと読んだのは、とても綺麗な女性だった。茶髪のショートカットで身長が高く、胸もそこそこ大きい女性が奥の席に腰掛けていた。多分、僕が今まで会ってきた女性の中で一番美しいと思う。
「こいつ、違う星から来たみたいなんす!モンスターの討伐の途中に見つけたんです!」
「し、東雲凪です、よろしくお願いします」
綺麗な女性を前にすると緊張してしまうのは本当にどうにかしたい。
「そうか、私はライト・オールだ。この大空の義賊の団長だ」
「それで、こいつにライトさんの知ってる情報を教えてやって欲しいんすよ」
「わかった。ナギはワールドリンクを通ってやって来たんだな?」
「はい、そうです。ワールドリンクの事、ご存知なんですね」
「あくまで、私の家の伝承だったのだが、まさか本当に存在するとは」
凪はライトさんとマクレーモさんにここまでの経緯を説明した。
「つまり、ナギ以外にもそのルカという女の子がいるということだな?」
「はい、そういうことです」
「そしてお前のはその子に惨めに守られて今こうして生きているんだな?」
「はっ、はい、そうです」
僕は俯きながらそう言った。この人の言葉は厳しいが、言っていることは正しい。
「だったらお前のやる事は二つだ。まずそのルカという子を探すこと。そしてワールドリンクに繋がる扉の鍵を探す事だな」
それでもライトさんは親切に僕が取るべき行動を教えてくれた。
「そこで私からの提案なのだが、ナギ、大空の義賊に入れ」
突然の提案に僕は、驚いていた。
「は、入れって…」
「おっそれナイスアイデア!」
すかさずマクレーモさんが賛成してきた。
「私の家の伝承だと、ワールドリンクから来ることを星渡りと呼ぶのだが、星渡りをして来たものは皆、チートのような、あり得ない力を持つそうだ。お前が入ってくれれば戦力の増強にもなる」
なるほど、違う星から来た人はやはりみんなチートのような力を持っているのか。なら僕もものすごい力を秘めているかも。
「それに、ルカはお前が来ていることを知らないのだろう?大空の義賊が有名になれば、お前も有名になる。逆もまた然りだ。そうなれば、向こうにもナギがこの星に来ていることが分かって、向こうからも会いに来てくれるかもしれない。我々も今、仕事や仲間を増やすために名声が欲しいからな」
なるほど、つまり、僕と大空の義賊はウィンウィンの関係を築けるということか。
「そういうことなら、ぜひ!」
「よっしゃ!そういうことならまずは強くならなきゃな!」
「早速特訓だ。まずはこの紙に自分の手をあててみろ」
そう言ってライトさんはA4サイズくらいの紙を取り出した。
「この紙はな、身鏡の紙といって、自分の持っている魔法とスキルを教えてくれるものなのだ」
「魔法とスキルって何が違うんですか?」
「魔法は知ってる通り、己の魔力を使って技をだすものなんだ。大体1〜3つ使える。魔法には熟練度があって、1〜10のランクがあって10が最高だ。
熟練度は上がれば上がるほど強いがその分、なかなか上がりにくくなる。
それに対してスキルは魔力を使わない、常時発動している能力のことだ。主に身体強化系とか魔法強化系が多いな!因みに熟練度は無い。そして大体1つしか使えない。試しに俺の能力を紙に写してやるよ!」
そう言ってマクレーモさんは紙に手を当てた。すると、紙に文字が浮かび上がってきて、こう書いてあった。
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マクレーモ・トカ(男)
魔法:アクセルフット 熟練度10
足が少しだけ速くなる。
熟練度上昇により速さ向上。
スキル:身体強化、目
視力、及び動体視力の向上。
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「ざっとこんな感じだな!」
マクレーモさんは得意げにそう言った。
「では次は私もしておこう。これから所属するチームのリーダーの能力も気になるだろうしな」
今度はライトさんの能力がお披露目されるようだ。
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ライト・オール(女)
魔法:風魔法 熟練度10++++++++++
風を起こしたり操ったりできる。
熟練度上昇により威力向上。
スキル:限界突破
熟練度の上限を無視することが可能。
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なにこれ、チートじゃん。熟練度って10までじゃないのかよ…あっでも、違う星から来た僕はこれ以上にチートの能力を持っているのか⁉︎
「さぁ次はナギ、やってみろ」
ライトさんは僕に身鏡の紙を渡した。
いよいよ僕のチート能力お披露目だ。
(二人の驚く顔を見せてもらいます!)
紙に文字が浮かぶ。僕は期待に胸が踊る。
しかし、徐々にその顔は引きつっていった。
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東雲・凪(男)
魔法:武器召喚 剣 熟練度1
武器を召喚できる。
熟練度上昇により、武器の能力、召喚で
きる武器の種類向上。
スキル:絶対志願
思いの強さにより、不可能を可能に
することができる。非常時発動型。
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なんなんだ、これは。武器を生み出す魔法?
(それ魔法の意味ないじゃん!武器ぐらい買うよ!)
「まぁ、魔法はダセェけどよ、元気出せよ!俺も最初はそうだったけどよ、ライトさんとの修業でここまで強くなれたんだぜ?」
マクレーモさんはそう励ましてくれた。そうだ、マクレーモさんも魔法はショボいけどあんなに強かったじゃないか。僕だって強くなれるんだ。チート能力じゃないからなんだ、ここから這い上がってやる!
「お前、さっきの話の中で最初は鍵に選ばれなかったって言ってたな?」
突然、ライトさんが話を振ってきた。
「はい、それが何か?」
「多分本来ならお前は鍵に選ばれなかったんだ。だからチート能力じゃなかった。しかし何故か後になって選ばれた。多分それの原因はこれだろう」
そう言いながら、僕のスキル欄を指した。
絶対志願、思いの強さにより、不可能を可能にする。
「多分、お前のルカを助けたいという思いが鍵に選ばれるという不可能を可能にしたのだろう、つまり、お前は鍵に自分を選ばせた」
確か、そのようなことを狭間の番人も言っていた気がする。
(そうか、このスキルが僕をここまで連れてきてくれたんだ)
「大丈夫。この思いを忘れなければ、どこまでもお前は強くなれるんだ。それを忘れるな。強くなって、生まれ変わった自分をルカに見せてやれ!」
ライトさんの言葉は僕の脳裏に焼きついた。そうだ、絶対に強くなってやる!
「ライトさん、僕に修業をつけて下さい!」
「勿論だ。ただし、私も忙しいからな。1週間、1週間でお前を強くしてやる。おそらく、魔法の熟練度も7ぐらいまでなら上げれるだろう」
「あ、ありがとうございます!」
この1週間でどこまでも強くなってやる。
「ナ、ナギ…ライトさんの修業は地獄よりもちゃんと地獄だからな、死ぬなよ」
「えっ⁉︎」
マクレーモさんの声が震えていた。それはもう、世界の終焉を見たかのように。
今回も読んでいただきありがとうございます。次回もよろしくお願いします!




