友達
「お、お前ら絶対に押すなよ?」
「あら?振りかしら?」
「振りじゃない!」
僕達は氷の城の中にいる。氷の城の中は中も氷でできており、床はツルツル滑る。まともに歩くことすら出来ない。
「おっと、手が滑りましたー」
エスターが棒読み口調で言いながら僕の背中を力いっぱい押す。
「うわっ、ちょっ、押すなぁ!」
僕は止まることができず、壁に激突する。
「このクソガキが〜!それに今滑るのは手じゃなくて足だろ!」
「ナギさんうまいですね〜」
「褒めても許さんっ」
「何子供相手にムキになってんのよ…」
「だから子供じゃないです!」
こんなやりとりを飽きることなく繰り返しながら進んでいると、城奥の部屋の大きな扉の前に到着した。ここに辿り着くまでに僕が何回滑ったか分からない。
「いかにもこの奥にボス的な奴いますよーみたいな扉ね」
「そうだな…ここにエスターの両親の情報が見つかればいいけど」
「お父さん、お母さん」
エスターが呟く。道中明るく振舞ってはいたが、心の中では早く両親の手がかりを見つけたいと焦っていたに違いない。
「よし、じゃあ開けるぞ!」
僕は部屋を塞ぐ、大きな扉を押した。そして扉はゆっくりと開き、僕達は部屋の中へと入って行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
扉の中は明かりがなく、真っ暗であった。
「真っ暗で何も見えない。みんな気をつけて!」
「う、うん」
「はい!」
僕の呼びかけにリラとエスターが応える。
僕達は部屋扉から漏れるの外の光を頼りに奥へと進む。
しかし、この部屋が広いのか、少し進むとすぐに光が届かなくなる。そして、部屋の外の光が届かなくなってきた、その時、奥から男の声が聞こえてきた。
「待ちくたびれたよ、エスター・フローゼ」
その男の声が聞こえたあと、すぐに部屋に明かりがついた。
そして僕達の目の前に現れたのは長身痩せ型の白髪の男性である。その男性が氷でできた玉座のようなものに座って足を組んでこちらを見ている。
「お前がこの城の番人か!お前は何者だ⁉︎」
僕が男に叫ぶ。
「あーうるさいなぁ。俺はメルスだ。後お前には興味がないからもう喋るな」
"氷魔法・フローズロック"
「氷魔法だと⁉︎」
僕は激しく動揺した。リラの説明では最上級魔法であると言っていたからだ。そう扱える人物はいないはずなのである。
「ナギさん!足元です!」
エスターがナギに向かって叫ぶ。
僕は慌てて下を見るすると僕が立っている真下の氷の床が光だした。
一瞬だった。突然体を動かせなくなった。瞬き1つできない。体は全身冷たいという感覚に支配された。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ナギ!」
「ナギさん!」
私とリラさんが叫ぶ。ナギさんが突然大きな氷に閉じ込められたのだ。その中でナギさんも固まっている。
「さあ、これでうるさい奴はいなくなった。エスター!俺はこの時を待っていた!お前がこの城を訪れるこの瞬間を!お前の氷魔法も奪ってやる!」
「ど、どういうことですか!」
「お前の両親と同じように殺してその力を奪ってやるっていう意味だよ!
俺の魔法はマジックミラー、この手で触れた者の魔法をコピーすることができる!ただし、1つ魔法をコピーした状態で別の魔法をコピーしたら最初にコピーした魔法は使えなくなるが、同じ魔法をコピーすれば、その分パワーアップする!
さあお前の力もよこせぇ!」
(父さんと母さんを殺したんですか⁉︎、コイツが?)
私はその場に崩れた。
私は確かに両親の手がかりを探しに来た。覚悟もしていた。しかし、両親から奪った氷魔法を見せつけられるという形で手がかりが見つかってしまうというのは、ショックが大きかった。
「と、いうことだ。なぁ、お前今まで苦しかったよなぁ?ずっと1人で寂しかったよなぁ。死んでしまいそうだったよなぁ。もう死んで楽になりたくはないか?俺の生きる糧になってくれ!」
(1人、そうでした。私は1人でした。なんで私がこんな目に合わなければいけないのだろう。そういう事を考える日はたくさんありました。でもあの時リラさんとナギさんは私を理解してくれたんです)
(でも私のせいで、お父さんとお母さんだけじゃなくてナギさんまで死んでしまいます)
そんなことを考えていると、ずっと黙っていたリラが口を開いた。
「違う!エスターは確かに1人だったもしれない。けどずっと1人で歩いてきた!ずっと1人で頑張ってきたの!エスターから人生を奪ったアンタにエスターの人生を否定する資格はない!」
「お前、うるさいなぁ。でも美人だなぁ。君は何者だ?」
「エスターの友達だ!」
また涙が溢れてくる。
友達、その言葉を聞いて心の中にある、黒い何かに一筋の光が差し込んだ。
しかし、
(私が、友達?ううん、そんなものになったらリラさんまで沢山の人に傷つけられてしまう。そんなことは嫌だ!だってリラさんは、リラさんとナギさんは私にとって)
大切な人達だから。
「はあぁぁぁ!」
リラさんが右手にナイフを持ってメルスに突進する。
やめて。
「いいだろう。お前をいたぶってやるよ!」
リラさんはナイフでメルスの首めがけて一閃する。しかしメルスはそれを簡単にかわし、リラさんの腹に蹴りをいれる。
「うぁっ!」
リラさんが吹っ飛ばされる。
やめて。
「いいなぁ、可愛い女性がどんどん傷ついて苦痛に喘ぐ姿、あぁ、興奮するなぁ。もっと汚れていく君を見てみたいよ!」
それからもメルスはリラさんをいたぶり続ける。
「まだまだ!」
しかしリラさんはそれでも挑み続ける。
やめて、やめて
「ギャハハハハ、いいぞもっとだ!」
メルスはリラさんをいたぶって遊んでいる。
「もうやめてください!」
私は叫んだ。
リラさんとメルスが同時にこちらを見る。
「リラさん、もう私に関わらないでください!私の為に戦わないでください!」
「どうして…?」
「あなたが私と一緒にいたらあなたまで傷つけてしまいます。あなた達はもう私の中で大切な人認定をされてしまってるんです!だからもうあなた達には傷ついて欲しくない!」
エスターがリラに訴えた。心の中にある叫びを、そのまま。
リラさんは最後まで私の言葉を聞いてくれた。
そして静かに口を開いた。
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
「えっ?」
「言ったでしょう?あなたはもう私達の友達なの。あなたが傷つけられるのを私とナギが黙って見ていられるわけがないじゃない!」
私はその言葉でハッとした。
(誰にも傷ついて欲しくない。だから誰も私に近寄らないで欲しい。私は自分のわがままをぶつけていただけなんですか…)
リラさんの言葉で気づいた。
(私、本当に子供だなぁ。わがままな子供だなぁ。)
それに比べて、友達の為に自分も一緒に傷を負う、ナギさんとリラさんは本当にかっこいい。
(いつか私も、こんな大人になりたいです、隣で肩を並べたいです。)
(いや、いつかじゃない。今だ。今しかないんだ!)
私はゆっくり立ち上がる。
(今ここで立ち上がらなかったら、私は一生2人に追いつけません!)
そしてリラさんの横に並んだ。
「私も、一緒に!」
「エスター…ええ!一緒にアイツを倒してナギを救うわよ!」
「はい!」
「面白い、2人でかかってこい!」
もう、1人じゃない。私はその事を実感しながらメルスと対峙した。
今回も読んでいただきありがとうございます。次回もよろしくお願いします!




