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最弱魔法が知ったことか!  作者: 丸山ヤスコ
第4章 雪の町へ
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心の叫び

「ねぇコイツどうするの?」


リラが僕に尋ねた。コイツというのはメルスのことで、大空の義賊のアジトに連れ帰るか、それともここに放置するかという事を2人で話し合っている。


「そうだな、コイツまだ生きてるから、連れて帰って継星の大地と関係があるのか吐いてもらおう」


「継星の大地?」


エスターが僕に尋ねた。


「ええ、一言で言うと悪い奴らよ!」


代わりにリラが簡潔に答えてくれた。


「よし!さっさとここを出よう!」


僕がメルスを連れて行こうとする。

しかしそれは叶わなかった。


「彼は渡しませんよ?ナギ様?」


突然どこからともなく声が聞こえた。そしてメルスの周りに砂塵が吹き荒れ始めた。


(この感じ、身に覚えがある!)


この砂塵を見た瞬間、全てを察した。


「ミレイズ‼︎」


横たわるメルスの横に立っていたのはやはりミレイズであった。


「すぐ会えましたね、ナギ様」


「今度こそ負けない!」


「ふふふ、私は戦いに来たのではありません。この男を回収しに来ただけです。それに貴方ではまだ私には勝てないでしょう?」


「くっ」


「まぁいずれ近いうちに相手をして差し上げましょう。貴方は私の部下であるメルスを倒したのです。ライト・オールもろとも葬り去ってあげますよ」


ミレイズはそういいながら砂塵の中に消えていく。そして最後にまた口を開いた。


「ああ、そうそう、この町を魔物達に襲うよう指示しました。今頃どうなっているでしょうかねぇ」


「なんだと⁉︎」


ミレイズはニヤッとしながら砂塵の中に消えた。そしてその砂塵はしだいに大きくなり、僕達も包み込む。


「うわっ」


「ちょっなにこれ⁉︎」


「目が開けられない!」


そしてようやく砂塵が収まる。

しかし何故だか僕達は城の中ではなく、モスリアの町の入り口に立っていた。


「え?」


「何が起こった⁉︎」


「見てください!あれ!」


僕達はエスターの声で振り返る。

目に飛び込んできたのは異様な光景だった。


「町が…燃えてる」


リラが呟く。


「きっと魔物達だ!早く町の人達を助けるぞ!」


「ええ!」


「はっ、はい!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ナギさんがこの町の人達を助けにいくと言った時、心の何処かで何かが引っかかった感じがした。

でも、その正体を私は知っている。


町の人達が今まで私にやってきた事である。彼らは私に何をした?本当に助ける価値があるのか?と、頭の中の冷静な私が問いかける。


(確かに辛かった。苦しかった。でも、)


ナギさんとリラさんがそれを望むなら私はそれでいい。2人のための私でありたい。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「グオォォォ!」


「た、助けてくれ〜」


熊型の魔物、スノベアーが1人の男性に襲いかかる。


"氷魔法・フローズレイ"


間一髪のところを私は氷魔法で魔物を倒した。


「ありがとう、助かった!」


「町の集会所へ非難して下さい!そこでリラさんの治療を受けて下さい!」


「あ、ああ分かった!」


男性は私の言葉に頷いてその場を去った。


しかし、私の心はまた、揺れていた。


(ありがとう…か、なんで私はその言葉で苦しくなるんだろう)


私はなぜか「ありがとう」という言葉で嬉しい気分になれなかった。


(ううん、今はそんな事関係ありません!そんな事よりも早く町を助けなければ!)


そして私の心はまた苦しくなった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


中々減らない魔物ではあったが、ナギさんの機転で事態は一気に収束へ向かった。


「エスター!町の中央に魔物を引き寄せた!ソイツらを一気に叩いてくれ!」


「はい!」


"氷魔法・フローズヘルガ"


ナギさんは魔物達の周りにエアリアルブレーカーを投げることによって徐々に魔物達を中央に集めていたのだ。恐らく沢山の魔物達と戦ってきたのだろう。このアイデアは魔物達を複数相手取る経験がないと中々出てこない。


そして集められた魔物を私の魔法で一気に叩く。

魔物達がいる下の地面が青白く輝く。そして一瞬にしてどこからともなく氷塊が現れ、それが魔物達を閉じ込める。

魔物達を一瞬で氷漬けにした。


「解!」


そして私はその魔法を解除する。すると氷塊が消え、その中に閉じ込めていた魔物も一緒に消えた。


これで全ての魔物を倒したはずだ。


「これで終わったな」


「そうですね…」


「元気ないな」


「いっ、いえ、別に…」


私はずっと心を苦しめる原因を考えていた。それはきっとこの町が私にしてきた事についてなのだろう。しかし、よく分からない。


(もう私は1人じゃない。なのになんで苦しいんだろう)


そんな事を考えていると、リラさんの声が聞こえた。


「ナギー、エスター!こっちも終わったわ!さっさと帰りましょ!」


「そうだな、エスターも早くベルンの町に連れて行きたいし」


私達がそんな話をしていた、その時、


「ありがとう!」


「エスター!助かった!この町を救ってくれてありがとう!」


いつの間にか私達の周りに集まっていた町の人達が私達に声援や感謝を伝えてきた。

そしてこの町の村長が近づいてきた。


「エスター、皆さん、この町を救ってくれてありがとう。エスター、今まで悪かった。これからは私達がお前を支えていく。またみんなで一緒に暮らそう。だからこれからもよろしくな?」


村長が優しい声でそう言いながら私に握手を求める。


「あ、あ…」


私はどうしたらいいか分からない。この手を取るべきなのかどうかも。何故か心が苦しいのだ。

結局私は恐る恐る手を伸ばす。戸惑いながら村長の手を握ろうとした、その時ー、


パチンッ


横から突然手が出てきて村長の手を叩いた。

リラさんである。私にその手を取るなと言わんばかりに。


そして叩いた手とは別の手で私が村長に差し出そうとした手を握って、こう言い放った。


「ふざけるな!あんたらがこの子に今までどれほどの苦痛を与えてきた⁉︎

何が今まで悪かっただ!そんな言葉でこれまでの事を水に流せると思うな!

何がお前を支えていくだ!お前ら汚い大人がエスターの人生めちゃくちゃにしたんだろ!

その汚い手でエスターに触れようとするな!」


リラさんが怒っている。私の為に。

そして私の心を苦しめる物はスーッと消えていった。

ああ、そうか。


(これは私の心の叫びだったんだ)


また自然と涙が溢れてくる。私はリラさんにまた救われた。本当に私の人生の恩人である。


「この子は僕達大空の義賊が引き取る。それで文句はありませんね?」


ナギさんが村長に確認をとる。

村長はもう、うなだれるしかなかった。


「もうこの町にはいられない。さっさと出るか!」


「ええ、ああスッキリしたー!」


リラさんは村長に背を向けながら背を伸ばす。

そして私は初めてこの町ではない、別の町を目指す。


いつもは雲がかかっている空、

それは見上げるとどこまでも澄み渡っていた。

今回も、読んでいただきありがとうございます。次回もよろしくお願いします!

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