孤独な氷姫
モスリアの町、そこはエスターの古屋から数百メートル離れた場所にあった。村の中もやはり真っ白である。
しかし、見慣れない景色のせいか、僕はなにか違和感を感じる。それに、違和感を感じているのは僕だけではなかった。
「この町、私の住んでた村と似ている」
「…」
エスターが下を向く。
「どういう事だ?リラ」
「うーん、なんというか、押し殺したような雰囲気っていうのかな?何かに怯えているような、そんな感じがする」
リラの言う通りそんな雰囲気がした。町の人たちは僕達を避けているような気がする。そしてみんな僕達を睨んでいる。
(いや、エスターを睨んでいるのか⁉︎)
そう推測した次の瞬間、
「出て行け!クズ!」
「この町に入ってんじゃねーよ!人殺しの家族が!」
町人達が四方八方から雪玉をエスターに向かって投げつけてきた。その玉達はエスターの体中にぶつけられた。そしてその玉は僕達にも向けられた。
「わっちょっと何すんのよ!」
「コイツら、人殺しの娘とつるんでるぞ!アイツらも追い出せ!」
雪玉の数がますます増えてきた。
「くそ!なんなんだ⁉︎」
僕は叫ぶ。
「だから来たくなかったんですよ。この町に」
エスターが涙を浮かべる。
「とにかく一旦戻りましょ!このままじゃあエスターが怪我をしてしまうわ!」
「ああ、そうだな!おい、エスター!一旦お前の家に帰るぞ!」
僕はエスターの手を引っ張って雪玉の中をくぐり抜ける。中には魔法を撃ってくる者もいた。そしてリラが魔法を喰らってしまった。
「うぁっ!」
「リラ!お前らぁぁ!」
僕はとうとう怒ってしまった。いきなり雪玉や魔法をぶつけてくるこの町人達に対して。町人達は僕の威圧に気圧される。そして僕が一歩町人達に近づこうとする。
しかし、それをリラが止める。
「ダメよ!今は逃げるの!エスター守らなきゃ!」
リラの言葉でハッとした。
「そうだな、ごめん!リラ、走れるか?」
「平気よ、掠っただけだから」
こうして僕達はこの町から逃げ出した。僕とリラは戸惑いながら、エスターは気まずそうに下を向きながら。
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「なんだったんだ?アイツら」
僕達はエスターの家までなんとか逃げた。
「だから嫌だったんです。こうなるから」
「なぁ、なんでこんな事になっているんだ?」
僕はエスターに尋ねた。そしてエスターは静かに語り出した。
「私、氷魔法使いの一族なんです。」
「氷魔法⁉︎」
リラが驚く。
「すごいのか?」
僕はリラに尋ねた。
「氷魔法ってのはね、世界3大魔法の1つよ。それらは絶大な力を持っているの。氷魔法はその昔、ありとあらゆる魔法を防ぐ最強の盾と恐れられていたらしいわ」
「それはすごいな」
「例えそれが熟練度が1でも他の魔法を圧倒できるほどよ。多分この子、アンタより強いわよ」
「えっ!うそ!」
僕はこんな少女よりも弱いのかとショックを受けた。
「いえ、私はまだ弱いです。上手く使いこなせないんです。父と修行する予定だったのですが…」
「そういえば、エスターの両親はどこにいるの?」
リラがエスターに尋ねる。
「両親は町の近くにある雪山に行ったきり帰って来ません。私達フローゼ一族は代々モスリアの町の守り人をしていました。2年前、突然この地方の魔物が凶暴化したため討伐に行ったんですが…帰って来ません」
「エスター…」
僕はかける言葉が見つからなかった。僕は元々両親がいない。だから親を突然失うという事がよく分からなかった。
「しかし私が町の人達から嫌われてるのはここからの話なんです。両親が雪山に行った日、突然雪崩がこの町を飲み込んだんです。死者も出ました。雪崩は町人の心身を傷つけました。そしてそんな中こんな噂が流れたんです。この雪崩を起こしたのは、今雪山にいるフローゼ一族だと」
(そうか、それで町の人たちから嫌われてるのか。だから1人こんな離れた場所にいるのか)
「そんなのハッキリ言ってデマです!だけど、それを証明する手段がない…」
僕は怒りや悲しみなど色んな感情が込み上げてきたが、どうエスターに言えばいいか分からない。どう行動すれば良いのか分からない。
「だから私といたらお二人まで巻き込んでしまいます。だからさっさと出て行ってください!」
そうか、だから、
(コイツは僕達を巻き込まないようにあんな暴言を吐きまくっていたんだな)
すると突然、ずっと黙って聞いていたリラが行動を起こした。何をしたかと思えば、エスターに抱きついたのだ。
「ちょ、ちょっと何をするんですか⁉︎苦しいです、離してください!」
エスターがジタバタする。しかしリラは離さない。
「ずっと1人だったんだね、辛かったね、私がもっと早く見つけることが出来たら良かったのに!」
「あ、あなた達に私の何が分かるって言うんですか⁉︎私にはもう家族も居るべき場所もない!仲間を持っているあなた達が私を知ったような口を聞かないでください!」
「分かるよ!分かるよ…エスターの気持ち…私もずっと1人だったんだ。家族を殺されたんだ…仲間もいなかった。でも、救ってくれたの、ナギが。私の光になってくれたの。だから、今度は私があなたの光になりたい」
エスターはリラの言葉を聞いて涙が止まらなくなっている。しばらくの間、古屋の中にエスターの泣き声が響いていた。
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しばらくして、僕はエスターにある提案をした。
「なぁエスター、僕達と一緒に来ないか?」
ここにいても何も変わらないと僕は思ったのだ。大空の義賊へ入ればこんな町外れに1人寂しくいなくてよくなるのだ。
「私は、やりたいことがあります。だからナギさんの誘いには乗れません」
「やりたいこと?」
「父と母を探したいのです。勿論もういないことは分かっています。ただ、証拠が欲しいのです。父と母が雪崩を起こしたという噂は間違っていると。雪山にいけば何か分かる気がするんです。だから、ごめんなさい」
「そうか、なら一緒に雪山に行くか!なぁ、リラ?」
「えぇ、手伝うわ!」
「で、でも、ここから雪山に行くにはまた町を通らないといけないんです!またお二人に迷惑をかけてしまいます…」
「大丈夫よ!例え誰があなたのことを嫌っていても、恨んでいても、私達だけは絶対にあなたの側から離れない!そうでしょ?ナギ!」
「勿論だ!エスター、一緒に立ち向かう」
「リラさん、ナギさん…」
エスターの目がウルウルしている。
「なんだ?また泣くのか?」
僕はニヤニヤしながらエスターに尋ねる。
「なっ泣きませんよ!」
エスターは僕に突っかかってくる。
(やっぱり子供だな)
僕は心中でそう思いながら、この子を1人にはさせないと決心した。
今回も読んでいただき、ありがとうございます。次回もよろしくお願いします!




